女子フィギュアが進化! 今季は男子も驚きのジャンプ構成!?
「フリープログラムの中で、4回転ジャンプを4回、5回と跳ぶ選手が次々と出てきた、(平昌五輪前の)男子シングルと同じような状況が、女子にも訪れているのではないでしょうか」
平昌五輪が終わって迎えた今シーズンの女子シングルの状況を、小塚崇彦さんはそう話す。昨年末に行われたロシア選手権では、4回転の中でもっとも難しいルッツジャンプを2人の選手が跳んで、ワンツーフィニッシュ。その翌日に行われた全日本選手権フリーでは、紀平梨花と細田采花の2選手が、トリプルアクセル(3回転半)と、そこからの連続ジャンプを着氷。それに先んじて行われたグランプリファイナルでも、紀平選手とロシアのエリザベータ・トゥクタミシェワ選手が、トリプルアクセルに成功。浅田真央さんの引退以降、あまり動きがなかった女子のジャンプ構成が、堰を切ったようにレベルアップし、面白くなっている。
「女子シングルの選手が挑戦する高難度ジャンプといえば、そのほとんどが3回転―3回転の連続ジャンプでした。それが、ロシアのジュニア世代から、4回転ジャンプを跳ぶ選手が出てきたことで、一気に変わってきました。4回転どころか、4回転からの連続ジャンプまで跳んでしまうんですから、男子もびっくりですよ。それこそ、ちょうどいま、ジェネレーションチェンジ(世代交代)が起こっているところじゃないかな」
とはいえ、4回転を跳ぶのは、主に世界選手権には出場できない年齢のジュニアたち。今季の世界選手権のメダルの行方は、どうなるのだろうか。昨季は、平昌五輪で銅メダルを獲得したカナダのケイトリン・オズモンド選手が金、樋口新葉選手が銀、宮原知子選手が銅メダルを獲得した。今季、オズモンド選手は休養中ながら、平昌五輪の金メダリスト、アリーナ・ザギトワ選手も、おそらく出場してくる。それでもなお、「今回は、前回以上に、日本の3選手の活躍が目立つ大会になると思います。坂本花織選手は、女子では回転不足がとられやすいジャンプも、正確に跳ぶことができるのが強み。紀平選手は、なんといってもトリプルアクセルジャンプが武器ですが、それ以外のスピン、ステップ、スケーティングといった技術も高い。宮原選手は、全日本選手権では少しミスが出てしまいましたが、なにより、どんな状況でもミスを最低限に抑えられる経験がありますから」
それに加えて、今回の会場はさいたまスーパーアリーナ。地元開催という地の利もある。
「あとは、チャンピオンシップと呼ばれる世界選手権や四大陸選手権のような一発勝負の戦いは、調整能力や、ここぞの集中力が求められる。そこが勝負を分けるのではないでしょうか」
紀平梨花 ジュニア時代から“女子シングル選手初”の称号!? をいくつも獲得してきた天才肌の16歳。シニア1年目となる今季も、3回転半―3回転の連続ジャンプをプログラムに組み込み、グランプリファイナルでは、平昌五輪金メダリストのザギトワ選手を抑え、初優勝。一躍、世界のトップに。全日本選手権では一歩及ばず、銀メダル。
写真:7044/アフロ
エリザベータ・トゥクタミシェワ 五輪明けのシーズンになるとなぜか復調する不思議な選手。体を絞って迎えた今季も、キレのあるトリプルアクセルを跳び、グランプリファイナルでは銅メダル。浮き沈みを経験してきたからなのか、22歳になったばかりとは思えないほど貫禄十分。エキシビションで見せる悩殺クリムキンイーグルは、もはや代名詞!?
写真:森田直樹/アフロスポーツ
アリーナ・ザギトワ 15歳で平昌五輪に出場。すべてのジャンプを、得点が1.1倍になる後半に組み込むという常識破りのプログラムで、金メダルを獲得。日本から秋田犬が贈られ、マサルと名付けたのは、有名な話。今季のロシア選手権ではジャンプミスが出て、なんと5位に沈んでしまったが、長い手足が氷上映えする美しい選手。
写真:YUTAKA/アフロスポーツ
坂本花織 ジュニアグランプリファイナルと、世界ジュニアで銅メダルを獲得。シニアにあがった昨シーズン、全日本選手権で2位となり、平昌五輪に出場して6位入賞。一気にトップ選手への階段を駆け上がった、明るく、ざっくばらんなキャラの18歳。昨年末、最終滑走の重圧も何のその、初の全日本女王に輝いたのは、記憶に新しい。
写真:YUTAKA/アフロスポーツ
小塚崇彦さん 圧倒的なスケーティング技術を持つフィギュアスケーター。2011年世界選手権で銀メダル。’16年現役引退後は、日刊スポーツなどで解説するほか、スケートのブレードも開発。
※『anan』2019年1月30日号より。写真・小笠原真紀(小塚さん) 取材、文・齋藤優子
(by anan編集部)