目指すは絵本シリーズ化と『のんびりーらんど』!
劇団ひとり(以下、劇):自粛期間中に僕が3Dプリンターを買って、遊びで中居さんの会社「のんびりなかい」のロゴやマグカップを勝手に作って番組内で紹介したのが、そもそもの始まりでした。あの時はほかの収録もなくて、仕事は『ニュースな会』1本だったから暇で。ある日マスコットキャラクター“のんちゃん”と“びりーくん”を作ったら、絵本にしようとトントン話が進んだ。ゼロからだったらもっと大変だったと思うけど、キャラがすでにできてたから。つまり僕が創造主です(笑)。
古市憲寿(以下、古):最初、何の動物かわからなくて(笑)。カピバラって馴染みある動物じゃないから。
劇:“のんびり”な動物ってなんだろう? 亀だと遅すぎるイメージだし…っていろいろ考えた中でカピバラが出てきたんです。
古:ちなみに、トントン進んだのは僕が頑張ったからじゃないですか?
劇:早かったのは最初だけ!(笑)
古:確かに…。テーマを“ありがとう”にするのか“仲直り”にするのかで悩みましたね。みんなが家にいなければいけないとか制限されている時で、「ありがとうを言いましょう」ってちょっと押しつけがましい。それよりも、思い合っていたはずなのにいつの間にかすれ違って離れてしまったというような、子供から大人にまで起こり得ることをテーマにしたほうがいいのかなって。ひとりさんも、そもそも物語を書かれる方なので、展開に迷った時に相談できたのはすごくよかったです。
劇:そう言うわりに、僕が「こっちがいいんじゃない?」って言ったら「そうですか」って言いつつすぐに覆す。「わかったよ、じゃあそっちで」って言ってもそれも覆す! 3~4回はひっくり返してましたよ。
古:あははは(笑)。絵本って短いぶん、たった1つの文章で内容がガラッと変わっちゃうから、なかなか決められなくて。しかも小説を書く時はパソコンやスマホで打ち込むところを、絵本となると手描きのラフをスケッチブックに貼り付けてって本当に試行錯誤でした。でも、そうやって本当に絵本になっていく過程や、自分の予想外の絵があがってきた時は面白かったし、普段は一人で書いているから相談しながら作っていくのは楽しかったですね。
劇:自粛期間中じゃないとできなかったし、そもそも生まれていない企画だったと思う。
古:そうそう。でも、翌週までにこれを作ってこようとか部活みたいで、不思議な熱が生まれて、それが原点になったというか。
劇:古市さんのすごいところは、びりーくんのおうちの絵を見て「ママだけ料理をしてパパが何もしないというのはこの時代に合わない」って言えるところ。僕は全然気づかなかったから、なるほどなって思ったの。目の付けどころが違うんだよね。
古:こちらこそ相談するといつも即断で答えてくれるから助かりました。それに共演者ではなく、ひとりさんの作り手側のセンスを初めて見て、信頼できる人だと思った。
劇:中居さんは最後の「おしまい」のセリフを土壇場で「♪はい おしまい」に変えたり、タイトルの「♪ピンポンパンポンプー」もそうなんだけど、説明できないことを考えつくからすごい。
古:普通はこのタイトルは思いつかないですよね。
劇:僕たちは経験則でロジカルに考えちゃうから、結局当たり障りのない言葉しか出てこないんだけど、根拠もなく「ピンポンパンポンプー」って出てくるって素晴らしい。誰よりも経験値がある人なのに、そこを打破して自分の感覚や感性を優先できるって、じつはすごいことです。
古:目標はシリーズ化かな。
劇:そしてゆくゆくは『のんびりーらんど』を造ることだね(笑)。
『中居正広のニュースな会』 素朴で初歩的な疑問をぶつけながら、1週間の出来事やニュースを視聴者の目線でわかりやすく掘り下げる情報番組。毎週土曜、昼12 時~テレビ朝日系にて放送中。
中居正広、劇団ひとり、古市憲寿『♪ピンポンパンポンプー』 どこへ行くのもいつも一緒。大の仲よしののんちゃんとびりーくんが、ケンカを乗り越えて友だちの大切さを教えてくれる心温まる物語。マガジンハウス 1500円
げきだん・ひとり 1977年2月2 日生まれ、千葉県出身。お笑い芸人、俳優、作家、映画監督として活躍。監督・脚本を務める映画『浅草キッド』がNetflixで2021年冬に配信予定。
ふるいち・のりとし 1985年1月14日生まれ、東京都出身。社会学者、作家。近著に『アスク・ミー・ホワイ』(マガジンハウス)、『絶対に挫折しない日本史』(新潮新書)。
※『anan』2021年1月27日号より。写真・内田紘倫(The VOICE) 取材、文・若山あや
(by anan編集部)