宮野真守「殻を破ることができた」 先輩・林原めぐみからの“忘れられない一言”とは

エンタメ
2024.07.24
その活躍はアニメだけに留まらず、TVドラマやバラエティ、舞台など幅広いジャンルで名を馳せる、声優の宮野真守さん。エンタメが大好きと語る宮野さんに、エンターテイナーたるゆえんを聞きました。
宮野真守 タレント 俳優 声優

声優としてはもちろん俳優、アーティストとしても幅広い層から支持されている宮野真守さん。ジャンルを超えた万能エンターテイナーぶりは周知の通りだが、多岐にわたる活躍の陰で悔しい思いをしたこともあったそう。

「子どもの頃からエンターテインメントが大好きだったので、やれることはなんでもやりたかったし、できるようになりたいと思ってました。でも7歳からこの世界で仕事を始めて、10代は全然うまくいかなかった。あの時代を下積みと言っていいのかわからないけれど、悔しい思いばかりしていましたね。その頃の劣等感が拭えなくて、とにかく何者かになりたくて、10代の頃はがむしゃらに突っ走ってました」

そんな宮野さんに転機が訪れたのは18歳の時。

「たまたま声優のお仕事をさせていただいて、そこから世界が広がったんです。自分に声の演技ができるだなんて考えたこともなかったので、拾っていただいたことは本当に幸運でしたし、感謝しかないです。当時は右も左もわからなかったから、現場で失敗しながら一生懸命仕事を覚えました。今では、これだけ長いこと声優として仕事を続けてこられたことが僕の自信の基盤になっています。20年以上やってきて、スキルも自分の引き出しも増えましたし、いろんな恩恵を与えてくれました」

宮野さんには新人の頃、大先輩にかけてもらった忘れられない言葉があるという。

「現場で僕が硬くなっていた時、林原めぐみさんに『もっとやっちゃいなよ!』と声をかけていただいたことがあるんです。『ポケットモンスター』のアフレコ現場で、周りは大先輩ばかり。自分でも気づかないうちに縮こまっていたんでしょうね。その、なにげない言葉に勇気をもらって、僕は殻を破ることができたんです。先輩の一言が後輩にとってどれだけ刺激になるか身をもって知っているから、僕も後輩に声をかけてあげたいです。そういうふうに思えるようになるくらい、僕も大人になったということですね(笑)。でも、だからこそ言葉には気をつけています。あくまでその子の人生であり、選択ですから」

声優だけでなく、すべての仕事において日々のアップデートを大事にしているという宮野さん。その時、自分の前に立ちはだかるのはいつも過去の自分なのだという。

「例えば、19歳の時の自分の演技を今聴き直してみると、その頃の演技のピュアさに自分でもハッとすることがあるんですよ。でも、今の自分にはこれまでの年月で培ってきた経験値がある。過去にすがるんじゃなくて戦い方をアップデートすること、お芝居の仕事ってこれの繰り返しなんですよね。常に過去の自分と戦っているんです」

25枚目のシングル『The Battle』にはそんな自分自身との戦いという想いを込めた。

「TVアニメ『現代誤訳』の主題歌で、偉人の名言を間違った解釈で覚えていたとしても、それが自分にとって大事な指針になっているのであればそれでいいじゃない、間違いを正すことより自分が自分らしく生きることのほうが大事だよ、というメッセージを込めました。過去の自分との向き合い方、自分との戦い方をテーマにした曲ですね」

アーティストデビュー15周年を締めくくり、年末からはライブツアーの開催も控えている。

「今回、“大人の男”というテーマで撮影していただきましたが、40代になった今だからこそ見せられるもの、というのをきちんと見つけたいなと思っていて。そんな想いを元にライブの構想を練っているので、新たな宮野真守を見せられるツアーになるんじゃないかなと思っています。僕がライブを構成する上で大事にしているのは、とにかく飽きさせないこと。僕は自分で曲を作ってきた人ではないから想いを曲として届けるということが最初はまだできなくて、自分でライブを演出することがクリエイティブな部分での軸になってくれました。それに僕自身がプレイヤーだから、観ている人に楽しんでもらいたいという想いがあるんですよね。ライブももうずいぶん長くやっているからアウトプットばかりだと出がらしになっちゃうので、過去の自分に勝つためには上質なインプットが大事になってきます。僕の場合は直近の自分の経験がいいインプットになってくれています。例えば舞台での経験が作詞する上で役に立ったりするんですよ。自分が演じた役の想いを歌詞にすることもありますし。すべての仕事がつながっていて、インプットとアウトプットが循環しているような感じです。まるで回し車の中をぐるぐる走ってるハムスターみたい(笑)」

何もわからなかった20代から、いろんなものを得た30代を経て、これからの40代ではさらにその先を見据えていきたいと語る。

「大人の男として憧れるのは、ずっと体型を維持している人ですね。これがどれだけ大変なことかって、意外とみなさん知らなくて。そのために自分を厳しく律して、時間も使っているわけですよ。僕もやる側の人間なのでわかるんですけど、演じる役柄によって体型まで変えてしまう俳優さんは本当にすごいと思います。増量した後の減量ってどうしてるんだろうって、想像しただけで倒れそう…。僕もそういった方々を尊敬していると言っている手前、もしオファーをいただけたらしっかりがんばりますけど。でも大変ですよね。仲良くさせていただいているTHE ALFEEの高見沢俊彦さんも体型を維持していらっしゃいますもんね。たしか(高見沢さんが)筋トレを始めたのって60代になってからなんですよ。以前、『筋肉と愛は育てるものだよ』って言葉をかけてもらいました(笑)。郷ひろみさんともTV番組で一緒に歌わせていただいたことがあるんですけど、本当にかっこいい。周りにこれだけ偉大な先輩アーティストの方がたくさんいらっしゃるので、僕ももっとがんばらないと。これから先はきっと、できることも変わっていくと思うので、そういう変化にもきちんと向き合っていけたらと思います」

みやの・まもる 声優、俳優、歌手。TVアニメ『忘却バッテリー』(要圭)、ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』(ディオ・ブランドー)など出演作多数。最新シングル『The Battle』が7月24日に発売。

※『anan』2024年7月24日号より。写真・内田紘倫(The VOICE) スタイリスト・横田勝広(YKP) ヘア&メイク・Chica(C+) 取材、文・尹 秀姫

(by anan編集部)

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