日本の貧困女性のリアルを描く…趣里主演、人気ルポルタージュ原作のドラマ

エンタメ
2023.11.20
東洋経済オンラインでの連載が人気を博したルポルタージュ原作が、WOWOWで連続ドラマ化。主演は、NHK連続テレビ小説『ブギウギ』でヒロインを務め、今最も勢いのある趣里。彼女が繊細な演技で演じるのは、経済誌の契約編集者でシングルマザーの雁矢摩子。女性の貧困がテーマの連載で貧困女性を取材しながら、社会の矛盾や問題点を浮き彫りにしていく姿をフィクションとして描く。令和の時代にも存在する貧困の現実。現代の孤独と社会の不条理は、他人事ではないと気づくはず。

他人事ではない令和の時代における貧困のリアルを描く。

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地上波では描きづらい貧困女性のリアルという重いテーマに挑んだ、監督の青木達也さんと脚本家の高羽彩さん。今作に込められた想いを伺いました。

青木:フェイクドキュメンタリーのようなドラマですが、日本の貧困問題の現状を描いていて。1話の国立医大生の貧困女性の記事をアップした時にSNSで心ない誹謗中傷を書かれるシーンもとてもリアルです。

高羽:リアルですよね。原作があるものの、この問題は自分の目でしっかり確認しなければ血肉になる台詞を書けないと思って、貧困女性を実際に取材しました。お話を伺わないと分からないことがあまりにも多く、貧困についての自分の無知さをまざまざと思い知らされっぱなしでした。

青木:ドラマの主人公の摩子も最初は貧困に対して無知なところから始まって。貧困女性を取材しても、今まで向き合ってきたことがなかった事柄だけに我が事として考えられない幼さが見え隠れしますよね。

高羽:最初は取材対象者を傷つけてしまうんですけど、失敗と向き合って成長していく。書いていてもビックリするくらい1話に比べて6話の摩子は前に進んでいるんです。

青木:いや、本当にそうですよ。貧困女性の取材を始めたばかりの頃は、無知なところから始まり、自分が貧困ボーダーにいると気づいて。最終的には取材内容を書籍化して、世の中に訴えかけることで、誰かを救えるかもしれないと奮闘する。趣里さんは、そこに到達するまでを逆算して絶妙なお芝居をしてくれました。

高羽:摩子はパワー系のキャラクターなので、ト書きで“泣く”と書いてあるシーン以外は、涙を流すことを想定してなかった。でも、趣里さんは演じるうちにどうしても心が動いてしまって、思わず涙がこぼれてしまう姿に胸が締め付けられました。

青木:自然と素直に感情が溢れてくるお芝居がすごい。あの年代でこれほど難しい役を繊細に演じられる人は、他にいないんじゃないかな。

高羽:陰の要素を陰にしすぎない、でも、ちゃんと陰を伝える力がある役者さんですよね。小柄だけど、摩子の踏ん張って生きている感じを出せるのは、趣里さんならでは。

青木:祐二を演じる三浦貴大さんとのコンビぶりも共演経験が豊富なので、最初から本当に息ぴったり。1話のカラオケボックスのシーンの摩子と祐二の絡みもすごく面白いし。

高羽:凄惨な現実を真摯に伝えるだけでなく、ふたりが生き生きとしていて、ちょっとチャーミングなところもあっていいかなぁと。

青木:もちろんいい絡みです。最初は衝突してしまうふたりが、どんどんバディ感が出てくるのもいい。

高羽:じつはバディものということを意識して書きました。少しずつ信頼を寄せていって、仲間になっていって。最後には複雑な過去を持つ祐二が摩子に弱音を吐けるまでになっていく。ふたりの関係性を追いたくなる仕掛けです。そしてこのドラマは、どこかにいるかわいそうな人たちの話ではない。当事者意識を持てるきっかけになったらいいですね。

青木:自分はどうなんだろう? 皆は大丈夫? …って。今作を描くにあたって、僕が大事にしたかったのは“繋がり”。今SNSで繋がっている人たちが、自分がピンチに陥っても助けてくれるのかという恐怖って誰しも抱えていると思います。

高羽:遠い繋がりではなく、大事な人とはちゃんと会って、身近な繋がりを再確認したほうがいいですね。

青木:そうやって自分の周りの環境を整える小さな一歩を踏み出すことで、手を差し伸べ合えるかもしれない。社会が良くなって、優しい世界になればいいなと思います。

青木達也さん 今年はドラマ『週末旅の極意~夫婦ってそんな簡単じゃないもの~』(テレビ東京系)、10月クール放送の『君が死ぬまであと100日』(日本テレビ系)を監督。

高羽 彩さん 脚本家、演出家。「タカハ劇団」主宰。主な脚本作品にテレビアニメ『魔法使いの嫁』『魔法使いの嫁 SEASON2』、よるドラ『ここは今から倫理です。』(NHK総合)。

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左・シングルマザーの摩子は、同居する母の菜穂子(高橋ひとみ)に子育てをサポートしてもらう日々。右・国立大学医学部に通うために風俗で働く優花を風俗ライターの﨑田祐二(三浦貴大)と取材するが、その記事が炎上。

摩子が取材をした貧困を抱えた女性たち。

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左から、姉を援助したことで貧困に陥った元富裕層の典子(霧島れいか)、家庭内で虐待を受ける恵子(宮澤エマ)、国立大学医学部に通いつつ、風俗やパパ活で学費を捻出する優花(田辺桃子)、シングルマザーの葵(東風万智子)。

ドラマの内容がより深く知れるドキュメンタリー映像もぜひ。

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2022年冬にクランクインした本作の撮影現場の裏側を公開。キャストと監督、スタッフたちが一丸となって貧困女性のリアルを追求した作品に懸ける想いが伝わるドキュメント映像をたっぷり届ける。WOWOWオンデマンド、WOWOW公式YouTubeにて公開中。

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連続ドラマW‐30『東京貧困女子。‐貧困なんて他人事だと思ってた‐』 11月17日(金)午後11時よりWOWOWにて放送・配信スタート。原作/中村淳彦『東京貧困女子。彼女たちはなぜ躓いたのか』(東洋経済新報社刊) 脚本/高羽彩 監督/青木達也、遠藤光貴 出演/趣里、三浦貴大ほか

※『anan』2023年11月22日号より。取材、文・福田恵子

(by anan編集部)

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