誰かに淡い恋心を抱いたり、友情を育んだり、家族と過ごす時間を大切にしたり。描かれているのはどこにでもありそうな日常だが、登場するのはすべてモンスターの本作、『月出づる街の人々』。

「こうありたい」が詰まった、モンスターたちのユートピア。

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「プロトタイプの短編を描いたのは約10年前。コミティア(自主制作漫画誌展示即売会)で発表しましたが、今、はるみの弟として出てくる飛べないドラキュラが主人公でした」

酢豚ゆうきさんは当時、『宇宙兄弟』の小山宙哉さんのもとでアシスタントをしながら、マンガ家を目指していた。しかしながらプロになるのを断念し、一度は企業に就職。

「それでも趣味で二次創作などをしていたのですが、久しぶりにオリジナルに挑戦しようと思って、現在の第1話を描いたのが2019年。社会人として大変なこともいろいろ経験したので、優しい世界であってほしいなっていう僕自身の願望が、表れているのかもしれません」

モンスターが暮らすのは、ヨーロッパのような石造りの建物と、日本のノスタルジックな雰囲気がミックスされたような街。透明人間のはるみはさっぱりした性格で、同学年の狼男の毛づくろいに癒されている。フランケンのもち子はおっとりしているものの、怪力の持ち主。クールだけど優しいメドゥーサのユイは、頭の蛇たちをいつも気にかけている。家族構成も学校のクラスも、異なる種族が入り交じっているのだが、それぞれの特性を当たり前のように認め合い、他者の困りごとも理解している関係性は、理想郷ともいえる。

「モンスターのキャラクターに関しては、自分が入り込めるかどうかを大事にしています。たとえば巨大な一つ目モンスターとかだと、いきなり感情移入するのは難しかったりしますよね。一見人間っぽいけど造形的にちょっと不思議だったり、日々の悩みは僕たちと大して変わらなかったりなど、モンスター感と身近さを同時に出せればと思っています」

3人の女子高生モンスターを中心に、さまざまなキャラクターが登場するオムニバスなのだが、2巻では新キャラも続々出てくる。ミノタウロスの男子がもち子の筋トレ姿にほれぼれしたり、女子3人でクリスマスマーケットに繰り出したり、はるみが赤ちゃんのとき、ほとんど透明の状態で、子育てに苦労したというほのぼのエピソードも。

「この作品を機に、いろんな国の神話を調べるようになったのですが、モンスターには昔の人たちの考え方などが反映されていることを知り、ますます興味が湧いています。3人のキャラクターを中心に掘り下げつつ、彼らが住む街の様子もより立体的に描いていきたいですね」

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『月出づる街の人々』2 透明人間、狼男、フランケン、ドラキュラ、メドゥーサ。種族を超えて心を通わせるモンスターたちの温かな日常を描いた8編のオムニバス。おまけマンガも! 双葉社 726円 ©酢豚ゆうき/双葉社

すぶた・ゆうき マンガ家。2010年頃からコミティアなどで活動を始める。本作で商業誌デビュー。『月刊アクション』(双葉社)で連載中。

※『anan』2023年9月20日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子

(by anan編集部)

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