骨がプロポーションを左右する!? まずは歪みや姿勢を直すべき理由。
重い頭を支えてカラダをまっすぐに保つ背骨、胸を張った美姿勢を維持する肩甲骨、くびれを演出する肋骨。というように、キレイなプロポーションの土台を支えているのは骨。
「ところが、長時間悪い姿勢を続けることで骨格が歪むと、血流が滞ったり代謝が落ちて、つかなくていいところに脂肪がついたり、せっかく筋トレをしても十分な効果が得られないことがあります」
と、北里大学大学院整形外科教授の高平尚伸さんは言う。キレイの第一歩は、ズバリ姿勢づくりにありました。
骨が作る、正しくて美しい姿勢&ボディラインとは?
では、そもそも正しくて美しい姿勢とは?
「横から見たときに背骨がS字カーブを描いている姿勢です。背骨を構成する一つ一つの骨にかかる負担が分散された、一番理に適った状態といえます」(高平さん)
背骨がまっすぐではなくS字カーブを描いている理由は、重い頭を支えるため。
「よく例えられるのが、大道芸の皿回し。ちょっとたわんでいる方が安定してお皿が回るように、S字を描くことで頭の位置をバランスよく保つことができるんです」
とはいえ背骨の状態を外から確認することはできない。外見から判断するとしたら、横から見たときのカラダのラインが目安となる。
「耳、肩、大転子という太ももの付け根の出っ張り部分、そして膝、くるぶしのちょっと前あたり。この5点がまっすぐ一直線上に並んでいるのが、理想的な姿勢ということになっています」
写真を撮って、確認してみて。
これが理想的な背骨のライン。
頸椎という首の骨は前にたわみ、胸椎という胸の骨は後ろにたわみ、腰椎という腰の骨が再び前にたわんだ状態が理想的。“S”に似ていることから、S字カーブと呼ばれる。
なぜ崩れる? タテとヨコ、2つの猫背に注目を!
悪い姿勢の典型が、いわゆる“猫背”。とくに女性に多いのは腰が反っていて背中が丸くなり、首の骨がまっすぐになりがちな“隠れ猫背”タイプ。
「ヒールの高い靴を履くと重心が前になるので、それを引き戻すために腰が反ってしまいます。また、スマホを多用することで頸椎のカーブが失われて頭が前に出た姿勢にもなりがちです」(高平さん)
これがタテ方向の猫背だとすると、肩のラインで見たヨコ方向の猫背が“巻き肩”という状態。
「やはりスマホの画面を覗き込むときは、どうしても腕が内側に入るので、肩が前に巻いてしまいます。また、歩くときに手のひらが後ろに向いていることが多い人は、巻き肩がクセになっている可能性があります」
いずれにしろ、“背中が丸まっているけれど巻き肩ではない”人はほとんどいないし、逆もまた同じ。タテヨコのダブル猫背というケースが多数派だ。
ヨコ方向の猫背
スマホ画面に見入っているとき、ほとんどの人は肩が前に出る、巻き肩のヨコ猫背に。後ろから見ると肩甲骨が左右に離れているのが分かる。
タテ方向の猫背
首の骨のカーブが失われて頭が前に出る、さらに背中が丸くなるタテ猫背。女性の場合は反り腰で一見、猫背に見えない隠れ猫背タイプも少なくない。
自分の姿勢と骨格をセルフチェックしてみよう。
猫背に代表される悪い姿勢は、頭が前に出ていることが大きな特徴のひとつ。また、肩甲骨が左右に離れて巻き肩になると、肩が上がった状態に。さらに、肋骨の下部が悪姿勢で潰れるとウエストのくびれが消失する。自覚できていないことが多い悪い姿勢と骨格の状態を4つのテストでチェック。まずは自分のウィークポイントを洗い出し、骨格ケアをスタートさせよう。
舌はどこにくっついている?
→上顎/下顎
口を閉じ前を見る。舌が上顎についている場合は頭が正しい位置にあるということ。舌が下顎についている場合は頭が前に出ている証拠。頭が前に出ると舌まわりの筋肉が緩み、舌が下がってフェイスラインもたるみがちに。
鎖骨の角度は?
→ほぼ平行/少しVの字
いい姿勢の鎖骨の角度は約7度で、見た目にはほぼ一直線のライン。一方、肩甲骨が左右に離れた巻き肩姿勢になると、肩が上がって鎖骨の角度が大きくなる。見た目的に鎖骨が斜め上方向に上がっていたら要注意。
肋骨下部のカタチは?
→丸みがある/平べったい
自然呼吸で肋骨の一番下の骨を横から左右の手で挟む。このとき、前と後ろに膨らんでいて丸みがあるなら、肋骨の形は正常。前後の厚みがなく平べったい場合は、肋骨の下部が潰れている可能性が高い。
PC作業時、肘はどっち?
→開いている/閉じている
普段、パソコンで作業をしているとき、脇が開いて肘が外側に開いている人は、肩甲骨の位置や背骨のアライメント(配列)も正常。脇を締めて肘を閉じている人は、肩甲骨が左右に離れた巻き肩&猫背の複合タイプ。
PROFILE プロフィール
高平尚伸
北里大学大学院整形外科・医療衛生学部リハビリテーション学科教授、医学博士。スポーツや運動器理学療法学をはじめ、猫背などの悪い姿勢の対策など幅広い研究に携わる。また、テレビ、新聞、書籍などメディアで健康情報を発信。