新興宗教が根を下ろしたニュータウン。そこで起きた愚行と悲劇とは。澤村伊智さんによる、小説『邪教の子』をご紹介します。
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「この作品では最初から細かめのプロットを用意したんですね。前半は構想通りでしたが、後半に入って『もう一声』みたいな編集者さんからの要望がたくさん来て(笑)。それで後半はがらりと変えたんです」

澤村伊智さんの『邪教の子』は、パキッとした二部構成になっている。前半は知恵と勇気で囚われの姫を救い出す子どもたちの冒険譚。ニュータウンに越してきたばかりの茜が新興宗教〈コスモフィールド〉にすがる親から虐待されていると思った慧斗は、同級生の祐仁らと共に、茜を救い出そうと試みる。

だが後半、物語はがらりと様相を変えるのだ。テレビディレクター矢口が、〈邪教「大地の民」〉の元信者と出会って取材する糸口をつかみ、団体に接近。思いがけない事実が次々と明るみになっていく。

「新興宗教を脱会した人の本など読むたび、子どもが犠牲になっていると感じ、そういう部分は避けられないと思ったんですね。また、カルトのような特異な組織は外からどう見えるのか。これは話題になったドキュメンタリー『ハイパーハードボイルドグルメリポート』のディレクターさんの著書にかなり触発されました。カルトなコミューンや疑似家族は現代における普遍的なテーマでもある。大好きな『マグノリア』や『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のポール・トーマス・アンダーソン監督もこういうテーマばかり取り上げています」

実は、連載時とはエンディングも変えたそう。

「葛藤はあったんです。でも変えた以上、この結末が面白いと言ってくれる読者さんがいるとうれしい」

〈邪教の子〉。その言葉が示す本当の意味が最後にガツンとくる。

「僕も子ども時代にニュータウンで育ったので、当時の感覚を思い出しながら書きました。自分のリアルタイムの情報というか、子ども時代や学生時代の体験や記憶を物語に放り込むことに、それなりの意味が出てきたなという気がするんです。さまざまな出来事がまったく社会と無関係に起こったことではないのだなとわかってきたので。エンタメとしてのベタを狙いつつ、それを安易に流用したくはないという自分の中のめんどうくさいせめぎ合いと闘いながら、今後も書いていきたいですね」

『邪教の子』 前半は慧斗が過去を振り返る形で、後半は、彼自身が新興宗教に家族を壊された子だというテレビディレクター・矢口の視点で描かれる。文藝春秋 1870円

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さわむら・いち 作家。1979年生まれ、大阪府出身。2015年、『ぼぎわんが、来る』で日本ホラー小説大賞〈大賞〉を受賞し、デビュー。同作はのちに映画化され話題に。比嘉姉妹シリーズなど著書多数。写真提供・文藝春秋

※『anan』2021年10月27日号より。写真・中島慶子(本) インタビュー、文・三浦天紗子

(by anan編集部)

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