別所哲也さんがショートフィルムと出合ったのは、仕事でアメリカと日本を行き来していた1997年の秋だという。
「俳優という仕事柄もあって、ショートフィルムを上映するパーティによく呼ばれていたんです。当時は短編作品にいいイメージがなかったのですが、ある日、友だちに誘われて行ってみたところ、そこで観た10本のショートフィルムの面白さに衝撃を受けました。短いだけじゃなく、これまで観たことのない映像の未来地図のような面白い表現に釘付けになったんです。しかも、当時はパソコンのウィンドウズ95が発売されたばかりの頃で、ハリウッドでは“動画配信の時代がくる”と話題になっていたタイミングでもありました。そんな、ネット上で映画や映像が見られる時代に主役となるのはショートフィルムだといわれるのを聞き、実際に映画祭などで熱い視線が注がれているのを見て、これは面白いと思ったんです。でも、当時の日本ではショートフィルムが話題になることはおろか、観られる機会もありませんでした。面白い世界なのにもったいないと思い、そこで、『ショートショートフィルムフェスティバル』を立ち上げることにしたんです」
ショートフィルムの最大の特徴は、当然ながら上映時間が短いということ。でも、そこに良さやメリットが集中しているという。
「ショートフィルムは、規定の長さというものがありません。そうした時間のしがらみから取り払われたところに、面白さがあると思うんです。というのは、長編作品の場合は、“興行にのせるためには最低70分ないといけない”というように、ビジネス上の理由で不必要に作品の時間を延ばしたり、いらない要素を盛り込む場合がある。でも、短編の場合にはその必要がなく、だからこそ、映画の本質や監督の表現スタイル、こだわりがしっかりと伝わってきます」
そうして、監督が高い自由度で作れるということが、バリエーション豊かな作品を生むことにもつながっている。
「観る人の好みに、シャープに近づく作品がたくさん存在します。それに、時間が短い分だけ予算も少なくて済むことから若手作家にも開かれていて、新しい感覚を持った作品を見つけやすい。また、アルゼンチンやポルトガルなど、普段はなかなか目にすることのない、世界中の作品と出合いやすいことも魅力のひとつです」
今の時代はショートフィルムを観るのに便利だと別所さん。
「インターネットで検索するだけでもさまざまな作品が観られるので、自宅などで手軽に楽しんでほしいですね。映画を観るために2時間を割くことは大変かもしれないけれど、ショートフィルムは短いですから。10分という時間でも、作品を味わい、何かを感じ取ることができますよ。おそらく、ショートフィルムの世界はこれからさらに、進化を遂げていくと思います。実際、カット割りが必要のないVRの作品が登場したことで、作品を手がけるクリエイターの種類も変わってきています。そういった、実験的で新しい手法が次から次へと入ってくることも、ショートフィルムの面白さの一つだと思います。今後の展開は、僕も楽しみにしています」
『スーパーマン、スパイダーマン、バットマン』
甘えん坊のアーロンが、父親と一緒にバスに乗ってとある目的地へと向かうというハートウォーミングな物語。タイトルにヒーローたちの名前が連なっている意味を考えつつ観賞を。監督は、トランシルバニア国際映画祭の設立者であるTudor Giurgiu。上映時間15分。「ブリリア ショートショートシアターオンライン」で視聴可。
『ミッドナイト・オブ・マイ・ライフ』
若くして亡くなった、実在するイギリスのアーティスト、スティーブ・マリオットを描いた作品。映画『ホビット』やドラマ『シャーロック』に出演している一流俳優のマーティン・フリーマンが主演を務めたことでも話題となった。音楽好きはチェック。「ブリリア ショートショートシアターオンライン」で視聴可。
『シェイクスピア・イン・トーキョー』
兄の仕事に同行して初来日したダウン症のベン。自分のことをかまってくれない兄から逃れるように東京探検に出かけるが、シェイクスピアの知識や持ち前のユーモアで人の心を掴んでいく。監督はオーストラリア人のジュネヴィエーヴ・クレイ・スミス。「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア」のHPで視聴可能。
べっしょ・てつや 俳優。「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア」代表。『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』のナビゲーターを担当。
※『anan』2018年7月18日号より。取材、文・重信 綾
(by anan編集部)
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