甲本雅裕さんにとって『テーバスランド』は、約4年ぶりの舞台出演。

「テーマは父殺しですが、日常で誰もが出合うような物語です」

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「自分の中では舞台も映像もなんの隔たりもなく、お話があった瞬間にどう思ったかなんです。この作品は、最初に台本の莫大なセリフ量におののいて、強烈に怖くて強烈に逃げたくなった。でもその後、『お前、ここで逃げていいのか?』って問いが強く迫ってきちゃったんですよね」

本作の登場人物は3人のみ。甲本さんが演じるのは劇作家・S。そしてSが作品のモデルにする父親殺しの青年・マルティンと、舞台でその役に扮する俳優・フェデリコを浜中文一さんが演じる濃密な二人芝居だ。

「演じる上で何が正しいという答えはないんでしょうけれど、台本を読めば読むほど、やればやるほど、意識をスイッチしないことが大事なのかなと感じています。テーマは父殺しですが、話を遡っていくと日常で誰もが出合うようなことに繋がっていく。出会いはすごく幸せだったのに1年後には喧々囂々(けんけんごうごう)で別れちゃうとか、事態が想像つかないところにいってしまうことって珍しくないわけで。だから特別な意識を持たずに作品に向き合おうと思っています」

そして、ちょっと笑いを交え「作家が何を思ってこれを書いたのか、会ったこともない僕は知らんよって思いながらやっています」とも。

「この戯曲にはト書きがないんです。書かれているのがセリフだけならば、それ以外は自分たちで勝手に探してくよっていう考え方をしていて。僕たちがやっている“芝居”ってなんだろうといったら、そういう言葉に書かれていないところを考えて作っていくことじゃないのかなって」

そんな言葉で思い出すのは、連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』で甲本さんが演じたヒロイン・安子の父親だ。空襲で店も妻も母も失い、瓦礫の中で人目も憚らず子供のように泣きじゃくる場面がある。

「時代背景を考えると、日本男児なら声を殺してすすり泣くのが正しかったのかもしれない。でも、あの場面に身を置いた瞬間、自分はそうだなって思っちゃったんで、まずはそれを全面的にぶつけてみようと思ったんです。監督は、『そう演じるとは思わなかったけれど、いいと思ったのでOKしました』と言ってくださり、それならよかった、と」

穏やかな人柄の根底に、芝居に対する揺るぎない信念を感じる。

「自分の役割は作品のテーマを伝えることじゃなくて、観た方に、こういうテーマの作品なのかなって思ってもらうことなのかもしれません」

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『テーバスランド』 父親殺しの事件をテーマに創作を始めた劇作家のS(甲本)は、刑務所でモデルとなるマルティン(浜中)との面会を重ねていく。やがてマルティン役に俳優・フェデリコ(浜中・二役)が決まり…。6月17日(金)~7月3日(日) 横浜・KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ 作/セルヒオ・ブランコ 翻訳/仮屋浩子 演出/大澤遊 出演/甲本雅裕、浜中文一 全席指定6800円 チケットスペース TEL:03・3234・9999 https://tebasland.com/

こうもと・まさひろ 岡山県出身。劇団・東京サンシャインボーイズを経て、幅広い分野で活躍。6月19日スタートのドラマ『眼の壁』(WOWOW)、7月スタートのドラマ『遺留捜査』新シリーズ(テレビ朝日系)に出演。

※『anan』2022年6月22日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・望月リサ

(by anan編集部)

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