コンビ結成20年! ダイアン「楽しいばっかり」の芸人人生で“唯一の危機”とは?

エンタメ
2021.10.15
滋賀の中学で机を並べた二人がコンビを結成。昨年20周年を迎え、脂がのった笑いを提供しているダイアン。東京進出して3年。じわじわと全国区に名を知らしめている彼らの、芸人としての軌跡に迫ります。
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――お二人が芸人で食べていけると感じたのはいつ頃でしたか?

津田篤宏:バイトを辞めた5~6年目あたりですかね。それでも生活はギリギリでしたけど、楽屋に行けば仲間がいて、学生ノリで遊んで毎日楽しいことばっかり。しんどさより楽しさの方が勝ってました。

ユースケ:ほんまのほほんとしてましたね。でも最初はみんな同じくらいの仕事量だったけど、徐々に差が出てきて。自分らはかなりヒマだったんで、そのへんから少し意識が変わった気がします。

――自分たちの強みや戦略のようなものは意識されましたか?

津田:同級生ならではの空気感が良かったのかもしれないですね。関係性を作る必要もなかったし。

――津田さんはYouTubeで、別の人と組むのは考えられないとお話しされていましたね。

津田:相方が違う人だったらなんて考えたくもないし、怖いです。

ユースケ:僕は他の人を見てみたいって気もあるんですよ。修業みたいに、そこで吸収したものをコンビに還元したいっていうか。

――他の方と津田さんが楽しく絡んでいても、焦らないですか?

ユースケ:それはちょっとだけ気になります。ティーアップの長谷川(宏)さんと相方がめっちゃ仲良くて、お似合いやったんで。

津田:お似合いちゃうわ、っていうか大先輩やないか(笑)。

――津田さんは先輩方から愛されている印象があります。その秘訣はどこにあると思いますか?

ユースケ:うーん、そういう星の下に生まれたんじゃないですかね。

津田:ギャーギャー言うから面白いんじゃないんですか(笑)。でも、初対面の人にもイジってもらえるのはありがたいですね。

――いい環境で芸人を続けてきたことが伝わってきますが、20年間で転機となったタイミングは?

ユースケ:M-1じゃないですか。決勝に行ったことで、ようやく普通に生活できる収入になったんで。

津田:説得力が出るのか、お客さんの反応も変わりましたね。

ユースケ:めちゃくちゃ大きい存在だったけど、ラストイヤーが終わった時は解放された感覚もありました。M-1のネタ作りって特殊な感じだったんで、そこからはほんまに自分らがやりたいやつをできるようになったんです。

――その後、東京進出も果たされましたが、移行は順調でしたか?

ユースケ:行くと決めてから半年くらいかかりましたね。レギュラー番組を全部辞めましたし…。

津田:いやいや、1個しか辞めてへんやん(笑)。今も週に2日くらい帰ってるし。でも、最近は東京/大阪みたいな区切りってなくなってきてる気がしますね。

――東西で視聴者の笑いに対する受け止め方の違いは感じました?

津田:東京の人からすると、自分らは受け入れ難いキャラやったと思いますよ。でもこれしかできひんし、観る人も徐々に慣れてきはったのかも。今もガーッと行きすぎてヒドい空気になる時があるんですけど、まぁあかんかったら次で気をつければいいかなって。

――たとえスベっても、相方さんが笑ってくれると心強いですよね。

ユースケ:めちゃくちゃスベってたら僕も笑いませんよ。助けようにも足が動かん時もあるし(笑)。

津田:ようあるな(笑)。でも、俺はスベってから面白くしようと思ってるんで。そこからの一言でウケることもあるし、誰かの言葉を引き出すこともある。結果笑ってもらえれば何でもええじゃないですか。スベってるのも一つのアクションなんで、何かしら行動は起こさなって思ってますね。そのままスベりきることも多いですけど。

人を笑わせる気持ちよさは他では得難い特別なもの。

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――最近はお仕事の幅も広がり、アニメ『オッドタクシー』では声優にも挑戦されていましたね。

津田:今までにない現場で、楽しかったですね。先に声を録音する方法だったんで、多少は気楽やったっていうのもあります。

ユースケ:中堅芸人の役柄で共感する部分もありましたし、“ええんかな?”って思うくらいそのままの声でやらせてもらいましたね。ただイノシシの役なので荒々しさは意識していて、ポケットにはイノシシの写真を入れてました。

――完璧な役作りですね(笑)。お二人はお笑い以外のお仕事にも挑戦していく気持ちはありますか?

津田:何でもやります! チャンスがあればドラマとかも出てみたい。お笑いだけっていう時代じゃないんでね、柔軟にせなしゃあないじゃないですか。まあ、何も考えてないだけですけど(笑)。

ユースケ:本業がありつつ、趣味的なことも仕事にできたら楽しそうやなとは思いますね。僕もキャンプとかするんで、そっち系とか。

津田:僕はゲームが好きで、実況配信もしてるんです。ゲームって、実は40越えてやってる人の方が多いんですよ。だから代表と言ったらおこがましいけど、自分が発信できたらいいなと思ってます。

――漫才のネタ作りでエンタメをチェックすることもありますか?

ユースケ:昔はめっちゃしてましたけど、最近はなくなりました。今は日常生活でふと気になったことをメモっておいて、ほんまちょっとしたことから作ってますね。

――津田さんが考える、ユースケさんのネタの素晴らしさとは?

