オーイシマサヨシ「“たまたまアニソンファンの代表に押し上げられた人間”という立ち位置を貫きたい」

エンタメ
2023.11.11
今やアニソンシーンの顔といえる活躍っぷりで、世界最大のアニソンライブ「アニメロサマーライブ」では今年の大トリを務めるほど確固たる地位を築いているオーイシマサヨシさん。今年、デビュー10周年イヤーがスタートし、来年はついに武道館公演が決定。それだけでもすごいのに、なんと開催の半年以上前にはチケットが完売。アニメやアニソン全盛の時代に、オーイシさんはどのようにして快進撃を続けているのだろうか。
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――新曲「好きになっちゃダメな人」は、放送中のTVアニメ『お嬢と番犬くん』のOPテーマ。本作は、身分差×年齢差の恋を描く極道ラブコメですが、作品の世界観をどのように吸い上げて楽曲制作をされたのでしょうか?

オーイシマサヨシさん(以下、オーイシ):今回、自分の中で大きなチャレンジをしまして。一人称が“わたし”の曲を書いたんですよ。女の子の気持ちや視点に立って、男性である僕が“わたし”を歌うアンニュイさを楽しんでもらおう、と。そもそも『お嬢と番犬くん』は“極道に恋をするJK”の話。恋をしてはダメな人、好きになっちゃダメな人を好きになってしまう。好きになったところで、いい未来が待っていないと頭ではわかっていても、抗えない気持ちが原作からほとばしっていて。それを曲でも表現しようと思い、ヒロインの瀬名垣一咲(せながき・いさく)の心の動きに注目して曲を書きました。さらに、ストリングスやコーラスを多めにして、祝祭感が出るようなサウンド感を意識しました。好きになっちゃダメな人だけど、恋をすることは決して不幸ではない。それを音やアレンジで演出したかったんです。

――他にも3月には『ギフト』、5月には『死んだ!』、9月は「黄金航路」と破竹の勢いでシングルを発表されて。ご自身で歌う曲以外にも、TVアニメ『【推しの子】』の「サインはB」など楽曲提供も精力的に行っています。

オーイシ:自分で歌う場合は、作品と現実世界とのリンクポイントを探します。楽曲提供の場合は、よりその作品との親和性や、作品の一部になれる楽曲を意識します。キャラソンを書く時は徹底的に原作を読み込む。例えば『【推しの子】』のファンの方々が、このシーンをどう思っているのかをSNSで調べたり、「そういう視点もあるんだ」と参考にしたり。自分ひとりで作ったというよりも、みんなで作っている感覚ですね。

激動のアニソンブームの中、変わらずに“オーイシ”を貫く。

――今やアニメ好きを公言したり、アニメを推すことを隠さないのが当たり前になり、ライトなユーザーも増えてきています。そんな時代の変化とともに、アニソンシンガー以外がアニメ主題歌を担当することも多くなりました。この状況をどう見ていますか?

オーイシ:僕はポジティブに捉えています。他の業界の方だとか、ロックバンド、J‐POPアーティストがアニソンに流入してくることで、僕らの席がなくなるか? といったらそうではなくて。先日「アニサマ」に出て思ったんですけど、ロックバンドやJ‐POPシンガーは『ロウきゅーぶ!』の歌を歌われへんもんなって(笑)。確かに人気アーティストは、売れているアニメタイトルの主題歌を歌っているかもしれないですけど、でも僕らからすると、もっと別の濃度が高い文化も知っている。アニソンの中で、J‐ROCK、J‐POPバンドたちが歌えない層も存在する。だからこそ、僕らの存在意義は全然揺らいでないと思っているんです。アニメタイトルも増えていますしね。普段は40タイトルくらいなんですけど、今期は1.5倍の60タイトルに増えているらしくて。製作委員会もアニメドリームを夢見て出資してるし、こういう時代だからこそ、チャンスがたくさん転がっていると思います。

――「アニサマ」の話が出ましたが、今年は3日間の大トリを務められましたね。これまでにもテーマソングを担当されたり、大きな存在感を示されていましたが、アニソン界における立場をどのように感じていますか?

