「明るくてノリのいい転校生から言われるのと、無口で人見知りな感じの子に言われるのでは、受け止める側も真剣度が違うというか。だから、航平も楓のちょっと過剰なこだわりにも応えてあげるのだと思います」
自宅も隣同士なら、クラスでも席が隣同士。窓越しの会話もできてしまう楓と航平は、幼なじみになるしかない運命なのかも。
「友だち、親友、恋人のどれとも違うカテゴリーと考えるのが近いですかね。幼なじみは、そういう間柄でも知らないことを知っていたりする、特別な関係かなと。僕自身にもれっきとした異性の幼なじみはいないので、その憧れをちょっぴり代弁してもらっているところはあります」
下の名前で呼び合う、朝起こしに行くなど、楓がこだわる幼なじみ儀式が、2巻でもあれこれ決行される。
「“ベッドに入って寝ながら電話する”はうらやましいですね。自分の学生時代は、まだガラケーで無料通話が気軽にできるデジタル環境はなかったけれど、当時からあったら絶対やってみたかったです」
楓がわざと作った塩入りクッキーを、航平ががんばって食べる回も、胸がキュンとする神回。
「失敗ありきで〈幼なじみの初めての手作りは失敗するものだから〉なんて、幼なじみ願望をこじらせていないと出てこないセリフですよね(笑)。楓は変な方向に深掘りしすぎて残念なことに」
各回のエピソードは、帯屋さんがふたりに「こういうことをさせたい」とイベントを軸に組み立てることもあるが、ふたりが過ごす場所から発想することもあるそう。
「楓が秘密基地と呼ぶ森の中のベンチは実際にある場所です。ストリートビューを眺めながら『こんな場所でふたりが会話したらどうかな』とか、ストーリーを練りました」
第3巻は、5月に刊行予定だ。
「幼なじみといえば家族ぐるみの付き合いですが、それほど双方の親とも交流していないし、まだ互いの部屋にも入っていない。それによって、何か変化も生まれるのではと、僕も楽しみです」
帯屋ミドリ『今日から始める幼なじみ』2 幼少期からリアルな幼なじみ同士という、舞衣と晴輝が活躍。悪態をついても阿吽の呼吸で仲直りする、〈熟年幼なじみ〉らしさが爆発するおまけマンガ付き。新潮社 682円 ©帯屋ミドリ/新潮社
おびや・みどり 愛媛県出身。2014年、作画を担当した『放課後ミンコフスキー』でデビュー。著書に『ぐるぐるてくてく』『サヨナラさんかく』などがある。
※『anan』2022年4月20日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・三浦天紗子
(by anan編集部)