【調査】刺激より安心感重視? 25~39歳の女性320人に聞く「セックス」事情

ライフスタイル
2022.08.10
時代とともに移り変わるセックス観。価値観や悩みは人それぞれだけれど、イマドキの性事情は気になるところ。今回25歳から39歳の働く女性320人を対象にセックスにまつわる調査を実施したところ、現在パートナーがいる人でパートナーとのセックスに満足している、もしくはそこそこ満足していると回答した人は6割以上に。

家族社会学の観点から現代人の性を見つめる社会学者の永田夏来さんは「セックスの満足度と相手に感じる居心地のよさは比例している」と分析。AV監督の二村ヒトシさんは「相手を受容し、肯定することで自然とセックスの満足度は高まる」と話す。女性向けのセルフケアアイテム開発でも注目を集める「TENGA」の広報・本井はるさんは、自社で収集するデータから「ここ数年でセックスに心理的安全性を求める人が増えている」と読み解く。アンケートの回答と3人の有識者の意見をもとに“幸せなセックス”のヒントを探してみよう。

Q. 現在パートナーがいる人は、パートナーとのセックスに関して満足している?

QA

とても満足している…23.3%、そこそこ満足している…39.2%、どちらともいえない…23.3%、あまり満足していない…9.3%、全く満足していない…4.9%

「とても満足している」「そこそこ満足している」という回答が目立つ結果に。不満があり、そこにストレスに感じている場合は、話し合いの場を設けるなどの対策を。セックスについての話をするときも相手の気持ちを尊重することが大切。

Q. 現在のパートナーとのセックスに「どちらともいえない」「あまり満足していない」「全く満足していない」と答えた方、その理由は?(複数回答)

1位…頻度が少ない 33.3%、2位…性的な欲求が湧かない 31.3%、3位…性的快感を得られない 27.1%、4位…パートナーと自分のしたいことのすれ違い 25.0%、5位…パートナーとのオーガズムに関するギャップ 20.1%、自分の身体的なコンプレックス 20.1%

不満を抱えている人の多くは“本音を相手に伝えられない”ことにも悩みが。頻度の少なさや性的快感を得られないことが不満の原因であれば、アフターセックス時に相手にまずよかった点を伝え、こういうふうにしてほしいとリクエストをしてみる手も。

Q. あなたがセックスに求めるものは?(複数回答)

1位…相手との関係を深めること 51.7%、2位…心の充足感 50.3%、3位…身体的な快感 44.3%、4位…相手の気持ちを確認すること 28.7%、5位…相手に気持ちを伝えること 21.0%

多くの人がセックスに求めるのは「相手との関係を深めること」や「心の充足感」という結果に。相手への気遣いを忘れずに、積極的に心身のコミュニケーションをとることで「身体的な快感」も、より深く!?

◎アンケート調査は、2022年7月インターネット上にて、日本全国の25歳~39歳の働く女性320人(現在パートナーがいる人・いない人両方含む)を対象に行いました。

6割以上の女性がパートナーとのセックスに満足感。

現状のセックスに対しての満足度について「とても満足」「そこそこ満足」と回答した人が6割超。この結果に「満足度が高いとはいえ、パートナーとの意見の擦り合わせに課題を持つ人も少なくないです。女性は出産や育児など、ライフステージが変化する場合が多く、価値観や性生活のプライオリティが変わることも。たとえば、同棲や結婚などで同居期間が長くなると、セックスを楽しめている層が減少するともいわれますが、相手と性に対する話をすることで問題を解決できたという人も多い。身体的快楽か心の充足感か、自分はどちらのほうに重きを置いているかをパートナーと意識共有することが大切。そうすることで、セックスの満足感はより高まると思います」(本井さん)。また「“特に不満はない”という意味で“満足している”と答えている人もけっこういるのでは」(永田さん)という意見も。もし、セックスの満足度をより向上させたいと思っている場合は、相手と話し合う機会を持ってみよう。

イマドキのセックスに求められるのは刺激よりも安心感!?

新型コロナの流行や不安定な社会情勢によって生活そのものが大きく変化。日本人のセックス事情にも影響している部分はある? 「自社で実施したアンケート調査をもとにニュースレター『月刊TENGA』を制作しているのですが、4人に1人がコロナ禍で性生活に何かしらの変化があったと答えています。回数が増えたという方は、安心して身体的な接触を持てるパートナーに限定される傾向かも」(本井さん)。また、時代背景によって“人間の心理”も変化。結婚、妊娠、出産と女性の関わりも同様で「2010年くらいから恋愛に対して、ときめきよりも安心感を求める人が増えており、相手を選ぶ際に自分と似た価値観を持っていることを重視する傾向に。婚前交渉がネガティブなものでなくなり、セックスの相性込みで人生のパートナーを見つける人も。その結果として、刺激よりも安心感のうえに成り立つセックスで、心身の満足感を得たいという欲求が高まっているのではないでしょうか」(永田さん)。

目指すは、お互いの気持ちを尊重したスキンシップ。

パートナーとのセックスに満足しているという声が多く聞かれた半面、「どちらともいえない」「あまり満足していない」「全く満足していない」という意見も。一番多かったのは頻度の少なさ、続いて性的な欲求が湧かないという理由。性的な快感が得られないという回答も。これらの“不満の原因”の打開策は? 「相手まかせにせず、自分の意見をきちんと言葉にして伝えることで解決できることもあります」(二村さん)。コミュニケーションを通して、相手と気持ちを共有することを提案する。「僕も話し合いのタイミングとか、どう切り出したらいいか悩んでいるといった相談を受けることも。相手を傷つけないように、言葉で伝えるのは勇気がいること。でも、不満を抱えるより相手の立場に立って、自分の思いを伝えてみて」(二村さん)。「セックスは心とカラダのスキンシップ。自分の意見を一方的にぶつけるのではなく、相手と意識を共有することで、よりよい関係が築けると思います」(本井さん)

カラダだけではなく心のつながりもより深く、濃密に。

セックスに求めるものは人それぞれ。ただカラダの快楽を得たいというよりも、セックスを通して心の結びつきを感じたいと考えている人が多いというアンケート結果に。実際に好きな相手とセックスをすることで「オキシトシンというホルモンが分泌され、それが多幸感につながると、科学的にも実証されています」(本井さん)。身体的な快感については「自分にとっても相手にとっても気持ちのいいことを探る行為がより深い快楽につながると思います。独り善がりではなく、コントローラーを手放して、相手と一緒に心地よいことを探求することが幸せなセックスへの近道」(二村さん)。また、セックスをすることで自分に自信を持てるようになったという意見については「セックスには自己肯定感を高める作用もあると思いますが、ふたりでするセックスは相互作用のうえに成り立っているものでもあるので、自分と相手の気持ちを大切に、互いを尊重することを忘れないでおきたいです」(永田さん)

永田夏来さん 家族社会学者。2004年に早稲田大学大学院にて博士号(人間科学)取得後、現在は兵庫教育大学大学院学校教育研究科准教授。著書に『生涯未婚時代』など。

二村ヒトシさん AV監督。慶應義塾大学文学部を中退後、1997年にアダルトビデオ監督としてデビュー。著書に『すべてはモテるためである』、共著『オトコのカラダはキモチいい』など。

本井はるさん TENGA、iroha、TENGAヘルスケア広報担当。お茶の水女子大学文教育学部卒業後、新聞記者に。2019年にTENGA入社。タブー視されがちな性の分野を深く掘り下げる。

※『anan』2022年8月17‐24日合併号より。取材、文・小寺慶子

(by anan編集部)

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