自分なりのブレンドで官能的な気持ちを高めて。
香りスタイリストの杏喜子さんによると、官能感度を上げたいなら嗅覚を刺激するのが効果的。
「仕事や人間関係、新しい生活様式など、ストレスがかかると心が内側を向いてしまうため、五感が鈍って官能を阻害してしまいます。そんなときは、香りで気持ちをコントロール。こわばった心を解放する香りで気分を中立に戻し、そのうえで甘い香りを感じれば、心を官能的にすることができます」(杏さん)
香りが心を動かすメカニズムは、心理学的にも解明済み。
「嗅覚の情報は、五感の中で唯一、脳の中の大脳辺縁系という部分にダイレクトに伝わります。大脳辺縁系は『快』あるいは『不快』といった情動を司る部分。そのため、香りによって気分が大きく左右されるのです」(公認心理師・山名裕子さん)
使い方もいろいろ工夫できるので、生活の中に取り入れやすい。
「直接嗅ぐ以外にも、洗面器のお湯に精油を数滴垂らして前腕を温めれば、目の疲れにも効果が。基本的に香料は、数種類をブレンドするのがベター。官能を高めるチュベローズやジャスミンは単体だと強すぎるかもしれないので、マジョラムやプチグレンなど緊張を解放するアロマや、元気が出るシトラス系と合わせて。すでにブレンドされているフレグランスを使うのも手軽でおすすめ」(杏さん)
ここではムードを高める、心を落ち着かせるなど、8つの香りの特徴をご紹介。市販のアイテムに調合されていることも多いので、ぜひ香り選びの参考にしてみて。
感覚を整える8つの香調
ストレスを和らげたり、官能を高めたりするのにおすすめな香りを杏さんがセレクト。いくつかセレクトしてブレンド使いすると、より自分好みに楽しめる。
チュベローズ 抽出部位:花
男女問わず魅了するフェロモンの代名詞。
リュウゼツラン亜科。別名“月下香”“夜来香”とも呼ばれる白い花で、月夜になると芳香が強くなる。エキゾティックでフローラル、甘く優雅で扇情的な香りと夜の花というイメージが相まって、古くから媚薬的な扱いを受けてきたという。ハワイでは、レイに使われることも。官能的なムードを盛り上げるのにふさわしいアロマ。
ローズウッド 抽出部位:木部
寛大な落ち着きとフェミニティが同居する。
クスノキ科。アマゾン原産の樹木。ウッディで落ち着いた香調に加え、甘いバラのような香りがすることからその名がつけられたという。香気成分「リナロール」が含まれ、心を活性化する作用と鎮静化する作用の両方を持っている。また、抗菌、免疫力アップにも役立つ。疲れた心やザワついた気持ちを、ニュートラルに戻すのにおすすめ。
ゼラニウム 抽出部位:花、葉、茎
甘い印象の中に爽やかさが漂う。
フウロソウ科。赤やピンクの花が咲く、観賞用にも人気の植物。透明感のある甘い香りにハーブ調の爽やかさが加わった華やかな印象で、フローラル系、柑橘系の香りと相性バツグン。イライラや緊張を和らげて気分を明るくしてくれるので、忙しかった一日の疲れを癒すのにぴったり。女性らしい気持ちを盛り上げる働きも。
ジャスミン・アブソリュート 抽出部位:花
本能をかき立てるセクシーなアロマ。
モクセイ科。ヒマラヤ地域を原産とする白く可憐な花から抽出された、濃厚で甘くエキゾティックな香り。中東などでは媚薬として扱われていた歴史もある。官能的な気分づくりはもちろん、落ち込んだ気持ちを上向きにする作用も。オレンジやマンダリンを加えると爽やかさがアップし、デイリー使いしやすい明るく華やかな香調に。
マジョラム 抽出部位:花、葉
浮き沈みする気持ちをリセットする。
シソ科。ほのかな甘さとスパイシーさのあるハーバル調の香り。神経を静めてバランスを整える、リラクセーション、身体の強壮に効果あり。鎮痛、冷えの緩和や食べすぎ防止にも役立つとされ、昔から民間薬や料理用ハーブ、スパイスとしても流通している。柑橘系全般やラベンダー、ゼラニウムとのブレンドがおすすめ。
プチグレン 抽出部位:葉、小枝
心のバランスを整えるビターな柑橘系。
ミカン科。和名は“だいだい”といって、ビターオレンジから抽出。苦みの中にほのかな柑橘の爽やかさを感じる落ち着いたアロマ。鎮静と高揚両方の作用があり、高ぶった心には落ち着きを取り戻し、沈んだ気持ちは引き上げることができる。緊張を解放してリンパや血液の循環をサポートすることから、睡眠の質改善効果も期待できる。
サイプレス 抽出部位:葉、小枝
森閑とした森の中を思わせるグリーンで爽やかな芳香。
ヒノキ科。インド原産の樹木で、まっすぐ空に向かって伸びる独特な姿が印象的。そのアロマはスパイシーでフレッシュ。森の空気に含まれる「α‐ピネン」という香気成分を含み、森林浴をしているような爽やかな気分を味わえる。ラベンダーやマジョラムなどハーバル調の精油とブレンドすれば、温かみのある香りに。
サンダルウッド 抽出部位:木部
メディテーションのように乱れた心に凪をもたらす。
ビャクダン科。古くから邪気を払うと信じられており、日本では扇子やお香の原料として使われてきた樹木。ウッディでオリエンタル、甘さもある独特な香り。心を静めてストレスや緊張をほぐし、集中力を高める働きが。鎮静作用が強いため、気分が落ち込んでいるときは一層沈んでしまう場合もあるので要注意。
杏 喜子(あんず よしこ)さん 香りスタイリスト。フレグランスブランド『DAWN Perfume』のディレクションも担当。その人の元々の香りを見つけたり、似合う香りをスタイリングするパーソナルカウンセリングも好評。
山名裕子さん 公認心理師。「やまなmental care office」代表。自身の事務所での相談のほか、女性誌や情報番組等の監修を手がける。著書『読むと心がラクになる めんどくさい女子の説明書』(サンマーク出版)など。
※『anan』2021年2月10日号より。イラスト・momokoharada 取材、文・風間裕美子
(by anan編集部)