あのネタができたときはガッツポーズしました。
――『M‐1グランプリ』から、はや数か月が経ちました。
後藤淳平:優勝する気満々だっただけに、終わったときは悔しかったですけど、少し時間が経った今は、“あれはあれでよかったかな”と思うようになってきました。誰ともかぶらないネタができたし、こうして取材をしていただく機会も増えました。
――直後の生放送番組での、福徳さんの号泣も話題になりました。
福徳秀介:自分でもびっくりしました。『M‐1』の途中から、喋ったら泣きそうになるからヤバいヤバいと思っていたんですけど…。後で映像を見たら思いっきり感情が顔に出ていて、これは芸人としてあかんやろと思いました(笑)。自信満々のネタやったから、3位には入れると思っていたので。子供じみてるけど、絶対に褒められると思って先生に縄跳びを見せたら、「ぜんぜんやん!」と言われた感じ。そういう悲しさでした。
――それほど、あのネタには手応えを感じていたのですね。
福徳:できたときにガッツポーズしました。そういうネタは、2年に一回できるかできないかです。初めて二人でやっている最中から、“きてる…きてる…!”という感覚があったし、最終的には“ヤバいヤバいヤバい、できた!”って。
後藤:できたばかりなんで完成度としては3割くらいですけど、種があまりにも強かったから、これさえあれば大丈夫やろうと。
福徳:だからこそ、数か月経って思ったのは、人間として、芸人としての面白みが自分に足らないんだなということです。いくら面白いネタを作っても、やり手が面白くなかったらダメなんです。だから、今年は人としての面白みを出すことが目標のひとつです。
後藤:漫才をする方は、芸歴を重ねれば重ねるほど面白くなっていくと思うんです。人間味や、芸人としての成熟具合が面白さに比例する。出ただけで空気が変わる漫才師って、そういうことだと思う。
福徳:“おもろいこと言いそうやな”っていう空気があるんです。そういう点では、おっさんがおもろいんですよ。年下に笑かされるのが嫌やと思う人は多いと思いますしね。高校生が中学生に笑かされるのが嫌なのと一緒で、特に男にはそういう気持ちがあると思う。だから、こいつになら笑かされてもいいと思われるような、人としての深みが欲しいですね。今着てるスーツは作って4~5年経つけど、人間としての臭みが出るかなと思って、一度も洗ってません。
後藤:僕はクリーニングに出してますけどね(笑)。
――最近は漫才が話題ですが、ジャルジャルさんといえばコントというイメージがあります。
後藤:基本的にはコント人間だと思っているので、漫才のネタは『M‐1』のためにだけ作っています。でも、やる前には“みんなびっくりするんちゃうかな?”という、ワクワクするような気持ちがあって、それはNSCに入ってお笑いを始めたときに感じたものと似てる。芸歴が長くなると、そういう気持ちがだんだん薄くなるので、漫才を通して、その楽しさを感じられたのは嬉しかったです。
福徳:僕は、自分が芸人に向いてないと思っているし、いつまでも拭えない教育実習生感があると思ってて…。僕の中で教育実習に来る先生は“普通の人”ってイメージがあるんですけど、自分はそういうタイプ。でも、コントはキャラクターを演じるから、たとえば山田太郎というキャラだとしたら、山田太郎で勝負できるし、嘘をつけるし、自分じゃないからすべっても平気。帽子をかぶれるし、グラサンかけられるし、おもろい見た目のときは無敵な気がする。舞台に上がるのも怖くないんです。
――では、漫才は?
福徳:福徳秀介と後藤淳平でお客さんと戦わなければいけないので、怖い。鎧をつけずに、裸で戦場に行ってる気がします。ほんまのことを言うと、早く『M‐1』で優勝し終わってコントに戻りたいです。漫才用に作ったこのスーツも捨てたい。ルミネの舞台で漫才をやるのも、どこか『M‐1』用なところがありますから。コントばかりしてると漫才をしたときに緊張するし、どこを見て話していいのかわからなくなるんです。
2003年4月に結成。後藤淳平は大阪府、福徳秀介は兵庫県出身。第44回「上方漫才大賞」優秀新人賞、第34回「ABCお笑いグランプリ」優勝などの受賞歴を持つ。井筒和幸監督の映画『ヒーローショー』(2010)ではW主演を務めた。『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ)、『ジャルッと!爆ハリ!』(千葉テレビ)にレギュラー出演中。
レギュラー出演している『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ)の最終回が、3月31日(土)に5 時間の拡大スペシャル版として放送される。今年2 月からスタートした「JARU JARU TOWER」は、「変なキャラ練習させられる奴」など、“○○な奴”をテーマにしたショートコントが、1日1ネタずつアップされていく。https://jarujaru.com
※『anan』2018年4月4日号より。写真・内山めぐみ インタビュー、文・重信 綾
(by anan編集部)
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