堀潤の「社会のじかん」第480回:新しいシリア

意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「新しいシリア」です。


アサド政権が崩壊。民主国家として国際社会に復帰を。

昨年12月8日、反体制派によりシリアのアサド政権が崩壊。首都ダマスカスは解放されました。アサド大統領は父と2代にわたり独裁政治を行い、2011年の民主化要求運動も弾圧し、内戦が勃発。2024年時点で、国内避難民720万人、国外避難民505万人という、世界最大規模の難民数を出していました。

約8万人が避難するザータリ難民キャンプの取材を以前から続けてきましたが、キャンプに暮らすヤーセルさんは「13年ぶりに自由の空気を吸えた」と話していました。シリアに帰還できるようになったとはいえ、家は破壊されたままで、キャンプ生まれの子供たちを連れ帰って、普通に教育が受けられるのか、不安も抱えています。

日本在住のシリア人ジャーナリストのエルカシュ・ナジーブさんは「これまではアサドファミリーが富をせしめて、麻薬売買などで得た汚いお金で経済を回していた。今後は貿易によって回るクリーンな経済に。持続可能なエネルギー先端技術や遺跡を大切にする国になってほしい」と話していました。

アサド家がロシアに逃れた後には、首都近郊のセドナヤ刑務所の地下に多くの人が捕らえられ、拷問を受けていたことがわかりました。世界のメディアは、アサド政権下で行われていた非人道的行為に迫りきれていなかったんですね。かえって、国際社会はアサド政権の独裁を是認していました。

反体制派の武装勢力を率いるイスラム原理主義の「シャーム解放委員会(HTS、旧ヌスラ戦線)」は過激主義といわれていましたが、思ったよりも融和的で、穏健派の政治集団に生まれ変わろうとしていることに世界中が驚きました。その背景には、シリアも国際社会に復帰したいという思いがあり、他の宗教に対しても、寛容な姿勢で臨みたいと話しています。世界が新しいシリアを歓迎ムードで見守る中、イスラエル軍は、シリアとの境界にある緩衝地帯のゴラン高原を占拠。停戦協定違反ではないかと国連が非難声明を出しました。世界的には民主主義の国が劣勢に傾いていますから、中東地域に民主的で穏健な国が生まれることは、喜ばしいことといえるでしょう。

Profile

堀 潤

ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。新刊『災害とデマ』(集英社)が2/7発売に。

写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

anan 2433号(2025年2月5日発売)より
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