おばさんという言葉が背負う悪印象を、解体し、再構築するカルチャーエッセイ。岡田育さんによる『我は、おばさん』をご紹介します。
Entame

「おばさん」は女性にとって悩ましい呼称だ。ニュートラルには、中年女性を意味する言葉でしかないはずなのに、そう呼びかけられるといい気持ちはしない。女性にとって、なることに怯える「おばさん」とは何なのか。おばさんを侮蔑語のままにしておいてよいのか。シスターフッドのために、どうしたらよりよきおばさんになれるのだろう。

そんな難題を噛み砕いて考察してくれたのが、岡田育さんの『我は、おばさん』である。

岡田さんがその単語を意識したのは29~30歳頃だそう。

「ちょうど“オトナ女子”という表現が出てきた2000年代の終わり頃で、『私たちはもしや、このままずっと女子でいられるんじゃないの』という錯覚も抱いたのですが、個人的には妹に子どもが生まれたタイミングでもありました、私は自動的に、アラサーで、伯母さん(笑)。いったいどっちなの、という気持ちに決着がつかないまま40、50に突入するのかとモヤモヤしました」

おばさんという言葉の印象を女性自身がどこか内在化していることも問題ではないかと思った岡田さん。

「ならば、マイナスからプラスへ視座を変えられないかなと思って。私自身、10代のときから母親とは異なる価値観を見せてくれる大人の女性に憧れていましたし、すでに多くの小説や映画などには、見習いたい魅力的なおばさんがいたんです」

『若草物語』のマーチ伯母、『更級日記』の菅原孝標女、ヤマシタトモコ著『違国日記』の高代槙生、黒柳徹子や後藤久美子など。輝いているおばさんや、ときに反面教師にしたいおばさんも拾い上げながら、古典やエンタメをひもとく。

「これからの女性たちは、自分の母や祖母とも違う生き方をするのだと思います。職場や周囲に真似したいような人がいない、あるいは生き方がすごすぎてお手本にならない、と思わないでください。ファッションを真似するのと同じ感覚で、なんとなくステキだなと思った人を参考に、少しずつ自分の独自性を見つけていけばいいのではないかなと」

岡田さんは語る。女性たち自身が選び取れば〈あなたが待ち望んだ、私がなりたかった、「おばさん」になることができる〉のだと。本書には、そのヒントが詰まっている。

岡田 育『我は、おばさん』 引用した多数の作品は巻末にリスト化。著者と同世代なら懐かしさに胸躍るはず。妹世代にとっては新しいカルチャーとの出合いになるかも。集英社 1760円

Entame

おかだ・いく 1980年生まれ、東京都出身。編集者を経て、2012年より本格的にエッセイの執筆を始める。著書に『ハジの多い人生』(文春文庫)ほか。‘15年よりニューヨーク在住。©Omi Tanaka

※『anan』2021年8月4日号より。写真・中島慶子(本) インタビュー、文・三浦天紗子

(by anan編集部)

Share

  • twitter
  • threads
  • facebook
  • line

Today's Koyomi

今日の暦
2026.3.
26
THU
  • 六曜

    先負

  • 選日

    ⺟倉⽇

⻑く頭を悩ませていた問題が鮮やかに解決へと向かう⽇です。誠実で、飾らない⾃分の良さを信じてみてください。あなたの謙虚で真っすぐな姿勢は⾔葉を超えて周囲に伝わり、良き理解者を引き寄せます。無理に⼈を繋ぎ留める必要はなく、去る者は追わずの開かれた⼼で接していれば、真に必要な縁だけが⾃然と結ばれていきます。

エンタメ

Recommend

こちらの記事もおすすめ

謎の生き物が相棒そっくり!? かわいさにジワる不可解コメディ『超常!未知との遭遇!?』
謎の生き物が相棒そっくり!? かわいさにジワる不可解コメディ『超常!未知との遭遇!?』
Entertainment
吉澤嘉代子「音楽の道を歩き続けたら、故郷に繋がっていたんです」
吉澤嘉代子「音楽の道を歩き続けたら、故郷に繋がっていたんです」
Entertainment
燃え殻「紆余曲折の果ての景色」|anan創作連載シリーズ
燃え殻「紆余曲折の果ての景色」|anan創作連載シリーズ
Entertainment
TXQ FICTION「神木隆之介」とは一体何だったのか。自分を演じることで生まれた意識と無意識
TXQ FICTION「神木隆之介」とは一体何だったのか。自分を演じることで生まれた意識と無意識
Entertainment

Movie

ムービー

Regulars

連載