デビュー15周年を記念したベスト。「花」「空」「月」に想いを込めて。
「今回は過去にリリースした曲の他に『はなびら』という新曲が入っているんですけど。花は儚く散っていくからこそ愛おしいし、それって人生そのものだなと思って。この曲をきっかけに“儚いからこそ愛おしいもの”をテーマにした『花-HANA』、“いつでもそこにあるもの”をテーマにした『空-SORA』、“闇があるからこそ見えるもの”をテーマにした『月-TSUKI』に分けて選曲しました。特に闇をテーマにした曲はたくさんあって(笑)。悲しみや苦しみはマイナスに感じるけど、あの悲しみがあるから今があると思えたり、あの失恋があったからこの人に出会えたと思えたり。そういう曲もたくさん書いてきました」
恋愛ソングで幅広いリスナー層から支持され、CMソングでも着実にその声と名前を広めてきた。キャリアを振り返れば、こんな転機も。
「良い曲を書いて、売れたいという気持ちはずっとありました。でも“そんなに簡単なことじゃないんだ”と気付いたのは『シンデレラ』をリリースした時。ポップな曲だったので、珍しくスカートをはいて黒縁メガネにしてみたけど、あまり評判が良くなくて(笑)。そんなことでは何も変わらないんだから、自分らしくやろうって肩の力が抜けたんです」
新曲の「はなびら」は映画『殺さ〈あなたが名前を呼んでくれた時/はじめて自分を好きになれたの〉と、誰かを好きになることで人生そのものが輝きだすような気持ちを今もなお、瑞々しく歌にする。
「誰かに自分の名前を呼んでもらえて、初めて自分が存在できるような気持ちって今もあります。もちろんライブにたくさんの人が来てくれたら嬉しいけど、ツイッターのフォロワー数や周りにいる人の数なんて関係ない。今、自分が生きているこの瞬間に想う、たったひとりの存在が、いてくれたらいいなって」
そんな恋愛観の彼女だからこそ、聴き手の心に強く歌が響くのだろう。
「私はすごくネガティブだし、こんなこと書いたら引かれるかな? と思うことも歌詞に書いてきた。だからこそ共感してくれる人がいて私も救われました。それはもうデビュー当時からずっと変わってないです」
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おく・はなこ 千葉県出身のシンガーソングライター。2005年にメジャーデビューし、これまでに10枚のオリジナルアルバムをリリース。鍵盤弾き語りを軸にしたスタイルで恋愛ソングやメッセージソングを生み出す。
※『anan』2019年11月20日号より。写真・土佐麻理子 取材、文・上野三樹
(by anan編集部)
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