オーイシ:大層な感じよりも、僕は“たまたまアニソンファンの代表に押し上げられた人間”という立ち位置をずっと貫きたいんです。運良く神輿に担ぎ上げられて、今は音頭を取らせてもらってますけど、みんなと同じアニソン・アニメファンであり、あくまで神の視点を持たない人間。ただ、なんとなくみんなが知ってくれているとか「オーイシがいる現場は楽しいらしいぞ」という噂が広がるとか、そういうのがずっと続けられたらいいなって思います。僕なりのアニソン道は、そこにあるのかなと。

――その思考はどこから?

オーイシ:アーティストとしての経緯が関係していると思います。22年前にバンドマンとしてデビューをし、解散後はシンガーソングライターとしてJ‐POPアーティストに転身して、その後アニソンシンガーとなりアニソン界に合流した経緯があるので。やっぱりどこかアニメとアニソンのファン目線のまま、アニソンを神格化して捉えている自分がいるんですね。

――アニソンシンガーになる前に遡ると、30代までは音楽だけでは生計を立てられず、アルバイトをしていた時代がありましたよね。当時は音楽で食べていくことが目標だったと思いますが、今のモチベーションはなんでしょうか?

オーイシ:それが最近の大きなテーマなんですよ。幸いなことに皆さんのおかげでごはんが食べられるようになって、生活のために音楽をするモチベが、以前と比べると低くなっている。周りを見てもいるんですよ。お金を持つと急に歩みを止めてしまうとか、緩めてしまうとか。それも一つの答えですし、別にいいと思うんですけど、僕はカッコ悪い歩みの緩め方や止め方はしたくなくて。最近は前よりもお仕事をセーブさせていただくようになっていますし、イベントやライブも、吟味した上でゴーサインを出させてもらってます。ちなみに、今年は学園祭のオファーをたくさん受けているんですよ。今は大学生のみんなと一緒に、アニソンを楽しみたいモチベがすごく高いです。

――それって、損得勘定とは違いますよね?

オーイシ:そう、ギャラじゃないんです。ただ、学園祭に出るのは将来の得にもなると思っていて。ライブを観た大学生が30代とか40代とかになって、その会社や業界で力を持ち始めた時に「そういえば、ウチの大学にオーイシが来てくれたことあったな。今度のイベントに呼んでみようかな?」と10年、20年後の財産になる可能性があると思っていて。なので、慈善事業をやりたいわけじゃないんです。そこまでいい子じゃないので(笑)。「講座を開くとかアシスタント雇うとか、自分の意思を繋げることをやったら?」と聞かれるんですけど、「それだけは絶対に嫌だ」と言っていて。先生みたいな立場になるとか、誰かに何かを教えるということは、下に人を作ることになる。僕は、若い方々もみんなライバルだと思っているし、ずっとバチバチやっていたい。現役でいたいから教える側になるとか、評論するような仕事はお断りしているんです。それも自分の立ち位置や環境作りの一つです。

放送中のTV アニメ『お嬢と番犬くん』のOP主題歌「好きになっちゃダメな人」が発売中。『オーイシマサヨシ×鈴木愛理のアニソン神曲カバーでしょdeショー!!』で共にMCを務める鈴木愛理の最新シングル「最強の推し!」の作詞・作曲と編曲を担当した。2024年3月2日に、自身初となる日本武道館でのワンマンライブが決定。

オーイシマサヨシ 1980年生まれ、愛媛県出身。学生時代にスリーピースバンドSound Scheduleを結成し、2001年にメジャーデビュー。その後、’08年に「大石昌良」名義でソロデビュー、’14年にはアニメ・ゲームコンテンツ向けの「オーイシマサヨシ」名義でも活動を始める。自称“アニソン界のおしゃべりクソメガネ”。趣味はエゴサーチ。

※『anan』2023年11月15日号より。写真・小笠原真紀 ヘア&メイク・瓜本美鈴 インタビュー、文・真貝 聡

(by anan編集部)

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