意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「移民キャラバン」です。

先進国の搾取が生んだ問題。人道的な解決策を。

社会のじかん

ホンジュラスやグアテマラなど中米諸国から、数千kmを歩きアメリカをめざす移民たちの集団「キャラバン」が、昨年11月以降、メキシコの国境の町・ティフアナにおしよせ、その数は1万人を超えました。彼らが着の身着のままで母国から逃げ、アメリカを目指す大きな理由は麻薬にあります。麻薬組織の活動がギャング化し、治安をひどく悪くしているのです。そのため安定した仕事がなく、貧困が深刻化、国内にとどまるならギャングになるしか道がない。警察も麻薬組織と結びついて機能しない。犯罪や暴力、飢えと貧困から逃れるためアメリカをめざす人々の呼びかけが、SNSにより広がり、みるみる膨れ上がったのでした。

しかし、トランプ政権は移民の受け入れを拒み、メキシコ国境に兵士を7000人超配備。違法入国を試みて拘束された人は2600人。難民申請を待つ人は2500人を超えましたが、ほとんどが却下されています。移民の受け入れに強く反対している人たちの中には、すでに移民としてアメリカに入国している人たちも。自分たちの仕事が奪われることを恐れているんです。

これまで中米は安い労働力、農作物の生産などでアメリカ経済を支え、自国の成長を阻害されてきました。自らの手で豊かさを手に入れるための教育や技術を持つことができず、麻薬に手をそめるしか道がなかった人々も少なくありません。この状況を打破するには、キャラバンの人たちが自国で安定した暮らしができるよう、国際社会が動かないといけません。国連ではSDGsといって、持続可能な開発目標を掲げ、各地域の貧困や紛争、人権を踏みにじる行為に、世界中が協調して取り組みましょうと、先進国側に呼びかけています。NPO法人「アクセプト・インターナショナル」がアフリカで行ってきた活動も、参考になるかもしれません。ギャングの若者に道徳的観念を伝え、社会復帰を促す支援を草の根的に行っています。かつて中東諸国に行ったように、苦しむ中米に対して人道支援をするのが日本の役割なのではないかと思います。そうして日本のシンパを増やすことが、安全保障にもつながるのではないでしょうか。

堀潤

堀 潤 ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN

※『anan』2019年2月13日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

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