津田:そりゃやっぱり独特ですよ。

ユースケ:見たことも聞いたこともないボケとか書いてるよな。

津田:いやいや(笑)。でも全部同じ人が作ってるから、独特ながらも根っこにドスンと安心する部分があるとは思いますね。急にリズムネタを作ったりもしないし(笑)。

ユースケ:でもリズムネタは持っておきたいですよ。この歳からそれをやりだすって、チャレンジ精神があって素敵なことですし…。

津田:(苦笑しつつ)まあ、やるっていうならやりますけど一応。

――楽しみにしてます(笑)。今月から20周年の単独ライブツアー「まんざいさん」も始まりますね。

ユースケ:やっぱり20周年っていう意味合いがあるので、いつものライブとはちょっと気持ちが違いますね。今までやってきたネタも含めて、いろいろやりますよ。

――まさに集大成ですね。20年間を振り返ってみて、相方に救われたと感じる部分はありますか?

津田:どこにいてもずっとペースが一緒なのは頼もしいですよね。焦らないし、何をするにしても芯の部分は変わらない。それは唯一無二なんじゃないですか。

ユースケ:僕は…そうですね、ネタは僕が作ってますけど、相方はネタ尺を測るストップウォッチを毎回持ってきてくれるんですよ。尺がわかると救われますね。

津田:俺の答えと見合ってないねん! ええやつ聞かせてくれ~。

ユースケ:性格が全然違うっていうことでバランスがとれてる部分はあります。僕は神経質な方で、相方はけっこう大雑把。そのせいか、単独ライブのネタ作りが遅くなっても“ネタいつなん?”とか言ってこないんですよ。ただ、すぐにそんなん言われるのは嫌なくせに、聞いてこなさすぎても“こいつ気にならへんのか?”って腹立つ。相方の場合は早すぎず遅すぎず、ムカつかない絶妙なタイミングで言ってくるんですよね。

津田:朝来た時の顔色でわかりますもん。真っ白な顔して髪がボサボサやったら、まだできてない。単独の2~3週間前に半分くらいできてるやろなと思って聞いてみると“半分くらいできてるよ”と。で、最後のネタができるのは大体4日前かなっていうのもわかってる。これを20年やってますから。

ユースケ:相方がネタ飛んでる時とかウンコしたい時も、顔を見たらめちゃくちゃわかります(笑)。

――阿吽の呼吸ですね! 最後に、お二人にとって芸人としての喜びはどんな点にあるのでしょうか?

津田:人を笑かす気持ちよさって、やっぱり他では得難いもんなんですよ。なかなかの快感やと思うから、20年間楽しいまんまで続けてこられたのかなと思いますね。

ユースケ:ほんまそうですね。養成所に入った時は20年後なんて想像もできなかったですけど、楽しいことをずっとやらせてもらってるありがたさを感じます。ただ、振り返るとあんな金もない、仕事もない状態でようやってたなと思いますけどね。当時はそういうもんやと思ってたから、辛いとか苦しいって感じなかったんです。

――笑いに対する悩みを抱えた時期もなかったのでしょうか?

津田:あったよな、俺。

ユースケ:お前はあった、だいぶ序盤に(笑)。養成所でネタ見せの授業があるんですけど、講師の人が評価してくれないことに落ち込んで。マンションのカーテン閉めきって、パンツ一丁でガリガリの状態で布団に座ってた。天然パーマなのに散髪も行かないから、頭がアフロみたいになってて……。

津田:そんな頭の時期ないわ!

ユースケ:10年20年やったならともかく、NSCに入ってすぐの5月で“……早ない?”って(笑)。

津田:ポーズというか、病んでる自分に酔ってたのかもしれないですね。それ以来、一回もないです。

――最初からずっと“楽しかった”とお話しされていましたが、20年間の芸歴で危機がその時だけって素晴らしい芸人人生ですね。

津田:そうですね。なので相方には“これからもよろしくお願いします”って言葉をかけたいです。

ユースケ:あ、ほんま? じゃあその言葉、受け取りますんで今後もストップウォッチお願いします。

津田:ストップウォッチかい! 僕はちゃんと愛情を伝えるのに、こいつはいつも流すんですよ。

――ある意味、ネタがユースケさんからのラブレターなのかも?

ユースケ:たしかにそうですね。

津田:何!? ドキドキする(笑)。

ユースケ:もっと歳とった時のこととか想像できないけど、60歳くらいになっても劇場で漫才やってるのかな…と思うと楽しみですね。

ダイアン 右・津田篤宏(つだ・あつひろ) 1976年生まれ、滋賀県出身。ツッコミ担当。左・ユースケ 1977年生まれ、滋賀県出身。ボケ担当。2000年にコンビを結成し、関西を中心に大活躍。'18年には東京進出を果たし、飄々とした語り口で繰り出すハイセンスなボケとイジられ力を備えた勢い溢れるツッコミで幅広い層から支持されている。

10月19日より、結成20周年を記念する単独ライブツアー「まんざいさん」がスタート。2年ぶりの単独ライブとなる本公演は、東京公演を皮切りに、宮城、福岡、大阪の4都市で開催。11月26日になんばグランド花月で行われる最終公演は、オンライン配信も予定されている。FANYチケット問合せダイヤル TEL:0570・550・100

※『anan』2021年10月20日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE) インタビュー、文・真島絵麻里

(by anan編集部)

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