1980年代前半の漫才ブームで、アイドル的な人気を博したレジェンド漫才コンビ、ザ・ぼんち。昨年、『THE SECOND』ファイナリストとなり、今、再び脚光を浴びるふたりに迫ります。


おしゃれな舞台衣装でスタジオに現れたザ・ぼんちのおふたり。「おっ、おっ、おっ、おさむちゃんでーす!」という伝説の大声自己紹介ギャグを惜しげもなく連発してくれたぼんちおさむさんと、物腰柔らかで紳士的な里見まさとさんに、編集部スタッフ一同、一瞬で心を掴まれる。大御所でありながら軽やかな唯一無二のコンビが語る、漫才や相方への想い、そして野望とは。

左から、ぼんちおさむさん、里見まさとさん

── いろいろとお話を聞きたいですが、まず、おふたりの素敵なお洋服に目を奪われました…!

まさと ファッションの話になると、おさむさんは長いですよ(笑)。

おさむ 洋服に目覚めたのは中学生の頃。テレビで流れていたアメリカのドラマや映画が好きで影響を受けました。『ルート66』や『ウエスト・サイド・ストーリー』もカッコよかったし、『アメリカン・グラフィティ』も大好き。家族全員ファッション好きで、娘はアメリカで古着屋をやってます。今日着てきた私服のニットは結婚当時に嫁さんが編んでくれたもので、デニムジャケットには孫に絵を描いてもらいました。

まさと 孫自慢してはるから僕も言いますと、撮影の時につけていた胸元のバッジは、うちの孫が小学校1年生の時に描いた絵をもとに奥さんが作りはったんです。僕も服は好きですが、衝動買いが激しくて、着ないままの服もたくさんあります(笑)。

── 昨年漫才トーナメント『THE SECOND』に出場。「メッシ、メッシ…メッシー! おかずも食べなさい!」と叫ぶボケをはじめ、大きな話題となりました。

おさむ 第二の漫才ブームが来たんかと思うくらい、みんなから声をかけられてね。「最近よう出てるな」と言われるんで、「今までは出てなかったんかい!」と言いたい気持ちを抑えて「おおきに」と言うだけにしてます(笑)。

── ご自身より若い方と共に出場して感じたことはありますか?

まさと エネルギーがすごいし、上手い人が多いなと思いますね。

── おふたりが思う、上手いとは?

おさむ たとえば、リレーで言うたらバトンがちゃんと繋がっていること。僕らは落としたり、ちゃんと渡さずに投げたりしますけど。

まさと 僕は、舞台で自分を出している人。楽屋とかでしゃべっていたらめちゃくちゃおもろいのに、舞台に上がった途端、なんとも“行儀よく”なる人がおるんです。“行儀のいい”というのは、作ってる、演じてるようなことですね。

── ザ・ぼんちは1986年に一度解散。2002年に50歳で再結成されました。ネタを作っておられるのはまさと師匠ですが、昔と今で作り方に変化はありますか?

まさと 自分のやりたい漫才をやってきましたし、上方漫才大賞までいただいて、作家としての自信もちょっとはあります。ただ、2回目のザ・ぼんちをやった時に以前のネタを何本か入れたけど、“ああ、これではあかんねや”と思うくらい反応が違って、しばらく、あたふたしましたね。56~57歳あたりから小頑張りして、稽古もして、60前くらいに今のザ・ぼんちの素みたいなものが出来上がり、楽しくなっていきました。

おさむ 僕の場合、いいネタは、舞台中にパッとアドリブで思い浮かぶんです。突発的にひらめくというか、神がかり的に指令が来て、その通りに言うたらウケる。説明がつかないですけどね。使えへんやつもいっぱいあるけど。

まさと 漫才中、本人はいろいろやるんですけど、全体の流れからするともう諦めてやめたらええのにと思うことはあります(笑)。

おさむ 諦めない! 笑うまでやる! いつでも手を抜かずに思いっきりボケる。“何か言うてる自分”が自分の楽しみでもあります。

まさと この10年、台本を作っていて絶対にウケると思ったのが「メッシ」のネタです。案の定、一発目にやった時からドカンとなりましたけど、なかなかないことです。漫才ではツッコミが入って笑う形が多いですが、このネタに関しては僕がツッコむ前、おさむさんが「おかずも食べなさい!」と言うところで笑いが起きるので、僕はただただ見てるだけという新しい形。ちなみに、70歳を越えたときから途中で飛んでもええネタを作るようになりました。以前のネタもできるんですけど、覚えるのにむちゃくちゃ時間がかかるので。

芸人が多すぎる今の時代は大変やと思う(まさと)

── おふたりが思う面白い漫才とは。

まさと 僕は、漫才は絶対にニュース性がないとあかんと思っています。“今”じゃないと話題として面白くないですから。何年か前の漫才をやる時も、入り方は今のものにします。そして、先ほどの話にも繋がりますけど、一番嫌なのは、“普段のあなた方はそうやないやん”と思うような、演じてはるもの。たとえ笑いをとってはっても、つまらんな~と思います。逆に、そんなに笑いをとってなくても、夜寝る前とかになんとなく思い出して、“アホやであいつら…”となるような漫才は、面白いと思います。何度も聞いて知っているネタやのに、“バカやってるな~”と思うネタもですね。

おさむ 僕は、“間”かな。若い人の漫才を見ていて、詰め詰めで急いでる感じがするというか、もうちょっと間があったほうがええと思うことはありますね。漫才はおしゃべりやから、相手の言葉をちゃんと聞いてから返すまでの時間が必要。もちろん、間が空きすぎてもダメ。舞台が終わって家に帰ってから「それは違うやろ!」と言ったって困りますから(笑)。

まさと それぐらいやったら逆におもろいけどな(笑)。今の人は上手ですけど、僕らの時代と違ってあまりにも芸人の数が多すぎる。すごい人が出てきても、すぐに次のすごい芸人が出てくるから大変やと思います。

おさむ みんな上手やけど、頭2つ分くらい抜きんでてる人はいてない。頭1つ分やったらすぐに入れ替わりますもんね。『M-1グランプリ』とかの賞レースも大変やと思うわ。一番最初に出る時はええねんけど、回数を重ねるごとにネタもバレるし、新鮮な気持ちもなくなっていく。1回目の時と変わらない気持ちでやれたらええけどなかなか難しいことやしね。

── ザ・ぼんちというコンビの魅力は、何だと思いますか?

