自分と相手の立場がカギ! シチュエーション別敬語。
お疲れさまです→いつもお世話になっております
「お疲れさまです」は主に親しい間柄の人に使う言葉。「仲間言葉のひとつなので、外部の人に使うと失礼にあたります。最初は一番丁寧な言葉を使い、少しずつ距離が縮まってきたら『お世話さまです』もありです」
(自分の上司)部長の××さんもいらっしゃいます→部長の××も参ります
外部の人とやり取りする場合、自社の人間は身内にあたるため、上司であっても敬称は不要。「さらに『いらっしゃる』ではなく、謙譲語の『参る』を用います。もちろんメールも同様。社内の人とのやり取りは、××部長でOKです」
了解です→かしこまりました
「了解」は、目上の人が目下の人に許可を与える時に用いられる。「『目上の人と関係性がしっかりできていれば使うのもありですが、ふさわしいとはいえません。『かしこまりました』のほかに、『承知しました』もよく使われます」
本日はお伺いいただきありがとうございます→本日はお越しいただきありがとうございます
「行く」の謙譲語が「伺う」で、尊敬語が「お越しになる」。『相手に来ていただいているので、この場合は『お越しいただき』を使います。また『お伺い』は二重敬語になるため、自分が行く場合は『伺います』が正しい使い方です』
こちらつまらないものですが、どうぞお納めください→お口に合うかどうかわかりませんが、どうぞ召し上がってください/心ばかりの品ですが、どうぞお受け取りください
間違いではないが、最近は「つまらないもの」という表現はあまり使われない傾向にある。「へりくだった表現ですが、『つまらないものをくれるの?』と思う方もいるので、相手に喜んでもらえるような言葉をチョイスしましょう」
この度はご協力いただき、大変助かりました→この度はご協力いただき、誠にありがとうございます
こちらも間違いではないが、「助かる」という表現はねぎらいの言葉にあたるため、社外や目上の人にはあまり使わない。「手伝ってもらったのに、感謝の言葉が少し上からな物言いなので、素直にお礼の言葉を述べるのが妥当でしょう」
取り急ぎお礼まで→取り急ぎお礼申し上げます
とりあえず急いでお礼のみ伝えたいという意味合いで、メールでよく用いられる便利なフレーズ。「『まで』と文末を省略していることで、失礼な印象を与える場合があります。身内ならOKですが、外部の人に使うのは避けましょう」
くれぐれもどうぞよろしくお願いいたします→どうぞよろしくお願いいたします
懇願する際に使用する「くれぐれも」は敬語ではないため、社外や目上の人に使うのは避けたい。「少々馴れ馴れしさを感じる表現です。相手と個人的な付き合いがあるならば使っても許されますが、あまりお勧めしません」
ご承知おきください→ご了承いただけますでしょうか
「ご承知おきください」をわかりやすく言い換えると、「知っておいてください」になる。「伝達事項を伝える際に用いるならともかく、こちらの申し出や事情を理解してほしい時に使うなら、『ご了承』に換えて、お伺いを立てるべき」
ご要望にはお応えできません→今回はご期待に沿えませんでしたが、また何かございましたらお申し付けください
今後もお付き合いを続けたいなら避けたいフレーズ。「『ご要望にはお応えできません』は相手との関係を遠ざけたい時に有効ですが、そうでない場合は角が立つので、次に繋がるような言葉で締めくくると、印象がぐんと良くなります」
お手間をおかけします→お手数をおかけします
「手間をかける」は、自分の時間や労力を費やすという意味なので、相手の労力に対して使うべきではない。「『手数』は他人のためにかける手間という意味なので、へりくだった表現として妥当です」
以後気をつけます→今後このようなことがないよう、適切に対処いたします
謝罪やお詫びする際のフレーズ。「『以後気をつけます』は、感情が全く乗っかっていないので、反省していないように思われる可能性が。『適切に対処いたします』を、『全力で努めてまいります』に置き換えても誠意が伝わります」
金田一秀穂さん 言語学者、杏林大学外国語学部教授。金田一京助氏、春彦氏に続く、日本語研究の第一人者。『日本語のへそ』(青春出版社)、『金田一秀穂の心地よい日本語』(KADOKAWA)など、著書多数。
チコちゃん 人気番組『チコちゃんに叱られる!』毎週金曜19:57~(NHK総合)でおなじみ、永遠の5歳の女の子。新感覚舞台『チコちゃんに叱られる! on STAGE ~そのとき歴史はチコっと動いた!~』が映画版となり、10月7日より全国ロードショー。©NHK
※『anan』2022年10月5日号より。写真・北尾 渉 取材、文・鈴木恵美
(by anan編集部)