りささんに習う“美文字”
手紙はもちろん、ちょっとしたメモや付箋も、いざ書き始めると“あれもこれも書きたい”となってしまい、結果的に内容も見た目もまとまりがなく、非常に伝わりづらいものに…という経験のある人は、比較的多い。
「いきなりペンで書くのではなく、とりあえず一度下書きをしてみてください。それによって書きたい文字の量が把握できるもの。そのうえで、文章の長さと紙の大きさとの関係性を考えながら清書をすると、心に余裕が出るので、内容も、そして気持ちも伝わりやすいものが書き上がると思います」
また、伝えたい相手に思いを巡らせ、気持ちを高めることも大事。
「例えば感謝の気持ちを伝えるなら、相手が自分にしてくれた親切などを思い出し、“ありがとう”という気持ちで心を満たしてからペンを執ると、気持ちが文字により乗るのでは」
字が下手だとか、ちゃんと書かなきゃといった気持ちはいったん横に置き、カジュアルに、“文字で自分を表現する”ことを楽しんで、とりささん。
「LINEでスタンプを使うくらいの気楽さで、手書きのメッセージを送り合ってくれたらいいな、と思います」
これを意識するだけで字が変わる! 知っておきたい4つのコツ。
1、紙に余白が生まれるよう、文字を配置。
「狭い部屋に家具をたくさん入れると、空間が狭くなりごちゃっとしますが、広い部屋に厳選した家具を置くと、“広くて素敵”と思いますよね。紙と文字の配置もそれと同じで、余白がきれいにとれていると、印象が良くなる。書き始める前に、余白をどうとるかの目安をつけるといいですよ」
2、縦でも横でも、とにかくまっすぐ書く。
「まっすぐに文字が並んでいるとそれだけで素敵に見えます。とはいえ、実はこれってとてもむずかしい…。例えばカッターで何かを切るとき、まっすぐ引くために腕の可動域を広くとりますが、文字を書くときも、そのくらい広い可動域を心がけると、意外とまっすぐ書けるものです」
3、文字に統一感を持たせる。
「統一感というと、すべての字を揃えなければ…と思うかもしれませんが、実はそれよりも、字と字の間隔を均等にしたり、線の角度を揃えるほうが、統一感が増します。最も簡単なのが、文字の横線の角度を、右上がりなら右上がりに揃えること。自分の文字のクセを見つけることがヒントにも」
4、漢字を大きく、ひらがななどは小さく。
「文字の大きさをすべて同じにするのは、なかなか至難の業。それよりも、漢字を大きくし、ひらがな、カタカナ、数字は漢字より小さく、メリハリをつけると、“文字を書き慣れた人のこなれた文章”に見えます。加えてなぜか、文字一つ一つのバラバラ感がなくなり、まとまった印象を与えられます」
余白を意識し、文字の配置を考えることがコツです
「こういったスペースが変則的なメモの場合は、どこに文字を配置するかに悩みますね。パンダの包容力に包まれて、文字にも優しさとかわいさが出たような気がします(笑)」
「“様”や“電話”など、大きく書きがちな文字のサイズに気をつけながら、1行目と2行目に2回出てくる“様”の位置が重ならないよう意識。左右の余白の幅も揃えています」
「余白をうまく調節することが、付箋を使いこなすコツのように思います。このメモは内容が重くないので、あまりかしこまりすぎず、楽しい気持ちが伝わるように書きました」
「縦書きはのびのびと書くことが成功の秘訣。また、改行の位置が結構大事なのですが、今回は“インスタ”で改行したくなかったので、そこはあえて、少し詰め気味にしました」
「1行目のフレーズの文字数が、この紙に対しては多かったのですが、文字を少し小さくして詰め込み感を出さず、なおかつ4行目と長さを揃え、全体のバランスをとりました」
りささん 手書き文字と、美しく書くためのコツをインスタグラムに投稿し、話題に。著書に『ふだんの美文字練習ノート』(KADOKAWA)、『美文字で書く素敵な言葉』(マイナビ出版)など。アカウントは@risagraphy
※『anan』2022年10月5日号より。写真・内山めぐみ
(by anan編集部)