暖房の効きを疑う前に、冷える原因を探ること。
おうち時間が増え、今まで感じなかった冬場の部屋の寒さを実感している人も多いはず。暖房をつけていても暖かさを感じられないと、本格的な冬が心配になるもの。
「自分の部屋がなぜ寒いのか原因を探っておかないと、どんな暖房器具を使ってもなかなか効果は上がりません」と、家の悩みを解決する住宅リフォームを数々手がけてきた、一級建築士の尾間紫さん。
「室内の寒さの原因は主に3つ。窓、壁、そして床からの冷気です。持ち家ならリフォームも視野に入れた本格的な改善ができますし、賃貸の場合でも、冷えるメカニズムを知った上でポイントを押さえた対処をすれば、今より快適な部屋に変わるはずです」
そこで今回はまず、部屋に冷気をもたらす最大の原因とされる窓。そして特にコンパクトな家では、冷たい外気がダイレクトに入りやすい玄関の対策を伝授してもらうことに。
「部屋を冷やさない工夫をしたら、効率よく省エネしながら暖め、健康のために換気はどうすればいいかなど、室温の上手なコントロール法も押さえましょう。健やかに暮らすためには必須の知識です」
対策1:窓
冷気の入り口と暖かい空気の出口。窓を制して冷えにくい部屋づくり。
最近の窓は気密性が高いサッシが大半だけど、断熱性能が低いガラス窓は、冬場の冷気をダイレクトに部屋にもたらす最大の原因。
「部屋を暖めても、窓に当たった空気が急激に冷えて、その冷気が下に流れて床に広がっていく“コールドドラフト”という現象が起こります。気密性の高いサッシ窓なら隙間風の心配はほとんどないので、足元が寒いと思うなら、窓からの冷気が原因かもしれません」
また、窓は冷気の入り口であると同時に、室内の暖かい空気が逃げ出してしまう出口にもなる。部屋から流出する熱の5割は窓から、というデータもある。
「窓の対策をしなければ、底冷えは解消されません。日中は最大の暖房ともいえる太陽光をしっかり取り入れ、夜は冷気が部屋にできるだけ入り込まないよう、カーテンを上手に使いましょう」
冬場のカーテンは厚手の織物タイプにチェンジ。
冷気対策として手っ取り早いのが、カーテンの素材の見直し。厚手の織物などしっかりした素材に替えると、冷気がカーテンを通り抜けにくくなる。オレンジや赤など暖色系の色を選べば、視覚的にも暖かさを感じられる。
裾足らずはもってのほか。床まで余裕のある丈に。
カーテンの裾が短く、床との間に隙間があると、冷気がそこから流れ出て、床付近に広がってしまう。大きな窓はもちろん、できれば腰高の窓のカーテンまで床につく長さに変えれば、冷気対策はより万全に。
サイドもきっちり覆うリターン仕様がおすすめ。
リターン仕様とはカーテンと窓の隙間を覆うようにかけること。ホームセンターなどで買える、専用金具に付け替えるだけで変更可能。ただしカーテンの幅に余裕がないと、長さが足りなくなってしまうのでご注意。
窓を家具で覆うのはNG。太陽光を取り入れて。
冬場の太陽の光は、部屋を暖める大切な暖房源なので、窓を覆うように家具を設置しないこと。換気の点から見ても窓が使えないのはNG。他に置く場所がないなら、窓全面を覆わない、低い家具にするのがベター。
対策2:玄関
一日中暗くて寒い玄関から、部屋の暖かさを守っていこう。
玄関は日当たりが悪いことが多く、ドアを閉めきっていても、本体とドア枠の間にわずかな隙間が生じていて、微量ながら24時間常に外気が入り込んでくるもの。また、金属製のドア自体が冷気を発するなど、寒くなる条件が満載。
「冷気を防ぐため、玄関と部屋を隔てるドアは必ず閉めましょう。また、室内と玄関の間に廊下などがあれば、冷気の直接の侵入を防げますが、玄関を開けてすぐキッチンや部屋になっている造りだと、家の中の寒さが増します。玄関近くにカーテンなどを吊るし、冷気を妨げる工夫をしましょう」
100均でも売っている隙間テープを使い、ドアの隙間風を防ぐのも簡単で経済的な対策のひとつ。
間仕切りカーテンで空気の層を作り出す。
玄関からすぐ部屋になる間取りの場合は、厚手の間仕切りカーテンを取り付け、玄関ドアと部屋の間に空気の層を作り、冷気を遮断。透明のアコーディオンカーテンやビニールカーテンなら、部屋が狭く見えない。
対策3:室温
快適さの鍵を握る湿度にも注目。換気も行って心地よさをキープ。
冬に快適な室内温度は18~22°C、湿度は50%前後といわれている。湿度が低いと寒さを感じやすくなるので、心地よい部屋を維持するために、温度と湿度をコントロールする家電を上手に使いたい。
「部屋の室温を一気に上げるなら、エアコンが最適です。ただ、冷房代より暖房代の方が高くつくので、サーキュレーターや扇風機を使って、天井に溜まりやすい暖かい空気を循環させ、早く室温が上がる工夫をしましょう。エアコンをつけている間は、サーキュレーターはつけっぱなしが基本です。また、湿度が低くなりすぎないよう加湿器も必需品といえます」
この時期暖気を閉じ込めようと換気が疎かになりがちだけど、健康のためにはマメに行おう。
「2時間に一回程度、10cmほど窓を開け約10分外気を入れ、室内の空気のリフレッシュを」
エアコンは自動運転が結果的に省エネに。
エアコンは、室内温度を設定温度にするまでが電力を多く消費するもの。初めから弱めの設定だと、室温が設定温度になるまで時間がかかり、逆に電気代が高くなる可能性が。自動運転で一気に室温を上げる方が効率的。
サーキュレーターはエアコンの真下に置く。
エアコンの働きをサポートしてくれるサーキュレーター。暖かい空気は上の方に溜まるので、エアコンの真下に置くこと。そこから上向きに風を送れば空気の循環が進み、エアコンの消費電力もセーブできる。
寒くても換気はマスト! 24時間換気システムをON。
気密性が高まった最近の家やマンションでは、法律でも換気が義務付けられている。カビ、ダニの死骸、ホコリ、ウイルスなどが蔓延してしまうので、24時間換気システムが付いているなら、必ず作動させておくこと。換気口のフィルターが汚れていたら元も子もないので、半年に一度の目安で掃除やフィルター交換を。
加湿器を取り入れたら、温湿度計で把握。
エアコン暖房を続けると、部屋の中の乾燥が進んでしまうので加湿器は必須。ただ、加湿しすぎるのも問題で、窓の結露や壁にカビを発生させる原因にもなる。壁紙が薄汚れてきたらカビの可能性大。湿度50%前後をキープできるよう、常に湿度計をチェックしておこう。加湿器を壁から離した場所に設置するのも大事。
尾間 紫さん 一級建築士。住宅リフォームコンサルタント、インテリアプランナー、インテリアコーディネーター。「一級建築士事務所 Office Yuu」代表。セミナー講師としても活躍。
※『anan』2020年12月9日号より。イラスト・別府麻衣 取材、文・板倉ミキコ
(by anan編集部)