ディズニー製作のミュージカル。これだけで、作品の質はある程度保証されていると言っていい。一目で作品の世界観に引き込む舞台装置に、耳に残る楽曲。エンタメ性と同時に深いテーマ性もあり、全方位的に楽しめる作品ばかりだ。ただ、ディズニーミュージカルのすべてが華やかでファンタジックな作品だとは限らない。『ライオンキング』や『アラジン』のような気持ちで『ノートルダムの鐘』に足を運べば、きっとポカーンとしてしまうに違いない。
舞台の上に広がるのは、陽の差し込む寺院のセット。静謐さの漂う雰囲気だけで、このミュージカルが、これまでの作品とはカラーが違うことがわかる。そしておもむろに、静かで美しく荘厳なコーラスが流れて物語が始まる。主人公は醜い容姿に生まれた青年で、ヒロインは妖艶で美しいけれど貧しいジプシー。そこで繰り広げられるのは、容姿や生まれ育ちによって迫害される人々と、醜い欲望を抱いた聖職者との対立だ。
うっとりするラブロマンスも陽気なダンスも、わかりやすいヒーローもプリンセスも、ここには登場しない。主人公もヒロインも人間の弱さと強さの両方を抱え、その矛盾のなかで悩み惑い、時に間違いを犯しながら、自らの頭で考え、必死に自らの生き方を探していく。そのひたむきなドラマに、気づけばのめり込み、彼らの動向から目が離せなくなっている。ラストに、思い描くようなハッピーエンドではないけれど、清々しいエンディングが待っていて、感動がじわりと染み入る。重厚感のある大人なミュージカルなのだ。
『ノートルダムの鐘』 上演中~8月28日(火) 横浜・KAAT 神奈川芸術劇場<ホール>S席1万1880円~サイドC 席3240円ほか(すべて税込み) 劇団四季予約センター TEL:0120・489444 www.shiki.jp/ 9月22日(土)からは名古屋四季劇場で上演。
©Disney 撮影:上原タカシ
※『anan』2018年6月13日号より。文・望月リサ
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