話したい人とだけ話していればいいというのは、子どもの特権。成長するにつれ、初対面や気が合わない人とも会話をする機会が多くなります。無難にこなすだけでも精一杯かもしれませんが、自分も相手も「楽しい時間を過ごせた」と思えるような会話をできるのが、一目置かれる大人の女性。
「下世話な話やデリケートな話は当然避けたほうがいいですが、時事ネタといっても最近は、昨日盛り上がったことが今日はもう古く感じられることもあるくらい。だからこそ一般的な知識や普遍的な話題を幅広く持っていると、会話のなかに生きていきます」(国語講師・吉田裕子先生)
知識や教養を身につける方法はいろいろあるものの、最も手軽かつ効率的なのは、やはり読書。
「読書のコスパは抜群です。たとえば著名な方の考えを知りたいとき、講演会なら数千、数万円かかりますが、本を読むだけなら1000円程度で済みますし、時間や場所にも縛られません。またインターネット検索で得る断片的な情報と違って、本はある程度体系化されているのでわかりやすく、知識ゼロの分野を学ぼうとするときの入り口としても最適なのです」
有意義な読書法を身につけ、常に取り出せる知識をストック!
教えて! 先生。読み下手さんからの質問
Q. 読書が苦手な人はどうすれば好きになれますか?
A. タレント、スポーツ選手など好きな人のエッセイから入ってみて。
子どもの頃から読書に苦手意識があるような人は、「本=小説」というイメージに囚われているのでは?
「本といってもジャンルはさまざま。構えすぎず、タレントやスポーツ選手など、自分が好きな人のエッセイから入ってみるといいと思います。人気ドラマのノベライズや原作なども読みやすく、好きなシーンが活字だとどうなるのか比べると、新たな発見があるかもしれません。小説なら、いろんな作家の短編がテーマ別に収録されているアンソロジーから、好きな作家を見つけるのも」
ベストセラーのような話題性だけで手に取ると、挫折してしまうことも…。気になる人やテーマなど、自分に合いそうな本を探すことが、読書を楽しむ第一歩に!
Q. 実生活に生かせそうな本を選ぶコツは?
A. 旬の話題=フローの知識、深い知恵=ストックの知識を意識。
学ぶことを意識した読書は、フロー(流れ)とストック(蓄え)という2種類の知識に分けて考えると効率的。
「フローの情報は一時的に役に立つけれども、時や場所が変わると使えなくなるもの。時事ネタやトレンドは、雑誌やインターネットなども活用して収集する習慣をつけると、仕事の場での話題や発想力に生きてきます。本質的なストックの知識は、長く役に立ちます。少し難しいと感じた本でも、3回繰り返して読むのがおすすめ。1回目はざっと目を通して全体像を把握し、2回目はノートなどをとって理解を深め、3回目は要点を拾い読みして振り返りつつ、自分なりの見解も付け加えていくイメージ。会話で自分なりの意見を言え、物事に対する洞察力を感じさせることが」
Q. 本で知った名言・知識をさっと披露するにはどうすればいいですか?
A. 100字読書メモを習慣化して、要約力を身につけましょう。
読んだ本の内容は理解しているつもりでも、それを第三者にわかりやすく伝えたり、会話のなかに上手に取り入れたりするのは、意外と難しかったりするもの。
「要約というと堅苦しいイメージがあるかもしれませんが、手軽に要約力をつけるために、1冊の感想を100字にまとめる読書メモを習慣づけましょう。何についての本なのか、見どころ、感想の3点に絞って短い書評を書いてみるのです。また、役に立ちそうなデータや名言などは、スマホで写真を撮ったり、書き写したりするのも」
自分にとって参考になった部分を、1か所メモしておくだけでも効果あり。反対に100字でもの足りない人は、SNSやAmazonレビューなどに投稿するのを習慣に。
よしだ・ゆうこ 国語講師。予備校・高校に加え、大人向け古典講座も担当。『人生が変わる読書術』(エイ出版社※エイはきへんに世)、『大人らしく和やかに話す 知的雑談術』(日本実業出版社)など著書多数。
※『anan』2019年5月29日号より。イラスト・micca 取材、文・兵藤育子
(by anan編集部)
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