ウイルス、細菌、アレルギー物質…。身の回りには美と健康を脅かす危険がいっぱい。
こうしたリスクから自らを守るために、私たちには生まれつき授けられた力がある。
それが“免疫”。
「免疫とは、ウイルスなどの病原体による感染症などから身を守る働き。侵入した病原体を免疫細胞が食べたり殺したりする“自然免疫”、病原体を抗体というオーダーメイドの武器で排除する“獲得免疫”という2段階があります。獲得免疫には学習能力があるため、一度罹った病気には二度と罹らないか、罹っても軽く済むのです」(中村康宏先生)
ところが、最近はこの大事な免疫力が下がっている人が多いという。なぜだろう。
「ストレスや疲れが溜まると、自律神経のうちの交感神経が優位となり、免疫力が下がります。また、食生活が乱れて腸内環境が悪くなると、その情報が脳に伝わり免疫力が落ちるのです」
免疫力が下がると、感染症への抵抗力が落ちるばかりではなく、がん、肥満、アレルギーなどのリスクが上がり、老化も進んでしまう、と中村先生は警告する。
「その背景にあるのは、免疫が正しく働かないために生じる慢性炎症という現象です。炎症自体は、組織の異常を抑える反応で免疫の一種。その本来すぐ終わるはずの炎症がダラダラ続くのが、慢性炎症です。慢性炎症は活性酸素による酸化、余分な糖分が細胞を劣化させる糖化と連鎖反応を引き起こし、生活習慣病や老化を進めてしまうのです」
免疫力を高めて正しく機能させつつ、慢性炎症にブレーキをかけるために何よりも大切なのは、日々のライフスタイルの見直し。
「特定の食べ物やサプリメントに免疫力を上げる効果は期待できません。それよりも、お金をかけずにできる、毎日のライフスタイルの改善こそが免疫力を高める秘訣です」
中村先生に作ってもらった下のリストで、早速ライフスタイルをチェック。悪しき習慣や心身の状態を改め、落ちた免疫力を正常化して慢性炎症をブロックしよう。
いくつ当てはまる? 普段の生活を振り返って確かめてみよう!
何気ない生活パターン次第で免疫力は落ちる。心身の不調は免疫力ダウンのせいかも。当てはまる項目が多い人は、できるところからライフスタイルを正しく変えていこう。
食生活編
□朝食を食べないことが多い
□肉、魚、野菜のバランスが偏りがち
□甘いものが好き
□インスタント食品、炭酸飲料などが好き
□一人で食事をすることが多い
バランスのいい食生活で免疫細胞を元気にする栄養素を摂りたい。甘いものの食べすぎは糖化を進め、インスタント食品や炭酸飲料は腸内環境を悪くする。孤食はストレスのもと。
生活習慣編
□休日は家でゴロゴロすることが多い
□眠りにつく時間が日によってバラバラ
□スマホ、パソコン依存度が高いと思う
□薬をよく飲む
□入浴はシャワーのみ
抗生物質に頼りすぎると腸内の善玉菌が死んで免疫に悪影響が及ぶ。眠りは疲労を回復させて交感神経の興奮を抑える。入浴や適度な活動で血流を促すと免疫細胞の働きも活発に。
カラダ編
□PMS(月経前症候群)がひどい
□冷え症、肩こり持ち
□下痢、便秘になりやすい
□風邪をひきやすい、長引きやすい
□太り気味、痩せすぎ
ここに挙げた自覚症状はいずれも慢性炎症や腸内環境の悪化、ホルモンバランスの乱れによるもの。免疫力低下のサインであると同時に、放置するとさらなる免疫力ダウンを招く。
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メンタル編
□仕事や家族で気になっていることがある
□大声で笑うことがあまりない
□この1か月、テレワークだった
□一日中、人と話さない日がある
□大好きな趣味と言えるものがない
「病は気から」というように、メンタルが免疫に及ぼす影響は想像以上に大きい。不安や心配をできるだけ減らすため、親しい人との会話や笑い、趣味などでストレスの解消を。
中村康宏先生 虎の門中村康宏クリニック院長。医師、米国公衆衛生学修士。アメリカで最先端の予防医学などを幅広く学び、帰国。日本初のアメリカ抗加齢学会登録施設となるクリニックを東京で開業。
※『anan』2020年4月22日号より。監修・中村康宏(虎の門中村康宏クリニック院長) イラスト・加納徳博 取材、文・井上健二
(by anan編集部)