モルモットが車になったら、世界はこんなに愛らしい!
「もしモルモットが車だったら、道路で渋滞が起きても、イライラしないのでは…」。とあるクリエイターのそんな思いつきから生まれたのが、モルモットが車になった“モルカー”。そしてその世界を描いたアニメ、『PUI PUI モルカー』。つぶらな瞳と、トコトコと足のように動くタイヤを持つモルカーたちは、羊毛フェルトでできたぬいぐるみ。このアニメは、そのぬいぐるみを1コマずつ動かし撮影し、その画像をつなげて映像にする“ストップモーションアニメーション”という手法で作られた作品。実写なのに動きにどこか味がある、そんなアナログ感あふれる温かい作風はもちろん、何よりモルカーたちの姿&動きの愛らしさが、世界をノックアウト! 実は子供番組内の、1話たったの2分40秒、しかも朝7時半からの放送だったにもかかわらず、SNSを筆頭にさまざまなメディアで「癒される!」「たまらん」と大いに話題になりました。
そんなモルカーたち、7月には再放送や、映画館での公開が決定! この夏、再びモルカー旋風が巻き起こる予感~!
かわいさ、愛らしさ、そしてシュールさなど、さまざまな魅力が詰め込まれたこの作品。世代を超えて人気になったその秘密を、6つのポイントから解き明かしてみます。
1 モルカーが“プイプイ”と動く、「ストップモーションアニメ」がすごい!
この作品の制作は、“ストップモーションアニメ”という方法。これは、静止画像を1枚撮影し、パペットを少し動かしまた撮影、少し動かし撮影…と繰り返していき、24枚の画像をつなげてやっと1秒の動画が出来上がる…という、途方もなく大変な方法なのです。1日に平均4秒分程度の撮影しか終わらないそうで、難しいシーンの場合は1日で1秒分、なんてこともあったそう。しかし、ストップモーションアニメだからこそ生まれるアナログ感や、作画のアニメにはない奥行きや立体感が、このデジタル全盛の時代には、むしろとっても魅力的。本当にモルカーがこんなふうに動くのでは…と思ってしまいます。
2 造形のかわいさがたまらない! 手のひらサイズの「羊毛フェルト」。
ふわふわの羊毛フェルトをニードルでチクチクと突いて圧縮していき、形を整えればモルカーが完成。実は登場するモルカーたちは、脚本も担当する見里朝希監督をはじめ、スタッフのみなさんの手作り! 全部で65台あるそうで、作るのになかなか時間がかかったとのこと。顔や耳はもちろん、タイヤのような足も動くところがたまりません。放送中から、Twitterなどネットには、羊毛フェルトでモルカーを作った人たちの、力作の写真が多数。また現在は「ニードルフェルトでつくる PUI PUI モルカー」が、毛糸などを扱う会社のハマナカから絶賛発売中。自分でモルカーを作ってみたい人は、ぜひ検索してみてね。
3 顔ぶれ、性格もいろいろ。個性あふれる「レアモルカー」も。
メインキャストを務めるモルカーは、ポテトをはじめとした5台。でもその他にもユニークなモルカーがたくさん登場。特に注目は、個性がありすぎる系のキャラ強めモルカー! タイムマシンみたいだったり、DJだったり、冒険家みたいなモルカーだったり…。他にも結婚したカップルを乗せていく真っ白で花を飾ったモルカー、海老を背負った“寿司モルカー(海老)”に、ハンバーガーを上に載せた移動販売車の“ハンバーガーモルカー”なども登場。いずれも、装備はもちろん、顔つきや動きも異なるので、好みのモルカーを見つけるのも楽しみのひとつ。本当にこんなモルカーがいる世界に住んでみたい~!
4 言葉がなくてもしっかり伝わる、モルカーの「喜怒哀楽にきゅん」。
モルカーたちの、鼻と口を常にヒクヒクと動かしている様子は、本物のモルモットのようでなんともリアル。モルカーたちが集まり顔を突き合わせているのを見ていると、本当にコソコソとおしゃべりをしているみたいです。さらに食べるときには口がもぐもぐ、驚いたときには口が開き、暑いときには汗をかきながら耳を垂らす、といった表情豊かな様子には、ストップモーションアニメならではのキュートさがあふれています。特にファンからの人気が高いシロモちゃんの、目に涙を浮かべてウルウルする様子の愛らしさは格別。それぞれのモルカーの性格が異なるのと同様、表情もみんな微妙に違います。その違いを楽しんでみて!
5 2分40秒にぎゅっと詰まった、「シュールなストーリー」に夢中。
モルカーの1話はたったの2分40秒。いずれもおもしろくてあっという間に見終わってしまいますが、たくさんの展開と、驚くべきストーリーが隠されています。スピード&テンポが絶妙で、どのお話も「どうなるの? どうなるの??」とついついワクワク。そもそもモルモットが車である、というだけでもかなりシュールな世界線ですが、そこに身勝手な人間が絡んだり、そんな人間にモルカーが反旗を翻したり…といった展開に、さらなるシュールが上積みされていきます。加えてユニークなのが、モルカーの中にいる人は“実写”なのに、モルカーに乗っていない人は人形で描写されていること。そのあたりの塩梅も絶妙です。
6 細かく作り込まれた「ミニチュアの街並み」に釘付け。
羊毛フェルトで作られたモルカーたちがかわいいのはもちろんですが、この作品は彼らが住む世界のセットも素晴らしい! 家や建物、道路に加え、街路樹、街に飾られた看板まで、制作陣のこだわりと愛情がたっぷり詰まっていて、何度見ても飽きません。作るのがとても大変そう…と思うと同時に、でも絶対作業は楽しいだろうな、とも思わせられる、そんな夢があふれる世界。ちなみにフレーベル館から出ている絵本『PUI PUI モルカー ストーリーブック PUI PUI モルカー 渋滞はだれのせい?』では、動画では一瞬しか映らなかったセットが隅々まで見えると大好評。セットや背景が気になる人は、ぜひそちらもチェックを。
※『anan』2021年6月23日号より。
(by anan編集部)