女性は『瘀血』(おけつ)に注意。体質を知ることも大事。
普段はあまり意識することのない、血流の状態。冷えや肩こりなどの不調がある時に気になる程度…という人も多いはず。でも、
「中医学では血の巡りは多くの部位の健康に関わり、非常に大切なものと考えられています」
と、薬学博士の今井太郎さん。
「体には気(き)、血(けつ)、水(すい)という3つの物質が巡っています。このうちの血は、全身に潤いと栄養をもたらす、血液に近い存在です。血がうまく巡らない状態は“瘀血”と呼ばれ、これが生じると冷えや肩こりだけでなく、慢性的な頭痛やシミ、そばかす、生理痛や生理不順など多くのトラブルを招きます。そこに良質な血液が不足する“血虚(けっきょ)”などの体質が重なることで、悪化するケースがほとんど。気づかず過ごしている人も多いのですが、とりわけ生理の悩みを抱えている人は要注意です。血流ケアを習慣化するのをおすすめします」
瘀血対策に大切なのは?
「血は眠っている間に補われるので、まずは睡眠をしっかりと。適度な運動も欠かせません。そして何より大切なのが食の見直し。瘀血改善に良い青魚や玉ねぎなどを摂りつつ、体質に沿ったケア食材を食卓に取り入れましょう」
瘀血の体質別タイプは下記の6つ。日々の不調や、中医学での診断で使われる舌のチェックで当てはまるものを導き出そう。
【Check】あなたの体質はどれ?
一番チェックが多かったものが該当。いくつかのタイプが同数の場合は、それらの体質を併せ持っているサインなので、その日の舌の状態などを参考に判別して。
- 疲れやすく、風邪をひきやすい。
- 声が小さい。
- あまり食欲がない。
- 下痢や便秘がち。
- 舌がポテッとして白っぽく、両端に歯形がある。
→【TYPE1】気虚(ききょ)
エネルギーが足りず、血が作れない。
生命エネルギーである気の不足が原因。「食べ物から栄養を吸収できず、血が作れない状態。気には血を巡らせる働きもあるので、停滞することで血も一層滞りやすくなります。まずは消化にやさしい食事を」(今井さん)
- 顔色が青白く、皮膚にツヤがない。
- 貧血、立ちくらみがよくある。
- 目がかすんだり疲れやすい。
- 乾燥肌で爪や唇が割れやすい。
- 舌の色は淡い(薄い)。
→【TYPE2】血虚(けっきょ)
良質な血が不足して、栄養不足に。
「栄養に富んだ血が不足して、全身が栄養不足になっている。貧血とニアリーイコールと考えていいでしょう。このタイプには冷えや生理不順などの不調も多く見られます。血を作るには、赤や黒の食べ物がおすすめです」
- イライラ、くよくよしがち。
- 頭痛が起きやすい。
- げっぷやおならがよく出る。
- 下痢と便秘を繰り返す。
- 舌の両端が赤い。白から薄黄色の舌苔がある。
→【TYPE3】気滞(きたい)
ストレスにより血の巡りが妨げられている。
気の巡りが滞り、それにつられて血流も停滞している状態。「最大の原因はストレス。お腹が張る、げっぷが出るなどガスが溜まる症状や、イライラ感などメンタルのトラブルも特徴。香りの良い食べ物が緩和に効果的」
- のどが渇きやすく、冷たいものをよく飲む。
- 寝汗をかきやすい。
- 肌や髪が乾燥しやすい、空咳が出る。
- コロコロの便が出る。
- 舌は赤く舌苔が少ない。舌面に亀裂がある。
→【TYPE4】陰虚(いんきょ)
潤いが不足して血の量も足りていない。
「陰は分かりやすく言うと、体を潤す体液のようなもの。血は陰から作られるので、陰が不足すると血の流れも停滞してしまいます」。体の熱を冷ます力が弱まり、ほてりや寝汗をかくなどの不調も表れやすい。
