美は生活に宿る。手仕事の楽園がつなぐ民藝の魂。展覧会『復帰50年記念 沖縄の美』をご紹介します。

「こんな世界がよくも地上に残っていたという感じがする」

1938年、沖縄の地を踏んだ民藝運動の創始者、柳宗悦(むねよし)(1889~1961)は書き残している。

「当時の沖縄は厳しくも豊かな自然の中、独自の風習や信仰に基づいて、目には見えないものを信じる生活が営まれていました。そうした生活の中で人の手から生まれる工芸、踊りや音楽などあらゆるものに、柳は美しさを見出したのだと思います」

と日本民藝館学芸員の古屋真弓さん。「民藝」とは「民衆的工芸」の略。美術品とは違って生活の中で実際に使うために作られたものを指す。

「柳は日本各地や朝鮮半島を巡ってたくさんのものを収集する中で、美しさとは何かを考えたとき、その大半が生活の中で使うことを目的に作られていることに気づきました。自然の素材を生かし、使いやすく、伝統から必然的に生まれた形を持つ。それを『民藝』と名付けたのです」

柳の探し求めた美しいものは庶民の営む生活の中にあったのだ。

「物の中に全てを見ていました。物の美しさの向こうに風土や民族性を見ていたのだと思います」

柳と同人たちが4回にわたって訪琉した数年後に、美しい島は戦火に見舞われる。本展では戦前に蒐集された染織品や焼き物、漆器が披露されることでも貴重な機会だといえる。おおらかな文様と独特の形を持つ焼き物や漆器のほかに、島ごとに特色のある織物も見所だ。

「絹に型で文様を染めた色鮮やかな紅型(びんがた)が有名ですが、島に自生する苧麻(ちょま)や芭蕉(ばしょう)、絹、木綿、桐板(とんびゃん)など様々な素材を用いた織物があります。八重山諸島なら苧麻の上布で白絣(しろがすり)を、久米島は山繭から取った絹で紬の衣裳が織られていました。明治12年(1879年)まで続いた琉球王国時代には王府が税として島々に織物を納めさせており、その結果、技術が磨かれ、美しい織物がたくさん生まれました」

戦後に工芸の復興に尽力した第二世代の作家たちの作品も注目だ。

「悲しい歴史があって壊滅的な打撃を受けたけれど、沖縄の文化、伝統を継承する動きは今も続いていて島の未来へつながっている。そのことも知ってもらえればと思います」

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紺地鶴亀松竹梅文様紅型風呂敷 苧麻、筒描 琉球王国時代 19世紀 110.0×114.0cm

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白地霞に松山枝垂桜雁文様紅型衣裳 絹、木綿 首里 琉球王国時代 19世紀 部分

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紺地杢糸格子に絣袷衣裳 絹、木綿 首里 琉球王国時代 19世紀 部分

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白掛緑黒流抱瓶 壺屋 琉球王国時代 19世紀 11.8×20.0cm

『復帰50年記念 沖縄の美』 日本民藝館 東京都目黒区駒場4‐3‐33 6月23日(木)~8月21日(日)10時~17時(入場は16時半まで) 月曜(7/18は開館)、7/19休 一般1200円ほか TEL:03・3467・4527

※『anan』2022年6月29日号より。取材、文・松本あかね

(by anan編集部)

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