北村:薫は思っていることを言葉や表情に出さない無個性な男の子に見えますが、満水のダムのようにいつ感情が溢れてもおかしくない危うさを秘めています。実際に物語の終盤で爆発するシーンがあるので、そこに自然に向かっていくために、考え抜いて演じたというよりは、現場でのキャッチボールを大事にしました。そこに関しては菜奈ちゃんと亮くんに絶大な信頼を置いていたので。
小松:美貴はみんなが悲しい時に笑っていたり、喜んでいたり、普通の人と真逆の感情を抱いているような女の子。下半身が不自由になった一が腕で階段をよじ登るシーンでも、美貴は喜んでいないといけないのに、私自身は見ていて苦しくなるくらいウルウルきてしまって。そんな自分の感情と美貴の感情に差があるところが演じていて難しかったです。
北村:映画『ディストラクション・ベイビーズ』で初共演した時は僕が17歳で菜奈ちゃんが19歳だったから、すごく大人びて見えて…、今回僕が兄役なのが不思議で。
小松:でも匠海くんがお兄ちゃん役って聞いた時はすごく安心しました。
北村:僕も。任せて大丈夫だなって。
小松:初共演の時から、なんか初めての感じがしなかったよね? 私、すごい人見知りなんだけど…。
北村:そう、僕もめっちゃ人見知りなんだけど、自然と喋ってた。
小松:今回に至っては吉沢さんもそうだから、人見知り3人組で(笑)。
北村:なのに、すっごい自然だった。
小松:何も頑張らない感じが似てたのかも。誰も無理して喋ろうとしなかったし。だから沈黙もあったけど、全然それもいやじゃなくて。
北村:本当にしょーもないことで笑い合えるきょうだいだったんですよ。菜奈ちゃんが「おつカレーライス」って言いだして、みんなで爆笑したり。居心地よかったよね? 菜奈ちゃんがそこまで親父ギャグを言うとは初共演の時は思ってなかったけど(笑)。今回初めて知った一面だった。
小松:匠海くん料理できるよね?
北村:めっちゃできるぜ!(笑)
小松:それは今回私が初めて知った匠海くんの一面。一緒に餃子を作るシーンで、「嘘でしょ!?」って思うくらい包むのが上手でびっくりして。
北村:普段から自分で50個包んで食べたりしてるからね。
小松:私たち3人の空気感は似てたけど、サクラの態度だけは違わなかった? 誰が自分より上か下かってことが分かっちゃったのかも(笑)。
北村:我々は下すぎてね。
小松:吉沢さんにベタベタだったし、父親役の永瀬(正敏)さんにはそんな顔する!? ってくらいメロメロで。
北村:なのに僕らにはツンツン。遊んでやってもいいよって感じ(笑)。
小松:そうそう。逆に私たちのほうが遊ばれてたよね(笑)。
『さくら』 一(吉沢)の死をきっかけに、父(永瀬)は音信不通になり、薫(北村)は地元を離れて東京の大学へ進学。家族の繋がりが壊れかけていたある日、父から「年末、家に帰ります」という手紙が届いて…。11月13日公開。©西加奈子/小学館 ©2020「さくら」製作委員会
きたむら・たくみ 1997年11月3日生まれ、東京都出身。俳優、ダンスロックバンド「DISH//」リーダー。映画『アンダードッグ』は11月27日、『砕け散るところを見せてあげる』『東京リベンジャーズ』は来年公開予定。
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こまつ・なな 1996年2月16日生まれ、東京都出身。女優。主演映画『糸』が公開中のほか、待機作に『恋する寄生虫』がある。昨年公開された映画『閉鎖病棟―それぞれの朝―』のBlu-ray&DVDも好評発売中。
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※『anan』2020年11月11日号より。写真・内田紘倫(The VOICE) スタイリスト・鴇田晋哉(北村さん) 遠藤彩香(小松さん) ヘア&メイク・佐鳥麻子(北村さん) 秋鹿裕子(W/小松さん) 取材、文・菅野綾子
(by anan編集部)