“たとえ媒体が変わっても面白いものを創りたい”
「せっかくなら面白い仕事がしたい」と、テレビ局に就職。好きなテレビ番組を尋ねると、「見ていて面白かったのは『ダウンタウンのごっつええ感じ』。番組を創ることが楽しそうだと感じたのは、『進め!電波少年』シリーズでした」との返答が。
「裏方の人が考える内容が実現されることで、番組が面白くなっていると気づきました。時代的にも、演者主導から創り手主導へと、移行している時期だったと思います」
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2014年にスタートした『水曜日のダウンタウン』では、毎回ユニークな“説”が登場。なかには、攻めた内容ゆえ、物議を醸したものも。「モンスターハウス」をはじめとするクロちゃんの登場回は、毎回大きな反響を呼んだ。
「クロちゃんは不思議な人です。誰もが思っている気持ちや考えている欲望が表に出やすい人。みんなが“バレたら周りに変に思われるから”と理性で抑えている部分を、カメラの前で隠さないところがすごいです。攻めている番組を創っている感覚はあまりありません。ただ、他で見たことがないものを創ろうとするから、危なっかしく見えるのは理解できます。どこかで見たものって“これは大丈夫”と承認を受けているわけですから。僕の感覚としてきわどい番組が好きなのもあるけど、戦略的にやっているわけではないです」
ダメもとで提案してボツになった企画は、いくらでもあるという。
「クロちゃんはお酒を飲んで寝たら叩いても起きないので、土に縦に埋めて顔だけを出して、Siriだけで何とかさせるとか。寝ている間に国境をまたがせ、起きて最初に会う人が日本人じゃなかったら面白いかな、とか。企画は、ふと思いつくこともあるけど、会議で話し合いながら創ることが多いです。一番最初のアイデアを出す会議は、無責任だから楽しい。現実面を詰めていく段階に入ると、妥協もしなくちゃいけないし、成立させるために頭を使います」
いまは動画配信サービスなど、テレビ以外のツールでエンタメコンテンツを楽しめる時代。
「僕はテレビ局の人間ですが、番組を創るポジションに特化しているので、“テレビだからこう”ということはさほど考えていません。面白いものを創り続けられたらいいし、媒体が変わってもいい。いま、テレビ局は同時配信や見逃し配信をしていますが、便利な方向に変わることは必要だと思います。でも、一方で、テレビの前にいたくなるコンテンツを創ることも大事なのかなと。そう考えると生放送で、その瞬間に見逃せないものがあるというのは、テレビの強みになるはずです。数多くの人に同時に届けるという意味ではテレビが一番だと思うし、実際、ラグビーワールドカップの瞬間視聴率は50%を超えましたから。ドラマの最終回は2時間遅れで見ても気にならないのに、スポーツの大会やお笑いのショーレースは、リアルタイムじゃないと、どこか乗り切れない気持ちがありますよね」
今後は、バラエティ以外のジャンルにも挑戦したいと藤井さん。
「ドキュメンタリーやドラマも創ってみたいです。僕がやることの意味も含めてストレートな恋愛ものとかにはならないはず。物語というより、構造が変わっている作品に興味があります。“バラエティの人が創るドラマはこうなるよ”という作品になればなと」
ふじい・けんたろう TBSテレビ 制作局制作一部ディレクター 1980年4月16日生まれ、東京都出身。大学を卒業後、TBSに入社。これまでに、『クイズ☆タレント名鑑』『オールスター後夜祭』などを演出・プロデュース。昨年7月に放送された『安住紳一郎と2019年上半期のTBS』を手がけたことでも話題となった。著書に『悪意とこだわりの演出術』(双葉社)。
※『anan』2020年1月15日号より。写真・内山めぐみ 取材、文・重信 綾
(by anan編集部)