Q:どんな症状が出るの?
A あらゆる精神的、肉体的不調を感じます。
「PMSでは下腹部の膨満感や痛み、頭痛、乳房痛などの身体症状と、イライラ、怒りっぽい、憂うつなどの精神症状があります。以前45名のPMS患者さんを調べた際には、精神症状が多かったです」(木村先生)
「ほかにも、甘いものが食べたくなったり過食ぎみになったりする摂食異常、眠気、肌あれ、むくみ、便秘や下痢など様々な症状が。意外なところでは、性欲が異常に高くなる、衝動買いしてしまう、無性に整理整頓したくなる、というのもPMSの精神的症状。なんだか急に爆買いしちゃった、とか最近食べすぎて太ってしまったなどという人は、本人が自覚していないだけで、PMSの可能性があるのです」(池下先生)
Q:どうして心に影響が出るの?
A:脳とホルモンの複雑な関係が原因かも。
「女性ホルモンの分泌量は、脳の視床下部というところがコントロールしています。視床下部は自律神経の調整役として有名ですが、もともととてもエモーショナルな部分で、感情の形成にも関わっているんです。生理前は女性ホルモンの量がグッと変わりますから、視床下部がその影響を受けるせいで、感情が不安定になる可能性があります」(池下先生)
「気持ちの安定に関わるセロトニンに関係がある、などといわれています。脳の中にあるうつ状態にスイッチを入れるプロセスが、プロゲステロンの影響で働きやすくなるため、生理前にプロゲステロンが増えるとうつっぽくなります。諸説ありますが、今のところ正確な原因は不明です」(木村先生)
Q:最近よく聞く“PMDD”って何?
A:PMSの中でも精神症状が重いケース。
「生理前に起こる不調の中でも、イライラや憂うつなど精神的症状が主体で重いケースを、月経前不快気分障害、PMDDと呼びます。生理のある日本女性のうち、PMDDに悩んでいる人は1.2%ほど。家庭や職場での人間関係に支障をきたすほどつらいケースもあります」(木村先生)
「PMSやPMDDによる精神的な症状は、衝動買いや口喧嘩など、思わぬトラブルにつながることも。イギリスでPMSを研究している産婦人科医によると、PMSが原因とみられる傷害、殺人の例もあるとか。事実欧米では、PMSは減刑の理由として認められています。残念ながら日本では、PMSやPMDDの深刻さが、まだ浸透していません」(池下先生)
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Q:誰に相談すれば?
A:まずは婦人科のクリニックで相談を。
「PMSの症状が重くて家事や仕事がままならないという人は、婦人科や女性外来に相談を。最近は心療内科でも、PMSに対応してくれるクリニックがあります。インターネットであらかじめ調べておくと、間違いありません。婦人科へ行くときは、もしあれば過去3か月分くらいの基礎体温表を持参して。そうすれば、診察がスムーズに行えます」(池下先生)
「治療は、カウンセリング&生活習慣指導と、薬物療法に分けられます。生活習慣では、食事や運動などのアドバイスを。薬物療法としては、精神安定剤や鎮痛剤などを処方する場合もありますが、PMSといっても人によって症状が違うので、各自に合わせた漢方薬を使用します」(木村先生)
池下育子先生 いけした女性クリニック銀座院長。心とカラダの悩みに真剣に向き合う。著書に『PMSの悩みがスッキリ楽になる本』(東京書籍)ほか。
木村容子先生 東京女子医科大学附属東洋医学研究所所長、教授。共著『太りやすく、痩せにくくなったら読む本』(大和書房)が好評。
※『anan』2020年3月25日号より。イラスト・サヲリブラウン 取材、文・風間裕美子
(by anan編集部)