社会のじかん

赤い羽根は“戦争孤児”救済から…多様化する「共同募金」

ライフスタイル
2017.12.15
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「共同募金」です。
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税金だけではまかなえない問題の解決に。

12月に入り、各所で「歳末たすけあい運動」が展開されていますね。歳末たすけあい運動とは、共同募金運動の一環として、地域住民、ボランティア、民生委員、社会福祉協議会などの協力のもと、支援を必要とする人が安心して暮らせるように行われるさまざまな福祉活動のこと。共同募金で馴染み深いのは「赤い羽根」ですよね。赤い羽根共同募金の歴史は古く、はじまりは昭和22年。当時、戦争により家や仕事を失い、保護が必要だった世帯は90万以上、戦災孤児は数十万いたそうです。物価が高騰し、皆が生活に苦しんでいました。そんななか、第1回共同募金には5億9000万円が集まりました。労働者の平均賃金が1950円だった時代ですから、現在の貨幣価値に置き換えると1200億~1500億円。主に、戦災孤児の支援に使われました。

昭和26年には「社会福祉事業法」が制定され、共同募金は「都道府県の区域を単位とし、その区域内の社会福祉事業、更生保護事業などに配分されることを目的とする」と定められました。使い道は、地域や時代に合わせ、その都度、保育所の支援や老人ホームの給食、障害者スポーツの支援などにあてられました。設立70周年を迎えた昨年は「赤い羽根福祉基金」を創設。孤独死や生活困窮、児童虐待などの社会問題の解決を支援しようとしています。

本来なら国や自治体が全面サポートするべきなのでしょうが、どうしても税金だけではまかないきれないんですね。共同募金以外では、「休眠預金」の活用も。10年以上使われていない銀行口座の預金額が全国で年間800億円ほどあるそうなんです。それらの一部が、貧困対策や地域活性化などに使われるようになりました。ふるさと納税も、同様の目的で始められました。eコマースのように使われている側面もありますが、「犬の殺処分をゼロにする」など、動物保護や管理を目的に掲げている自治体も複数あるんですよ。

NPOや大学、企業、行政の有志が始めた、12月を寄付月間にする「Giving December」キャンペーンも3年目になりました。お金だけでなく、モノやイベント参加など、さまざまな支援が提案されています。

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堀 潤 ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN

※『anan』2017年12月20日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)


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