意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「米中貿易戦争」です。

自国産業を守るはずが、自らの首を絞める結果に。

社会のじかん

いま、アメリカと中国の貿易戦争が激しくなっています。アメリカの貿易赤字を解消し、経済を立て直したいと考えているトランプ大統領は、最大の貿易赤字を出している中国に対して関税を引き上げることにしました。これに対し、報復措置として、中国側もアメリカに高い関税をかけ、競争はエスカレート。11月末の米中首脳会談で進展がなければ、アメリカは、中国からの全輸入品にさらに制裁関税をかけると発表しました。

自動車でも、農産物でも、海外からの輸入品が安く手に入るようになれば、国内産のものは競争に負け、売れなくなってしまいます。そうならないよう、自国の産業を守るために、輸入品に関税をかけるのです。

トランプ大統領は、自身の支持層でもあるドメスティックな企業を守ると約束し、TPPやNAFTAなど、関税をなくして人やモノが自由に行き来する「自由貿易」の流れから真逆の方向に向かいました。しかし、現代はグローバル社会です。すべてを自国でまかなえた時代はそれでよかったのですが、いまやドメスティック産業も、部品など、一部は輸入に頼っています。国産車が輸入車に負けないようにと関税をかけたつもりが、国産車を作るための原材料や部品は実は輸入しており、それらが関税により高額になったため、製品の価格も上げざるを得なくなり、結果売れない。というようなことが様々な産業で起きてしまったのです。

GDP1位と2位のアメリカと中国が貿易摩擦により国内経済がひっ迫すれば、世界経済も低迷します。ドルやユーロが不安定になれば、安定している円が買われる。すると、輸入品は安く手に入りますが、輸出は厳しくなる。輸出産業に頼る日本経済は冷え込んでしまうのです。日本はいま、自由貿易を推進していますが、安倍政権を応援する保守層には、いまのアメリカ同様に、国内にだけ目を向けた政策を望む声もあがっています。しかし、日本こそ、自国内だけでは商売が成り立ちません。トランプの関税政策は、中間選挙前の人気とりと捉える意見もあります。選挙が終わった今後、方向転換も考えられますから、目が離せません。

堀潤

堀 潤 ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN

※『anan』2018年11月21日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)



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