いまや空前の“もふもふ”ブームといえるが、もふもふにデレデレしているのは現代人だけではない。山村東さんの『猫奥』は、江戸城大奥で猫に萌える女性たちのコメディだ。
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「江戸時代が好きなのですが、大奥の知識に関してはほとんどなく、ドラマで描かれるようなドロドロしたイメージしかなかったんです。それで何冊か本を読んでみたら、大奥に勤めていた20代後半の女性が、このまま仕事を続けるか、退職して大奥を出て結婚するかで悩み、占い師に相談したという記録があるらしく。それって現代の感覚に似ているなあ、と親近感が湧きました」

主人公は、ドラマなどでもおなじみの人物といえる、大奥を取り仕切る御年寄(おとしより)の滝山。本当は猫が大好きなのに生真面目な性格かつ、眉間にしわを寄せた険しい表情がデフォルトであるため、いつの間にか周りからは猫嫌いだと誤解されている。ほかの女中たちが猫にかまけて、キャッキャしているのを鋭い目つきで見つめながら、心の中はうらやましさでいっぱい。そんな滝山が人目を忍んで翻弄されているのが、上司である姉小路(あねがこうじ)の飼い猫で、ふてぶてしさが味わい深い、吉野ちゃん。

「大奥は今でいう社宅みたいに、同じ職場の人が一緒に暮らしていた場所。猫はいろんな部屋を自由に行き来していたんじゃないかなと、想像を膨らませました。吉野ちゃんは、滝山が敵わない相手にしないといけないので、人を人とも思っていないようなマイペースな猫になりました。だけどまあ、猫をかわいいと思う人は、その時点で猫には敵わないものですけどね(笑)。そういう敵わなさを出せたらと思っています」

猫を2匹飼っている山村さんもまた、“敵わない側”のひとり。吉野ちゃんやほかの猫たちのちょっとしたしぐさや佇まいなど、猫好きのツボを心得ているところはさすが。そして猫だけでなく、大奥の人間模様も見どころ。滝山と真逆なタイプで派手好きな同僚の花町や、滝山が素性を隠して文通する、吉野ちゃん専属のお世話係である美登(みと)など、従来の嫉妬が渦巻くようなイメージとは、少々異なる女の園がそこにはある。

「限られた空間に2000人近くの女性がいたのだから、つらいことばかりではなく、女子校みたいな楽しさもそれなりにあったのではないでしょうか。大奥について知らなかった私が面白いと思ったことや驚きを、素直に落とし込んでいきたいです」

2巻では、滝山が猫好きであることを察する人物も登場。猫と大奥、なんともクセになる組み合わせだ。

『猫奥』2 猫好きだと誰にも言えぬまま吉野ちゃんを密かに愛でる滝山に、ついに味方が!? 本作で連載デビューする前の作品「こまとちび」も収録。こちらにも猫! 講談社 715円 ©山村東/講談社

やまむら・はる マンガ家。2018年「フク」で第6回THE GATE大賞を受賞。その後『モーニング』に読み切り「こまとちび」「おのぼり侍」を掲載。

※『anan』2021年6月2日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子

(by anan編集部)

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