夏に絶対行きたい金沢アート旅! 惚れ惚れするような“工芸”作品を満喫
人気観光エリアにある国立工芸館へ!
国立工芸館外観 ※本記事の写真は、美術館の許可を得て撮影しています。
【女子的アートナビ】vol. 338
国立工芸館は、金沢の名勝・兼六園のすぐ近くにある美術館。周辺には、石川県立美術館や金沢21世紀美術館など有名なミュージアムも数多く点在する人気の観光エリアです。
レトロな建築が美しい国立工芸館の建物は、国の登録有形文化財である旧陸軍第九師団司令部庁舎と旧陸軍金沢偕行社を移築・復元し、活用したもの。同じ敷地内には、赤レンガの外観が美しい石川県立歴史博物館(いしかわ赤レンガミュージアム)もあります。
この夏、国立工芸館では「おとなとこどもの自由研究 工芸の光と影展」を開催。本展は、光と影をテーマに陶磁や木工、漆工、金工、染織、ガラスなど多彩な工芸作品を鑑賞できる展覧会です。
国立工芸館の主任研究員・今井陽子さんは次のように述べています。
今井さん 私たちが常に関わる現象である「光と影」をキーワードとして工芸に親しんでいただけたらと思い、本展を企画しました。工芸の鑑賞は、知識がないと難しいと感じられる方もいますが、本展では大人もこどもも自由に作品を楽しんでいただけたらと思います。
惚れ惚れする作品も…!
橋本真之《重層運動膜(内的な水辺)》1982-83 国立工芸館所蔵
では、見どころをピックアップしてご紹介。
まず、展示室に入る前の空間に「工芸とであう」というコーナーが設けられています。ここに展示されているのは、橋本真之の《重層運動膜(内的な水辺)》。中に水が入っている作品で、水面に浮かぶ光も見逃せないユニークな作品です。
田中信行《Inner Side-Outer Side 2011》2011 国立工芸館所蔵
展示室1に入ると、大きな漆の作品が目に飛び込んできます。本作品は、田中信行の《Inner Side-Outer Side 2011》。黒々とした漆のツヤが美しいですが、実は裏側に行くと炎のような赤い色が見えます。こちらも全方向から楽しめる作品です。
小川雄平《陶製黒豹置物》1933 国立工芸館所蔵
「光?影?」とタイトルがつけられたコーナーでは、本展のメインヴィジュアルにも使われている小川雄平の《陶製黒豹置物》が目を引きます。光と影の効果で黒豹の筋肉や骨格がリアルに伝わり、今にも動き出しそうな雰囲気です。
小川雄平《陶製黒豹置物》1933 国立工芸館所蔵
後ろから見てもツヤツヤな黒豹の筋骨がかっこよく、惚れ惚れする作品です。鑑賞するとき、少しかがんで目線を作品と同じ高さにして見ると、より迫力が感じられます。
四谷シモン《機械仕掛の少女2》2016 国立工芸館所蔵
「光と影でモノがたる」と題するコーナーでは、四谷シモンの《機械仕掛の少女2》が異彩を放っています。本作品について、今井さんは次のように述べています。
今井さん シモンさんは、かわいいけど、どこか怖い、怖いけれど目を惹きつけてやまない人形を標本箱のような木箱に入れて作品にしています。目にはガラスがはめこまれ、うるんだ表情を投げかけてきます。心に潜む光と陰影の物語に気づかされる方もいらっしゃるかもしれません。
光る布…?
福本潮子《時空3》1993 国立工芸館所蔵
展示室2「光と影でカタチつくる」では、作者が仕掛けた光と影のわざを作品から見つけて楽しむことができます。ここでは、福本潮子の染織作品《時空3》から不思議な美しさを感じました。
藍染の作品で、白い部分がフワッとしたやわらかな光を放っているように見えます。グラデーションも美しく、また見る位置によって光のバランスも変わるので、体の位置を動かしながら見ると楽しいです。
ガラス作品がかわいい!
重要文化財 鈴木長吉《十二の鷹(壹、弐、参)》1893 国立工芸館所蔵 前期展示
最後の展示室3「メタル&ガラス」では、金属とガラスによる作品を見ることができます。
金工作品からは、重要文化財の《十二の鷹》のうち3羽の鷹がお出ましです。金属のシャープな形に光があたり鷹の迫力が伝わってきますが、鷹の顔を見ると、表情はなかなかユーモラス。今井さんによると、作者は制作中、鷹と暮らして観察されていたそうで、表情やポーズなども巧みに表現されています。
高橋禎彦《花のような》2004 国立工芸館所蔵
本展でひときわカラフルなのは、現代を代表するガラス作家、高橋禎彦の作品《花のような》。色もかわいいですが、ふっくらとしたフォルムにも惹きつけられます。ガラスは光を反射するだけでなく、光を通すこともできます。影に色がつく作品もあるので、ぜひ影も見つけて観察してみてください。
座れる工芸作品も!
木工の人間国宝・黒田辰秋《欅拭漆彫花文長椅子》C .1949年 国立工芸館所蔵
本展の休憩コーナーでは、本物の工芸作品に座ることができます。
黒田辰秋の《欅拭漆彫花文長椅子》はケヤキの木を長椅子にしたもので、拭漆という技法で仕上げた表面は柔らかな光を放っています。座り心地も抜群で、窓からは兼六園方面の緑豊かな木々も楽しめます。
工芸館の中はクーラーも効いていて、暑い夏の観光でもゆったり過ごすことができます。金沢アート旅で、ぜひ国立工芸館を訪れてみてください。
Information
会期:2024年6月18日(火)- 8月18日(日)
休館日:月曜日(ただし7月15日、8月12日は開館)、7月16日
開館時間:午前9時30分-午後5時30分 ※入館時間は閉館30分前まで
夜間開館:7月19日(金)~8月17日(土)の金曜土曜と8月11日(日・祝)は午前9時30分~午後8時
※入館時間は閉館30分前まで
会場:国立工芸館(石川県金沢市出羽町3-2)
観覧料:一般¥300、大学生¥150、高校生以下および18歳未満、65歳以上、障害者手帳をお持ちの方と付添者(1名)は無料。