
映画『ナギダイアリー』で建築家の友梨を演じた石橋静河さんにインタビュー。
土地の存在が大きく作用した作品になっていると思います
心に抱えた葛藤や、揺らめく人間模様を丁寧に綴った映画『ナギダイアリー』。物語は石橋静河さん演じる建築家の友梨が、元夫の姉にあたる彫刻家の寄子が住む町・ナギを訪れるシーンから始まる。
「撮影地の岡山県・奈義町は、自然が美しい半面、その厳しさも感じる場所。松たか子さんが演じられた寄子は酪農の仕事もしているのですが、“自然に従った上で自分の生活がある”という彼女の生き方に説得力を持たせてくれる土地だなと感じました。深田(晃司)監督自身が奈義町に何か月も滞在して町の人と交流を深める中で物語が出来上がっていったので、土地の存在が大きく作用した作品になっていると思います」
環境や暮らしを通して人間の本質を捉える深田監督の多角的な眼差しは、その演出方法にも通じる部分が。
「深田監督はみんな考えが違うという前提の上で、自分と違う意見に耳を傾けようとされる方。それが友梨と寄子の距離感にも反映されている気がします。相手と同じ立場にはなれなくても、お互いの悩みを聞くことはできる。人との対峙の仕方として、とても素敵だなと思います。お芝居も“こう演じてください”という決めつけがなく、一つひとつが丁寧。人の感情って、単純なものではなくて、楽しい瞬間も脳裏に悲しみがよぎることがあるし、苦しい中でも些細な幸せが自分を笑顔にしてくれたりする。“これは楽しいシーン”とか“涙のシーン”と大枠で括ることで消えてしまう微細なものを掬い上げるように作品を作っていらっしゃるのかなと感じました」
友梨と寄子が抱える痛みもまた、繊細で多層的。異なる人生を歩んできたふたりは、対話を通してお互いの葛藤の輪郭を明らかにしていく。
「友梨は子供の頃から周りを優先して生きてきたと思うんです。望みに蓋をして与えられた役割を生きているから、常に何かが欠けている感覚がある。私自身もこれからどう生きていこうかと模索していた時期だったので、すごく共感しました」
石橋さんの気持ちを軽くしてくれたのは、松さんの存在だったそう。
「奈義町で日々を過ごす中で触れた、人や作品に対する松さんの向き合い方がとても印象的で。技術や経験値で補うのではなく、常に真っすぐ誠実に対峙する。その姿勢から多くのことを学びましたし、寄子と時を過ごすことで何かを得た友梨ともリンクしていった気がします」
友梨をはじめ、本作の登場人物たちは誰もが自分の居場所を探しているように感じられる。だが、そもそも居場所とは探すものなのだろうか。
「自分がここじゃないと感じるのであれば、必ず他に居場所はあるはず。ただ、移った先が天国かといえばそうではなくて。だからこそ、そこで起きる物事に対応しながら自分の居場所を作っていくことが必要な面も。人と関わることで、人間は成長していくもの。自分から心を開いて分かり合える誰かを探すことが、居場所を作る第一歩なのかなと思います」
Profile
石橋静河
いしばし・しずか 1994年7月8日生まれ、東京都出身。2015年より俳優活動を開始し、'17年公開の『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』で多くの新人賞を受賞。'26年度後期の連続テレビ小説『ブラッサム』(NHK)で主演を務める。

自然豊かな町で暮らす彫刻家の寄子(松たか子)と、彫刻のモデルを務めるために寄子のもとを訪れた建築家の友梨(石橋静河)。彫刻の制作を通じて時を共に過ごすふたりと、彼女たちを取り巻く人々の心の揺らぎを描く。9月25日公開。
Ⓒ2026 ナギダイアリー・パートナーズ(スターサンズ 八朔ラボ ワンダーストラック)/ Survivance / Momo Film Co.
anan 2512号(2026年9月16日発売)より































