社会のじかん

堀潤の「社会のじかん」第481回:Gゼロ

エンタメ
2025.03.03

意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「Gゼロ」です。

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リスクと捉えるか希望と捉えるか。今こそ国連改革を。

国際政治学者のイアン・ブレマー氏が毎年発表している「今年の10大リスク」。2025年は「深まるGゼロ(無極化)世界の混迷」をトップに挙げました。「Gゼロ」のGはG7やG20のG(グループ)の意味です。国際秩序を主導する強い国家が存在せず、第二次世界大戦前や冷戦初期に匹敵する無秩序な世界が生まれるのではと警告しています。ただ、Gゼロという言い方をするのは主にアメリカ側の学者で、ロシアのプーチン大統領は「多極主義」という言葉を使っています。

力を持つ大国が世界の秩序を作り、それがなければ世界は混乱するという見方は、シリアのアサド政権が「独裁者がいた方が国は安定する」と語ったのとさして変わりません。G7やG20ではない国や、グローバルサウスの国々が力を持つことは世界の脅威になるのでしょうか? Gゼロをリスクと捉えるか、様々な国が対等な立場で世界秩序を作るようになる希望と捉えるか。本来目指すべきは後者でしょう。

ただ、実際にそれを成し遂げるための制度が世界にはありません。国連安保理は力を持っていましたが、構成メンバーの多くはGに含まれる、軍事的な力を持つ国々です。常任理事国は拒否権を持っており、戦争を起こした国を制裁しようにも常任理事国の1か国でも拒否したら制裁はできません。本当にフラットな世界にするには、国連改革がものすごく重要です。日本はこれまでにも国連改革を掲げてきました。今こそ声を上げ、多くの国々と力を合わせて新たな世界秩序を作りましょう、と宣言すべきなのだと思います。

石破政権の外交指導力はなかなかスタンスが見えませんが、中国との関係を大切に築こうとしている様子が窺えます。アメリカではトランプ政権が誕生し、世界経済が好転するのか後退するのか不明状態。ただ、トランプ大統領もあと4年しか務められません。なので、混乱が生まれても一時的と冷静な見方をしている人も多くいます。経済的にも軍事的にも力を持った国々が世界の秩序を定めていた時代から、様々な国が本当の意味で協力し合い世界水準を作る、今年は転換期のような年になるのかもしれません。

PROFILE プロフィール

堀 潤

ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。新刊『災害とデマ』(集英社)が発売中。

写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

anan 2434号(2025年2月12日発売)より

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