生態系や人体に悪影響を与えかねない問題です。
海洋プラスチック汚染が、いま問題になっています。プラスチックは、太陽光に当たったり、熱や雨にうたれると劣化し細かな破片になります。5mm以下のものを「マイクロプラスチック」といいます。でもどれだけ細かくなっても分解されず、自然に還ることはありません。この砕けたマイクロプラスチックと、洗顔料や歯磨き粉などに含まれる研磨剤のマイクロビーズ(これもマイクロプラスチックの一種)が、大量に海に流出しているのです。
国連によると、2015年のプラスチックゴミの発生量は約3億t。毎年800万tが海に流出。その半分は中国やインドネシアなど東南アジアの4か国から。しかし、別の調べでは日本からも数万tが流れ出ているという報告もあります。
いちばんの問題は、生態系が乱されること。海の小さな生き物がマイクロプラスチックをえさと間違えて食べ、それを小さな魚が食べ、やがてサメなどの大きな魚が食べます。しかし、消化されませんから、体内に蓄積。栄養がなくても満腹感を得られるため、魚は発育不良になります。また、プラスチックは有害物質が付着しやすい。そんなプラスチックゴミを食べた魚を最後に人が食べているのかもしれません。
今年カナダで開催されたG7で、プラスチックの製造や使用の規制強化を進める「海洋プラスチック憲章」に欧州4か国とカナダは署名しましたが、アメリカと日本はサインしませんでした。その後、EUの欧州委員会はストローや皿など、一部の使い捨てプラスチック製品の使用を禁止する方針を発表。一方、日本では「海岸漂着物処理推進法」の一部改正で、民間企業に対して、マイクロビーズの製品への使用を抑制するまでにとどまり、禁止や罰則を設けるまでには至っていません。国民の生活や産業に打撃を与えるかもしれない、という判断からです。
その後スターバックスがプラスチックストローの全面廃止を宣言しました。それに続き、日本でもすかいらーくホールディングスが、大手外食産業で初めて、撤廃を決めました。プラスチック製品は便利です。しかし、今後は付き合い方を考えねばなりません。
ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN
※『anan』2018年9月12日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子
(by anan編集部)
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