心理学的視点で解説! コジコジに学ぶ、ご自愛名言。
メルヘンの国を舞台に、主人公である宇宙生命体のコジコジや住人たちが繰り広げる日常を描いた漫画『コジコジ』。コジコジは、一見かわいらしく、とぼけているようでいて、時折、心に刺さる言葉を放ち、私たちをハッとさせる。
「『コジコジはコジコジだよ』という有名なセリフがありますが、これは“自分は自分である”というアイデンティティが確立されていることを意味します。自己肯定感とは、自分のいいところと悪いところをすべて認めた上で自分を有能だと評価する感情なので、自己肯定感が生まれるためには、コジコジのようにアイデンティティの確立が不可欠です。とはいえ、簡単にできるかというとそうではなく、コジコジはかなり高い次元にいる突き抜けた存在といえます。だからこそ、作中では周りから理解されずに変わり者扱いをされたり、浮いているような場面も描かれていますよね。その点も、本作の注目すべきところだと思います。
ちなみに、漫画を読んでいると次第にコジコジ化していくのか、いろいろなことがどうでもよくなって、“まあいいか”と気が軽くなる瞬間がありました。また、“コジコジだったらどうするかな?”と考えたり、“人の評価を気にしすぎてたな”と気づけるなど、セラピー効果を感じることも。自己肯定感が持てずに悩んでいる方は、熟読してみるのもおすすめです」
自己肯定感を高める、コジコジの言葉
自分は自分でいいと思えたり、心の成長の手助けとなる名言を塚越さんがピックアップ。目からウロコな解説に注目です!
自分の価値を人に委ねない態度に拍手。
カエルのトミーと正月君との会話中、「コジコジは役に立ったことないよ」と言い放ち、二人に気を使わせるコジコジ。
「誰かの役に立つことで存在価値を感じたいと思うなど、自分の価値を人に委ねるケースは多いもの。ところがコジコジは、自分は誰の何の役にも立っていないと言い切り、自分の価値なんて知ったこっちゃないという態度。自己肯定感の高さが表れていて素晴らしいと思います。フォローする周りの反応は常識的で、“世間”ですよね。コジコジのように適度な自己肯定感があると周囲から浮いてしまうということが絶妙に描かれている点も、すごいと思います」
どんな時もマインドフルに“今の自分”を生きる。
メルヘンの国の住人たちが魔界からやってきた大王を恐れる中、コジコジは木に座り、「あーおいしい」「おまんじゅうはあまいなあ」と、呑気な様子でおやつを食べる。
「大王は、ただまんじゅうを食べているやつを攻撃しても無駄だと戦意喪失します。人間関係でも、怖い思いや嫌な思いをしても、効いていないように見せることで、相手はつまらなくて諦めますよね。さらに、みんなが右往左往するような恐ろしい状況でも、周りに引っ張られず、『おまんじゅうがおいしい』とマインドフルにいることが大事。すると、恐怖から自由になり、今ここに生きられるという、素晴らしいお話でもあるんです」
豊かな経験が成長と自尊心につながる。
みんなと一緒に海水浴に出かけたコジコジは、海の中に住んでいるタコ君から「弟が生意気で困っている」という悩み相談を受け、弟の面倒を見ることに。初めて訪れる場所に怯えるタコ君の弟に対し、「知らない場所だから面白いんだよ」「コジコジは毎日知らない場所へ行くよ」「それが好きなんだ」と声をかける。
「頭でいろいろと考えることも大事ですが、それだけではなかなか自己肯定感は高まりません。大事なのは好奇心を持ち、行ったことのない場所へ足を運び、心を開いた状態で新しい経験をすることです。そうして経験が豊かになるにつれて心が成長し、自信がつき、結果的に自己肯定感が高まります。悩んだら外行きな、です(笑)」
前向きな気持ちに導くものはそこら中に。
クリスマスの日、天使の吾作からもらった袋の中に集めた光を、枯れ木たちにプレゼントするコジコジ。「たのしいうれしいやさしい光」がどこにあるのかと枯れ木に尋ねられ、「どこにでもあふれてるよ」と答える。
「楽しい、嬉しい、優しいはどこにでもある、自分次第ですぐに見つけられるという考えができるのは、すごく大切なこと。自己肯定感が適度に高いからこそそんなふうに思えるし、自身がさまざまな経験をして豊かな証です。コジコジのように程よい自己肯定感を持つことはなかなか難しいですし、私自身、作品を読んでいて“そんなふうに思えるならいいけど”とハードルが高いと思うこともありますが、こうして優しい言葉で救ってくれるシーンがあると、“自分もこういう考え方ならできそう”と思えてホッとします。そのバランスも素晴らしいです」
できない自分を受け入れてこだわらないことが大事。
空が飛べずスランプに陥った正月君に、休むことを勧めるコジコジ。半魚鳥の次郎から「簡単にあきらめるタイプだな」と言われるが「それ わりといいタイプ?」と切り返す。
「諦めることは、決して悪いことではありません。ネガティブな状況にこだわらず、“しゃあない”と前向きに受け入れる適応的な諦めは大事なこと。心理学では適応的諦観といいますが、コジコジはそれを言っており、まさに“いいタイプ”ですね(笑)。できないことを考え続けたり、本来部分否定であることを全否定のように捉えて落ち込む人は多いですが、できないことを一度受け入れた後にこそ解決法は出てくるものです」
新装再編版にはコミックス未収録作品も!
コジコジと仲間たちがメルヘンの国で繰り広げる、シュール&キュートな日常が描かれる漫画『コジコジ』。発売中の新装再編版『COJI‐COJI』には、今回紹介した名言・名シーンはもちろん、コジコジがこの世に初めて登場したエピソード「コジコジ メルヘンストーリー」他、コミックスには未掲載の作品も収録されている。集英社 全3巻 各660円
大人気展覧会、まもなく閉幕!
インスタレーションや原画、オリジナル映像を通じて、コジコジの世界観を体感できる展覧会「コジコジ万博」が、東京・立川の「PLAY! MUSEUM」にて7月10日まで開催中! PLAY! MUSEUM 東京都立川市緑町3‐1 GREEN SPRINGS W3‐2F 開催中~7月10日(日)10時~18時※時間指定制 会期中無休 一般1500円ほか TEL:042・518・9625
つかこし・ともこ 臨床心理士、公認心理師の資格を持つ。女性専用のカウンセリングルーム「東京中央カウンセリング」代表。雑誌やTVなどのメディア、講演会などでも活躍。『銀座No.1ホステスの心をつかむ話し方』(だいわ文庫)など水希名義の著作多数。
※『anan』2022年7月6日号より。取材、文・重信 綾 ©さくらももこ
(by anan編集部)