- 体が温まらない、芯から冷える。
- 顔色が青白い。
- 下半身が特に冷える。
- 頻尿。尿の色が透明で量が多い。
- 舌が白っぽい。
→【TYPE5】陽虚(ようきょ)
体の冷えにより血の巡りが弱くなっている。
体を温める「陽」が不足。「冷えてカチンと固まり、血が流れないイメージです。入浴後すぐに冷えてしまったり、トイレが近いのもこのタイプの特徴。体を温める食べ物を選び、首や手足を冷やさないよう服装にも気をつけて」
- 全身が重だるい。
- むくみやすい。
- 痰が絡みやすい、口の中が苦い。
- 吹き出物やニキビができやすい。
- 舌に白や黄色の厚いベトベトの舌苔がある。
→【TYPE6】痰湿(たんしつ)
不要なものが溜まり、ドロドロ血に。
「痰湿とは、お菓子や脂っこいものの食べすぎで溜まる不要物のこと。これによって血液の質が悪くなり、血流障害が生じている可能性大です。ぼってりと白い舌苔が付いてる人は要注意。お酒も控えましょう」
体質別、おすすめ食材
【TYPE1】気虚
芋や米…炭水化物でエネルギー補給。
つねに疲れがちな気虚タイプは、すぐにエネルギーに変わる炭水化物をしっかりと。「山芋やさつまいも、じゃがいもなどの芋類や米などの穀物を、消化しやすい煮物やお粥、スープにして。しいたけや豚肉、大豆も、気を補ってくれる食べ物です」(今井さん)
【TYPE2】血虚
赤い肉&魚、黒い食べ物で血を養って。
良質な血が足りず貧血気味の血虚タイプは、「血を作る食べ物であるレバーなどの赤い肉、まぐろ、かつおなど身の赤い魚を。黒豆や黒ごま、黒きくらげなど黒い食べ物のほか、気と血の両方を補ってくれるほうれん草、なつめの実などもおすすめしたい食材です」
【TYPE3】気滞
香り高い食材が、気と血の巡りにgood。
滞ってしまった気を巡らせ、血流を改善するためには、まず香味野菜や柑橘類を。「みょうがやセロリ、春菊などのほか、ハーブは全般的にいいでしょう。オレンジやみかん、レモンなどの柑橘類は香りのほか酸味にもストレスを緩和する働きがあります」
【TYPE4】陰虚
白い食べ物で、血に潤いを行き渡らせて。
陰を作り出すのは、れんこんや豆腐、梨、ゆり根などの、少し粘り気がある白い食べ物。「冷えがなければヨーグルトや、きゅうりやなすなどの夏野菜もいいでしょう。また、陰虚の人は、潤いを消耗する辛いものの食べすぎにも注意してください」
【TYPE5】陽虚
しょうがやスパイスで温め、巡りを回復。
熱を作れず血が巡りにくい陽虚タイプは、「体を温める作用のあるえびや羊肉、鶏肉などに、しょうがやスパイスを加えた料理がおすすめ。辛みのある食材が、熱を起こす“火種”のように働いてくれます。しょうがは生ではなく火を通して摂ることもポイント」
【TYPE6】痰湿
海藻で不要物を排出し、サラサラ血液へ。
食べすぎによって血液中に不要物が増え、流れにくくなっているのが痰湿。「脂っこくコッテリしたものを避け、腹八分目に食べる心がけを。そのうえで、余分なものの排出を助ける海藻や、しじみやあさりなどの貝類を摂りましょう。大根やきのこもおすすめです」
今井太郎さん 薬学博士。漢方専門の『後楽堂薬局』代表。多くの悩みに寄り添い、食や生活習慣のアドバイスも含めた丁寧なカウンセリングを行う。著書に『心と体の不調を治す 血流の整えかた』(池田書店)。
※『anan』2023年5月3日‐10日合併号より。写真・小川朋央 イラスト・酒井真織 取材、文・新田草子
(by anan編集部)