2001年、警視庁捜査二課に属する名もなき刑事たちが、ある“機密費”の存在を暴き、そのうち約10億円が当時の要人外国訪問支援室長に詐取されていたことを突き止めた。まさに国家のタブーである。この「外務省機密費詐取事件」を題材にした清武英利氏の小説『石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの』が、『連続ドラマW 石つぶて~外務省機密費を暴いた捜査二課の男たち~』として、WOWOWで放送中。主人公を演じるのは佐藤浩市さん、主人公の上司役には江口洋介さん。俳優として、大人の男性として、どこまでも深い奥行きを持つこのお二人に、ドラマの話や大人の男論を語っていただいた。
――本格的なタッグを組んでの共演は今回が初だと伺いましたが、お互いの印象を教えてください。
佐藤:江口から見れば知ってる俺だろうし、俺から見れば知ってる江口だし。現場で全然違う人だったら困っちゃうよね(笑)。
江口:そうですね。佐藤さんの出演作は『魚影の群れ』とか、いろんな作品をずっと観ていましたから。
――当時の佐藤さんのイメージってどんな感じでしたか?
江口:頭に浮かぶのは様々な作品の衝撃的なシーンばかりで、今でも残像として残っていますね。世の中にあるキレイなものだけではない、人間の弱くて深い部分を体で演じるというか、生き様で演じている方だなあ、と思っていました。
――今回のドラマは、実際にあったタブーな事件をベースにしていますが、演じるのはそれぞれどんな男なのでしょうか。
佐藤:俺が演じる木崎(睦人)は警視庁捜査二課の刑事。警察って日本で一番巨大な組織だから、複雑なんだけど、その中でも二課は特殊で、事件が起こってから動くのではなく狙いをつけたヤマを極秘に調べて暴き、逮捕にこぎつけるという課で、そんな中にいる刑事たちってやっぱり独特でとても偏屈な大人たちなんだよね。モデルになった人物が、みなさん今も存命だというのも面白いんですよ。遠い昔の二・二六事件をやっているのではない、2001年の機密費詐取事件だという、ある種の緊張感とワクワク感。誰も触れなかった事実に、俺たちはやってやってるという意識を持っているし、まさに“石つぶて”です。風穴まであけるわけじゃないけど、小石はぶつける、というね。これこそ我々のような表現をやってる者の楽しみですよね。木崎については、最初に若松(節朗)監督と会った時に、これまでの刑事ドラマの中で一番魅力のない主役にさせてもらいます、ってお願いしたんですが、見ている側が、イヤだな、感情移入できないな、っていうような男です。そういうふうに演じてしまうことへの申し訳なさは、木崎のモデルになった方にあって。だからこそ、ご覧いただいたあとの感想を聞いてみたいですね。モデルの方とは、その人物像にのまれちゃいそうだったから事前にはお会いしていないんですが、絶対にクセがあって面白い方のはず。
――ただかっこいいだけの刑事じゃない、ってことですね。
佐藤:まあ、それでもかっこよくなっちゃうんだけどね(笑)。
江口:僕が演じるのは、暴力団を相手にする四課から経済犯罪を扱う二課に異動してきた斎見(晃明)という男。木崎の上司で、木崎とは最初はバチバチ対立するんですが、考えが近づく瞬間もありますし、かといってわかり合うわけではない緊張感のある関係ですね。実際にあった事件を、見てもらう人に正確に理解してもらわなければならないので、説明的なセリフにどうスピード感を持たせるのか、事件が解決するまで見ている人をどう引っ張っていくのかが、課題だと思っています。刑事は自分のヤマを見つけた瞬間から、全身全霊をかけて調べ上げて、解決していく。業種的にはもちろん全然違うんだけど、この作品に出合う前の僕と、役に入った時の僕にもそれに似たものがあって。そんな、成し遂げていく過程での自分の熱量を役に乗せていけたらいいなと思っています。このような国家を揺るがす大事件をテーマにしたドラマに参加できることに、とてもやりがいを感じています。
佐藤:世の中、不倫でこれだけ騒ぐのに、なんでこんなに大きな事件をスルーしたのか。当時メディアが口をつぐみ、マスコミが追いかけるのをやめ、なぜ誰もが見過ごしてきたのか。そう考えながら見ていただければ、その時代の日本の状況が見えてくるでしょうね。
江口:大の大人が激しくぶつかり合う作品も、最近は少ないですからね。その辺も楽しんでください。
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