「声出したら外の人に聞こえちゃうね」 5歳年下男子との“忘れられないセックス”

2022.8.10
その関係が恋でも、恋にならなくても。悦びを分かち合った記憶は、甘い薫りとともに全身に官能を届ける。エッセイ『ベッドの上でしか囁けない愛だってあるさ』で、性愛を楽しむ等身大の体験談を語ったたまるさんが、人生最高のセックスを取材しました。

未緒さん(36歳・会社経営)

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仕事と育児に追われる毎日。孤独感に、非日常な休息とひとときの快楽をくれたのは5歳年下の彼でした――。

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数年前の話です。その頃の私は子育てにあまり協力的ではなかった夫と、仕事と育児に忙殺される日々に嫌気がさしていました。追い打ちをかけるようなコロナ禍で、さらに孤独感が募り、思わず登録したマッチングアプリ。そうして出会ったのが、5歳年下のミナト君でした。

彼は女性の扱いがとても上手く、何を言えば喜ぶか心得ているようで、割り切った関係とはわかっていながらも、私も例外なく彼の甘い言葉で徐々に興味を惹かれていきました。少しずつ外出が可能になったタイミングで、ついに初めて会うことになりました。はやる気持ちを抑えつつ彼との待ち合わせ場所に向かうと、そこにはにっこり笑った彼の姿が。暑い太陽の日差しを受けたワイシャツ姿が爽やかで、とても好印象でした。

互いのことはすでにメッセージで伝え合っていたため、すぐにホテルへ直行しました。ところが、行為が始まると彼の胸元にキスマークを発見。彼の的確な動きに体は反応せざるを得ないものの、あまりの気遣いのなさにガッカリしました。彼が他の誰としようが私には関係のないことではあるけれど、「私じゃなくてもいいならこの人とは今日かぎりかなぁ」とぼんやり考えていました。

それから、彼と連絡をとることなく1年が経過したある日、突然「久しぶり。俺のこと覚えてる?」と連絡が来ました。「もちろん覚えてるよ。どうしたの?」と戸惑いと喜びの混ざった感情をもちつつ返信をすると「あの時のセックスが忘れられなくて」と返事が。もう会うのはやめようと思っていたけれど、お互いのスケジュールの都合で会えそうな昼休みを含めた2時間だけ、再び彼と会うことに。

1年ぶりに同じ場所で待ち合わせし、ホテルの部屋に入って目が合った途端、激しいキス。舌を絡め合いながら彼の指が私の耳元をかすめた時、体中の体温が上がった気がしました。思わず「早くしたい…」とねだると、彼は入り口のドアに両手をつかせて後ろから愛撫を始めました。

ドアの向こうは廊下で、少しでも声を出したら外の人に聞こえてしまう。「こういうのはイヤ?」と聞かれ、「イヤじゃない…」と答え終わろうとしたその瞬間、そのままの体勢で後ろから挿入。「声出したら外の人に聞こえちゃうね」と、わかりきっていることをわざと意地悪に煽る彼。激しく突かれて声が漏れてしまう私。誰かに聞かれてしまうのではないかという緊張と、彼にされるがまま心地よい辱めを受けている恥ずかしさで、快感が全身に走りました。

ベッドに押し倒されると上から脚を目一杯広げられ、奥深く中を突き刺された時には、私の体の中の知らない部分が彼によって変化していくような感覚が。彼の動きに合わせて経験したことのない波が私の中に満ち溢れ、気がつくと今までにないくらいにシーツを濡らしていました。

たった2回しか会っていないのに、私がどこで感じるのかをもう熟知している様が本当にたまらなく悔しい。気持ちよさで時間の感覚を失いかけた頃、彼も次第に息遣いが荒くなり余裕なく「ダメだ、もうイキそう」と私の耳元で囁きます。少しでも動くと果ててしまいそうになるのを必死で我慢しているようでした。そしてスピードが上がり、一瞬息を止めた後、私の上にガクッと覆いかぶさってきた無防備な姿には、愛おしさを感じました。

最初の目的はセックスだけだったにもかかわらず、微睡(まどろ)んでいる彼の腕の中で温かさを感じていると、日常で張り詰めていたものが少しずつ緩んでいくのを感じました。あれから1年が経ち、仕事や育児に追われる変わらない日々の中で、彼と待ち合わせた駅を通り過ぎるたびに、あの暑い夏の2時間のことを今でも思い出します。

※『anan』2022年8月17‐24日合併号より。イラスト・saaya 取材、文・たまる

(by anan編集部)