「雑誌のイラストだったり、広告に使う絵だったり…。仕事で頼まれて描く絵はあらかじめテーマが決まっているので、それに沿って、さらに相手が何を望んでいるかを考えつつ描くもの。でも個展のために描く絵は、“私が何を言いたいか”が大事になってくる。まずはテーマ、絵を通して発信したいことを決める。そして自分の内面を探り、追求する作業があるところが、仕事で描く絵とのいちばんの違いでしょうか」
個展のために自身と向かい合い、考え、ペンを走らせることで、自己に対する新たな発見や驚きと出合える。その時間が楽しいと語ります。
「私ってこんなことを考えてたんだ、とか、こんなふうに世間を見て、感じていたんだということが、徐々に見えてくるのがおもしろいですね。絵を通して、世の中と自分を繋げていくような感じ。まさに今、その作業の真っただ中なので、日々自分と向き合ってる感じです」
今回のテーマは、日本人にとってとても大きな存在である、富士山。もともと好きで、今までも幾度となく描いてきたモチーフです。
「富士山は、私が思う“ザ・昭和”の象徴みたいな存在で、美しく素敵、愛らしさもありますよね。私自身は平成になってから仕事を始めて今に至るのですが、なぜかよく私の画風は、“昭和レトロ”と言われることが多くて(笑)。もうすぐ平成が終わる中で、あえてその“昭和の象徴”的なものを描くことに、なにか意味があるような気がしています」
本来は、そんなに主義主張を掲げるようなタイプの作家ではない、と自らを分析する五月女さん。しかし、ここ数年変化があるようで…?
「たぶんアンアンで、『社会のじかん』の挿絵を描いてることが、結構大きい気がします。あのコーナーに関わっていることで、いろんなことに興味が出てきて、少しずつ“伝えたいこと”みたいなものも出てきたというか…。一つの時代が終わる今、この先、時代や日本、世の中、そして私自身、どうなっていくのかなと、ふと思うことがよくあって。昭和という過ぎた時代をテーマにしつつ、この先の未来に繋がるような作品を作り出せたらいいですね」
あえて最後に無粋な質問を。個展では絵を販売するそうですが、売れたらやりたいことはありますか?
「えー!? じゃあ自動運転の車を買うべく、貯金しようかな。なんか明るい未来っぽくないですか? あと私、免許持ってないし(笑)」
今回展示する作品は、すべて販売するそう。富士山仕様の角隠しをかぶった淑女の絵が、今回のイメージビジュアル。その他の画像は順に、年賀状に使いたいくらいおめでたい絵、富士山クリスマスツリー仕様…。
そおとめ・けいこ イラストレーター。タレントやコラムニストとしても活動中。今年は台湾でも大規模な個展を開催し、大好評を得たそう。
『五月女ケイ子の富士山展』GALLERY HOUSE MAYA 東京都港区北青山2-10-26 11月19日(月)~12月1日(土) 11:30~19:00(土曜~17:00) 日曜休 無料 TEL:03・3402・9849 www.gallery-hmaya.com/
©keiko sootome
※『anan』2018年11月21日号より。写真・内田紘倫(The VOICE) インタビュー、文・河野友紀
(by anan編集部)
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