意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「イラン戦争」です。
最も大切な市民の人権を無視して国際秩序も崩壊
2月末、アメリカ軍とイスラエル軍はイランへの攻撃を開始し、最高指導者のハメネイ師を殺害しました。イランは報復攻撃をし、ホルムズ海峡を事実上封鎖。多くの国への原油供給が不安定になり、エネルギー価格は高騰、世界経済に大きな混乱をきたしました。
昨年末から今年にかけて、イランでは生活苦を理由に、政府に抗議する市民デモが起きていました。ところが政府はそれを弾圧し、インターネットを遮断。海外に情報が流れなくなり、実態はよくわからなかったのですが、数千から数万人規模の死者が出ているともいわれていたんです。
イランの外務省に25年間勤めたアボルファズル・エスラミさんは、イラン政府の汚職や犯罪を告発して日本に亡命しています。エスラミさんは、外交官時代に、イラン政府が石油資源を海外に売り、莫大な資金を違法に北朝鮮や中国、ロシアに送り、武器やミサイル、核関連装備を購入していることを目撃しました。国の資源を一部の支配層が自分たちのものとして、武器をパレスチナのハマスやイエメンのフーシ派などに供給していることを世界に告発しました。
そして、本来、政府が守るべきイラン市民の暮らしは一向に良くならず、食料さえ買えない事態に陥っています。また、イランでは長年、女性を弾圧してきました。ハメネイ師は人権弾圧で国際法違反をしており、今回イランに攻撃を仕掛けたアメリカ、イスラエルも国際法を犯しています。
イスラエルとしては、イランの核開発計画の脅威を取り払いたかったという思い、アメリカは、「市民を弾圧した政府に対して、イラン市民の声を聞いて介入した」というスタンスをとっていますが、多くの市民が犠牲になるような方法でしか解決できなかったのかというジレンマがあります。
3月9日、イランは、ハメネイ師の次男のモジタバ師を新しい最高指導者に選出。反米体制は今後も続くことになりそうです。
イラン市民は変わらず苦しい生活を強いられています。第二次世界大戦後、世界の誰もが尊重されるようにと国際法が作られたにもかかわらず、法の秩序が崩れてきてしまっているんですね。
五月女ケイ子解読員から一言

平和のための暴力ってありなんでしょうか。そうしないと戦争が起きてしまうの? 「暴力はダメ」。生まれた時から教わってきたルールは政治には当てはまらないのか。世界が今、もう自分の考えが思い至らない場所に来てしまった気がして混乱しています。
解説員
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堀 潤
ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜20:00~21:00)が放送中。著書『災害とデマ』(集英社)が発売中。
解読員
Profile
五月女ケイ子
そおとめ・けいこ イラストレーター。楽しいグッズが買える、五月女百貨店が好評。細川徹との共著、ゆるくておバカな昔ばなし『桃太郎、エステへ行く』(東京ニュース通信社)が発売中。
anan 2489号(2026年3月25日発売)より















