不気味なのになぜかハマる! 日本ホラー漫画家を代表する存在・伊藤潤二の大規模展

エンタメ
2024.05.21
緻密なタッチでグロテスクな世界を描くホラー漫画家・伊藤潤二。彼の作品は世界30の国と地域で翻訳され、漫画のアカデミー賞とも呼ばれる米アイズナー賞を4度受賞。2023年からNetflixでは彼の漫画をアニメ化した『マニアック』の配信もスタートするなど、今や日本ホラー漫画家を代表する存在だ。

世界が認めるホラー漫画家の不気味と滑稽の世界観に迫る。

そんな伊藤初の大規模展「伊藤潤二展 誘惑」が話題を呼んでいる。「当館には伊藤作品のファンもおり、念願の企画展が実現しました。伊藤作品にはホラー漫画という枠では語り尽くせない面白さがあります。怖さとユーモアを自在に行き来する展開、ユニークなキャラクター造形、何といっても美麗な作画に圧倒されます」(世田谷文学館学芸員・加藤信元さん)

そんな魅力を伝えるため、会場では様々なアプローチで空間を演出。序章で伊藤の海外での輝かしい受賞歴に触れた後は、第1章に代表作「富江」を中心に美醜が共存した作品を、第2章では、「死びとの恋わずらい」「うずまき」「双一」「首吊り気球」など、ごくありふれた日常に存在している恐怖をテーマとした作品を取り上げる。第3章では「中古レコード」「アイスクリーム・バス」「血玉樹」などを中心に迫力ある扉絵を、最終章では「伊藤潤二の猫日記 よん&むー」「ノンノン親分」などの作品を通じて、5歳から楳図かずおや古賀新一らの怪奇漫画に熱中し、自らも怪奇漫画を描き始め、歯科技工士から漫画家へと転身した伊藤の幼少期から現在までを、愛用品なども含めて紹介する。

特に今回はメインビジュアル《富江・チークラブ》や《禍々しき桐絵》など描きおろしも多数。また「うずまき」をモチーフとした体験型メディアアートや、作品に登場する身長2m超えの激痩せファッションモデルの“淵さん”と遭遇できるコーナーもユニークだ。

不気味なのになぜかハマる伊藤作品。かつてない規模で開催される本展を見ればさらに、その特異性、唯一無二の世界観の虜になりそうだ。

伊藤潤二 伊藤潤二展

精緻な画力を満喫できる代表作「富江」。入り口ではメインビジュアル《富江・チークラブ》がゲストを迎える。
富江 ©ジェイアイ/朝日新聞出版

伊藤潤二 伊藤潤二展

「富江」は美しい黒髪とホクロが印象的な妖艶な美女。彼女の魅力に狂った男たちは、異常な殺意を向けるが…。
富江の世界 ©ジェイアイ/朝日新聞出版

伊藤潤二 伊藤潤二展

級友の首吊り自殺後、突然自分そっくりな首の気球が迫ってくる。2023年Netflixでアニメ化された傑作。
首吊り気球 ©ジェイアイ/朝日新聞出版

伊藤潤二 伊藤潤二展

意味もなく謝罪する転校生が来た。彼が土下座するとなぜか脳が溶け出す生徒が続出。謝罪の真意とは…。
溶解教室 ©伊藤潤二(秋田書店)2014

伊藤潤二展 誘惑 世田谷文学館 2階展示室 東京都世田谷区南烏山1‐10‐10 開催中~9月1日(日)10時~18時(入場は閉場の30分前まで) 月曜(7/15、8/12は開館)、7/16、8/13休 一般1000円ほか TEL:03・5374・9111

伊藤潤二

いとう・じゅんじ 1963年、岐阜県生まれ。ホラー漫画家。代表作の「富江」シリーズや「うずまき」など映像化された作品も多数。2023年、第50回アングレーム国際漫画祭で特別栄誉賞を、サンディエゴ・コミコンでインクポット賞を受賞。©東川哲也/朝日新聞出版

※『anan』2024年5月22日号より。文・山田貴美子

(by anan編集部)

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