おさむ おしゃれで、元気で、前向き!

── 素敵です!

まさと これは初めての質問やね。素敵な問いやなぁ。(悩んで)ちょっと、話しながら考えます。

── では、この人が相方でよかったと思うところを教えてください。

まさと まあ、こんな面白い人でよかったんちゃいますか(笑)。僕らも19の時から一緒にやってきていろいろありましたけど、他のコンビが仲良くない時に最後に伝えるのは、「気持ちはわかるけど、でも、あなたの一番の味方は相方やで」ということですね。

おさむ 間違いないね。俺なんてどうしようもないからコンビでよかったわ。ひとりでは自分の家にも帰られへんもん。

まさと (笑)。みんなね、相方が当たり前にあるもんやと思ってるからね。ここまで年を重ねてきたらわかるけど、それは当たり前じゃないねん。違う考えの者が一緒にやっているわけやし、それぞれに家庭や事情もあるから。漫才師やトリオはピンの人に対して、“揉めなくてええな”と思っているかもしらんけど、ピンの人から言わしたら、“ケンカする相手がおってええな”と思うらしいです。ひとりで全部を抱えなあかんから。

── 人生の先輩であるおふたりから、生きる上での教訓をお願いします。

まさと 「一歩踏み出そう、景色は変わる」です。73歳まで生きてきましたけど、頑張っていればいい方と出会えるし、いい方に出会うといい運がついてくる。居酒屋で飲んで愚痴ばっかり言うてる人には、いい出会いも運も来ないんで。暗示のように言うてます。

── 一歩踏み出すことが、しんどい時もありますか?

まさと そりゃあ、ありますよ! でも、踏み出さへんようになったら、コンビをやっている意味もないですから。落語や講談、浪曲、文楽の方みたいに芸をずっと磨いていく商売じゃないので。先ほども言いましたけど、漫才なんてタイムリーなものですから、こっち側から動いていかないとダメ。僕らが古典漫才を作ってもしゃあないですからね。そういう意味では、漫才中のおさむさんに、“そのネタはもう諦めたらええのに”と思うこともあるけど、常に動いて進んでいるから、すごいですよね。

おさむ 僕はね、読者のみなさんに、優しい心を持ってほしいなぁ。思いやりと優しさは忘れちゃだめ。

まさと 素敵なことやね。

── 今後の野望や、目指している場所を教えてください。

まさと 1回目のコンビの時に、上方漫才大賞を頂戴しました。それから40数年、2回目のこのコンビでも取りたいと思っています。

おさむ 夢を持ってないと、楽しいことも見つからんからね。

まさと 今年74歳ですが、落語家さんやピン芸人の方には80代で舞台に立っていらっしゃる方もいますけど、コンビでは見たことがないんです。いつも(西川)のりおさんが「見本になる人がいないねん」と言ってますが、ヨボヨボになっても歩いている姿を見せるのか、「元気やな! え、もう辞めるの?」と言われてる間に辞めるほうがええのか…。まだ何も考えてないですけどね。

── まさと師匠、ザ・ぼんちの魅力は思いついたでしょうか!?

まさと 宿題やったね。僕は「一代限りのコンビ」やと思って見てます。誰かが「二代目ザ・ぼんち」という名前を継いでも絶対違うものになる。真似しようと思ってもできない。こんなコンビないわ。よう、こんな形ができたなぁと。

おさむ ありそうでない、ほんまに変わっとるコンビやわ。

まさと 簡単やけど、それしか言いようがないですね。

Profile

ザ・ぼんち

右・里見まさと(さとみ・まさと) 1952年4月25日生まれ、兵庫県出身。ツッコミ担当。趣味はお城巡り。左・ぼんちおさむ 1952年12月16日生まれ、大阪府出身。ボケ担当。趣味はジャズを歌うこと。1972年コンビ結成。1981年、上方漫才大賞受賞。1986年に一度コンビを解散後、2002年に再結成。芸道55周年を迎え、現在も劇場を中心に精力的に活動している。

information

昨年は芸道55周年プロジェクトとして「ザ・ぼんち芸道55周年記念単独ライブ~漫才はとまらないッ~」を大阪と東京で開催。1月30日には、まさと師匠が漫才人生を振り返り、出会った人々や思いを綴った書籍『漫才の一滴~笑吉が教えてくれた「念、縁、運」』¥1,800(発行:ヨシモトブックス 発売:ワニブックス)が発売に。

写真・小笠原真紀 ヘア&メイク・浜田あゆみ インタビュー、文・重信 綾

anan 2479号(2026年1月14日発売)より
Check!

No.2479掲載

チョコレートLOVE 2026

2026年01月14日発売

毎年恒例の「チョコレート」特集。メゾンの新作や最新トレンドリサーチから、ショコラトリー併設のバーやホテルのアフタヌーンティーなどおでかけして味わうショップ情報まで、50軒以上の気になるチョコレート情報を集めました。

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