深川麻衣「あんな機会は二度とないかも」 大先輩俳優との貴重な現場を振り返る

2021.1.30
一作ごとに着実にキャリアを重ねる深川麻衣さんが映画『おもいで写眞』で挑むのは“遺影”を撮るヒロイン。東京で夢破れ、祖母と暮らした富山に帰った結子が、町役場に勤める幼馴染み・一郎(高良健吾)にお年寄りの遺影撮影を依頼されることから物語は始まる。

最年少として挑んだ現場は、とびきり贅沢な経験でした。

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「遺影という、なかなかないテーマに踏み込んだ物語です。みんなの心に残るものなのに、一方で集合写真を引き伸ばして遺影にしたり、と満足のいかないものになってしまうこともあるとはよく聞く話で…。実は結子も、祖母の遺影に心残りがある女性。それをきっかけにお年寄りの遺影ではなく、“おもいで写真”を撮る活動に夢中になっていくんです」

それぞれの思い出がある場所で、最高の一枚を! 最初は「縁起でもない」と顔をしかめたお年寄りたちも結子の情熱に動かされ、懐かしい場所を訪れることで、いきいきとした表情を取り戻していく。

「結子は裏表がなくて喜怒哀楽がむき出しの、いまどき珍しいほど不器用な人。前半は怒った顔ばかりで申し訳ないんですけど(笑)、高良健吾さん演じる一郎の包容力や周りの方々の富山弁の温かさでほっとした気持ちになってもらえれば…」

今回は最年少キャストにして主演の深川さん。高良さんはじめ先輩に囲まれて過ごした富山ロケを「贅沢な日々」と振り返る。

「どの現場でも年下の方が増えていくなかで、あんな機会は二度とないかも。特に吉行和子さん、古谷一行さんという大先輩とご一緒させていただいたことは貴重な経験になりました。数え切れないほどの作品を経て、ご自身のアプローチをお持ちのはずなのに、現場では監督と対話しながら、柔軟に作品づくりを楽しまれていたのが印象的で…。仕事をするうえでは、考えることも大事だけど、その場を楽しむこともすごく大切。私もそんな年齢の積み重ね方ができたらいいなあと思いました」

乃木坂46を卒業して4年半。女優として存在感を増しつつあるいま、じわじわと手応えを感じている。

「最近は作品を通して私の存在を知ってくれたという方が増えたことがうれしくて。自分の変化より、周りの声で少しずつ前に進んでいることを実感できています」

一人で歩み始めてから増えた「自分と向き合う時間」も演技の糧に。

「私の仕事は自分の感情を掘り起こし、カメラの前で見せること。負の感情や弱さも直視しないと表現に偏りが出るから、苦手なものや意地っ張りな性格など(笑)、弱点も直視するようにしています」

そして今年は、30歳の節目の年。

「なんか30代は楽しくなりそうという漠然とした期待があります。警察や病院を舞台にした“職業モノ”とか未体験のジャンルにも30代で挑戦できたら。でもどんな作品でも演じたいのは“普通にいそうな人”。作品が終わった後もどこかで続きを生きているだろうと思わせる、地に足のついたお芝居をできる人になりたいです」

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『おもいで写眞』 失意とともに富山に戻ってきた結子に幼馴染み・一郎が依頼したのは遺影撮影の仕事だった。深川麻衣、高良健吾、香里奈、古谷一行、吉行和子ほか幅広い年代の名優が紡ぐ温かな物語。1月29日より全国公開。©「おもいで写眞」製作委員会

ふかがわ・まい 1991年3月29日生まれ、静岡県出身。乃木坂46一期生としてデビューし、2016年に卒業。その後、初主演映画『パンとバスと2度目のハツコイ』をはじめ、映画やドラマを中心に活躍中。ワンピース¥52,000(WRYH/untlim TEL:03・5466・1662) パンツ¥18,000(Sara Malika/ルシファーリサーチ TEL:03・6427・9951) イヤリング(片耳)¥14,000(atelier ST,CAT st-cat.com

※『anan』2021年2月3日号より。写真・小川尚志 スタイリスト・原 未来 ヘア&メイク・山口朋子(HITOME) インタビュー、文・大澤千穂

(by anan編集部)