いとうせいこう『日日是植物』
いとうせいこうさんの新著『日日是植物(にちにちこれしょくぶつ)』をご紹介します。
毎日変化するから興味が尽きない。素人園芸家として奮闘し続ける
庭のない都会暮らし、しかし植物は愛でたい。いとうせいこうさんが、そんな思いからベランダで園芸を楽しむ“植物のある日常雑記”を始めて幾星霜。最初、自らのホームページで公開していたが、Web連載を経て、いまも続く新聞連載となっている。いとうさんのライフワークともいえるボタニカル・ライフ・エッセイの最新刊が『日日是植物』だ。
本書は冒頭で重大な宣言がある。ガーデナーへの敵愾(てきがい)心から「ベランダー」を名乗っていた、いとうさん。しかし、度重なる引っ越しや酷暑、ゲリラ豪雨の風など、植物にとって無体な条件が重なるようになり、いよいよ「ルーマー(室内園芸家)」として大きく舵を切るのである。
「もし広いベランダを手に入れたとしても、というか実際にそういう広いルーフバルコニー付きのマンションに住んだこともある。ただもう東京には植物を育てるのに理想的な場所はなくなってしまったんじゃないかな。そういう意味では、ベランダ園芸も続けているけれど、室内にビニールハウスを作ったりハンギング(吊るす)してみたりして、折り合いをつけたとも言えるんですよね」
本シリーズのファンは周知だろうが、いとうさんはよく枯らす。しかしめげずに新しい植物を手に入れる。枯らしてもしつこく水をあげたりしている。そのあきらめの悪さといつか訪れるパラダイスを夢見る植物愛がユーモラスに綴られている。
「僕の園芸の師匠ともいえる人気園芸家の柳生真吾さんが前に“いとうさんの『ボタニカル・ライフ』を読んでね。本当によくわかった。枯らすまでが園芸だ”と言ってくれたんです。亡くなってしまったけれども、園芸の頂点ともいえる男がそう言ってくれたから、僕も調子に乗っているところがあるんですよね(笑)」
いとうさんが植物生活を綴り始めて約30年。話の種は尽きないそう。
「この中でも書きましたが、散歩中の公園で4歳の子供が興味を示した植物の切れ端が実は花屋で見たことのないアオオリヅルラン(オリヅルランの原種)だったり、子供と行ったスーパーマーケットに『ヘンゼルとグレーテル』の道標のパンくずのように点々と落ちているどんぐりを見つけたり、いろいろなことが起きる。植物自体が日々変化する生き物だから、直に正岡子規的な写生精神の大事さを教わっています」
Profile
いとうせいこう
1961年、東京都生まれ。編集者を経て、作家、クリエイターとして多方面で活躍。『想像ラジオ』で第35回野間文芸新人賞受賞。盟友みうらじゅん氏との共著『見仏記 三十三年後の約束』ほか著書多数。
information
『日日是植物』
ドラマ化もされた『ボタニカル・ライフ 植物生活』(第15回講談社エッセイ賞受賞)、『自己流園芸ベランダ派』に続く、園芸エッセイ集。本書には2019年5月から2025年10月までを収録。マガジンハウス 1870円
anan 2488号(2026年3月18日発売)より
















