上白石萌音、役所広司を見習いたい? ドラマ撮影でのエピソード披露

エンタメ
2020.08.28
ピュアで穏やかなのに芯が強くて、ひたむきな姿が共感を呼ぶ。まさに少女漫画のヒロインを地でいくような人。なのにご本人は、「上白石萌音は信用していない」と話す、その理由とは――。

もともと前に出るのが苦手。主旋律よりハモリのほうが落ち着く。

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その演技力は、いまや誰もが知るところだが、一昨年には帝国劇場で上演された大作ミュージカル『ナイツ・テイル―騎士物語―』に出演するなど確かな歌唱力の持ち主でもある。そんな上白石萌音さんの、初のオリジナルフルアルバム『note』がリリースされた。

――RADWIMPSの野田洋次郎さんをはじめ、錚々たるメンバーが楽曲提供されている豪華な一枚になっていますね。

上白石:恵まれたというか、幸運な一枚ですよね。一曲一曲の熱がすごくて、自分でもなんて一枚になってしまったんだ、どうしようと思ったくらいです(笑)。

――「あくび」はご自身で作詞された楽曲ですが、どんなことを考えて書かれたんでしょうか。

上白石:企画として一般のみなさんからどんな曲を歌ってほしいかを募った上で作った曲なんです。幸せな曲が聴きたいという声が多かったので、こんな状況下でも幸せって身近にあるんだよって伝えたくて、生活感のあるものを目指しました。曲が先にあって、そこにハマる一番いい言葉を音数に合うように探していったので、言葉遊びのような感覚に近かったです。

――全体を通して、すごくフラットに歌われている印象でした。

上白石:それは今回すごく意識したところです。余計な色付けをしなくてもそのままで素晴らしい楽曲が揃っていて、どうやったらそれが一番いい形で届くかを考えた時に、私は何もせずに、むしろ変に声が色を持たないほうがいいのかなと思いました。あとは、後ろに鳴っている楽器がこれだから、そこに合う声を出そうとか、でしょうか。演奏にもすごい方々が参加してくださっているので、後ろの音を楽しんでもらうのに、声が邪魔にならないようにしたいなと思って。

――今回が初のフルアルバムなのに、上白石萌音を前面に出していこうとはならなかったんですね。

上白石:性分として、もともと前に出るのが苦手というか、できればあまり目立ちたくないタイプなんです。主旋律よりハモリを歌っている時のほうが落ち着くし(笑)。ただ、最初からそういうアルバムにしようと考えていたわけではなくて、一曲一曲どう歌おうかと考えていたら、このアルバムになっていたという感じなんです。

ドラマを見るたび、曲を聴くたびに反省しています。

――ご自身は昭和の歌謡曲がお好きなんだとか。

上白石:大好きです。とくに‘70年代、‘80年代の歌謡曲って歌詞は素晴らしいし、メロディラインも素敵で、いま聴いても全然色あせていないじゃないですか。妹も好きで、キャンディーズさんとかをふたりで歌っています。

――当時の歌手の方は、楽曲の世界観をドラマティックに表現される方が多い気がします。女優として培った表現力が歌手としての表現に活かされることはありますか。

上白石:以前は必死すぎてよくわかっていなかったんですが、いろんな曲にいっぱい出合っていくなかで、お芝居も歌も一緒だ! って思うことが増えてきた気がします。もちろん勉強しなきゃいけないことが違うし、緊張感の種類も違うんですけれど、よく聴くことの大切さはどちらも同じ。歌の場合は、後ろでドラムがどんなビートを刻んでいて、ここでベースが動くとか、ここで別の楽器が入ってくるとか、それをよ~く聴いて、曲の展開と同じように歌うことが大切なんですよね。お芝居もそう。以前出演した舞台で、演出家の栗山民也さんから、しゃべること以上に聴くことを大事にしなさいって言われたことがあります。相手役のセリフはもちろん、その時の空気とかお客さんのちょっとした揺らぎとか、そういったものに耳を澄ませなさいって…。音楽もお芝居も自己中になっちゃいけなくて、周りとの調和があって成立するものなんだなって思っています。

――お芝居でも、上白石萌音が先にあるのではなく、周りありきで役に入っていかれるんですね。

上白石:私、あまり上白石萌音のことを信用していないんです。役って、どれもすごくカラーがあって、魅力的でドラマティックじゃないですか。私にはそんな個性も魅力もないんで、演じながら羨ましいなぁと思っています。

――そんな…。そもそもデビューのきっかけである「東宝シンデレラ」もですし、『舞妓はレディ』のヒロイン役もオーディションで掴み取ったものですよね。それって、多くの人に魅力的だと思われた結果だと思うのですが…。

上白石:たぶんデビューしたての頃のほうが、まだ自分に自信があったような気がします。あの頃は何も考えずにぶつかっていける“無知の強さ”があったと思うんです。でもいろんな経験をさせていただいて、いろんな役や人に出会って、自分と比べてしまって至らなさに落ち込むことも多いし、怖さも感じるようになって…。いまはドラマを見るたび、曲を聴くたびに反省します。でも調子に乗ってしまうほうが怖い気がして、まだ大丈夫なのかなって思っています。

――すごい方々と共演していらっしゃいますし、目指す目標が高いからこそなんだと思います。

上白石:いまも忘れられないことがあって…。『陸王』というドラマで役所広司さんと共演させていただいたんですが、役所さん演じる父親が息子の秘めていた情熱に気づくという場面で、一発目から素晴らしい演技をされていらしたんです。でもご自身が納得されず、周りに頭を下げられ、私にも「ごめんね。もう一回付き合って」って謝られながら、お芝居を追求されていらして。役所さんほどの方が、あんなに謙虚にお芝居に向かっていらっしゃるってすごいですよね。人間性含めて見習いたいです。

上白石萌音さん初のオリジナルフルアルバム『note』が発売中。RADWIMPSの野田洋次郎さんや大橋トリオさん、いきものがかりの水野良樹さん、YUKIさんなど豪華アーティストが楽曲提供した全10曲を収録。通常盤は2727円。32ページのミニ写真集とDVDがついた初回限定盤は4000円。アルバム初回プレス分には9月19日のオンラインライブのスペシャルプライスコードが封入。

かみしらいし・もね 1998年1月27日生まれ、鹿児島県出身。2011年に「東宝シンデレラ」オーディションで審査員特別賞を受賞。‘14年の初主演映画『舞妓はレディ』では、その高い歌唱力も注目され、‘16年のアニメ映画『君の名は。』ではヒロインの声を演じた。映画『L・DK』やドラマ『恋はつづくよどこまでも』など話題作に次々出演。歌手としても初のオリジナルフルアルバム『note』が発売中。

※『anan』2020年9月2日号より。写真・小林真梨子 スタイリスト・嶋岡 隆 北村 梓(Office Shimarl) ヘア&メイク・高村三花子 インタビュー、文・望月リサ

(by anan編集部)

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