ゆっきゅんの連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。キュレーターの藪前知子さんを迎えての第3回目をお届けします。


アイドルは最先端表現? ファンとの豊かな関係性。

ゆっきゅん(以下、ゆ):藪前さんはK‐POP好きですよね? 何がきっかけだったんですか?

藪前知子(以下、藪):私は自分がアンダーグラウンドな人間だと思っていたので、アイドルにはもともと興味がなかったんです。でも、アメリカの美術館の人がBTSのファンで、一緒に仕事をしている時に布教され、気づいたら沼に…。アイドルって、歌や踊りだけじゃなく、パーソナリティ、人生のすべてが表現であると理解したんです。もちろんフィクションも含まれるけど、嘘だけではないというか。これまでは、誰かのプロデュースのもと踊らされている人たちという感覚がどこかあったのですが、そうではなく、特にインターネットの時代、彼らの生身の主体性や意思と、偶像を演じている部分が複雑に合わさった最先端の表現だと感じます。

ゆ:嘘だけではないって言葉、すごい心に残りますね。

藪:ネットを介したファンダムとの応答も興味深いです。デヴィッド・ボウイが’90年代にファンとの交流のプラットフォームを立ち上げてるんですが、改めて早かったなと。

ゆ:DIVA遍歴も伺いたいんですけど、藪前さんはとにかくデヴィッド・ボウイが好きなんですよね。

藪:ボウイに出会ってなかったら、今の仕事もしていなかったと思います…。ボウイは現代美術のコレクターで支援者でもありました。

ゆ:そんな藪前さんが都営の美術館で働いているってすごい。

藪:やはり東京都の事業としてミッションを考えなくてはならない部分は多いです。でも、基本的には現代美術は社会における少数者の声を可視化する領域だとはっきり言えるので、それを常に意識して頑張っているつもりでいます。

ゆ:それは私もそうかも。同じような人が増えてほしいけど、私のバランス感って人が簡単に真似できないみたい(笑)。

藪:だから価値があるんですよ。K‐POPの話じゃないけど、オーバーグラウンドとアンダーグラウンドの二分法はもはや存在しないと思うし、今はいろんなものが受け入れやすくなっていると感じます。今までにない感覚を発信したほうが面白い。

ゆ:ありがとうございます。でも私の存在自体が記号的に回収される危険性もまだあるなと…。

藪:ゆっきゅんの存在を褒める時に、同時に政治的なレッテル貼りをされるってことですね。

ゆ:でもDIVAと自称してからは面倒くさい質問は消えました。

藪:DIVAの概念、すごい!

Profile

藪前知子

やぶまえ・ともこ 東京都現代美術館学芸員。担当した主な展示は2015年「山口小夜子 未来を着る人」、’20~’21年「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」(共に東京都現代美術館)など。現代美術やカルチャーについて執筆も行う。

Profile

ゆっきゅん

1995年、岡山県生まれ。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。セカンドフルアルバム『生まれ変わらないあなたを』とそのリミックスEP『生まれ変わらない私を!?』が配信中。インスタ、Xは@guility_kyun 

写真・幸喜ひかり 文・綿貫大介

anan 2427号(2024年12月18日発売)より

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