極限状況で他者を助けられるか…“安っぽいシーンなし”のスリラー映画とは?

エンタメ
2019.11.08
デンマークを代表する俳優であり、演技派として高く評価されるマッツ・ミケルセン。本作『残された者―北の極地―』は、その彼が「キャリア史上、最高に過酷な撮影だった」と語るスリラーだ。
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マッツが演じるのは、飛行機事故により北極圏に取り残されたオボァガード。孤独にサバイバル中の彼はある日、ヘリコプターの墜落を目撃。負傷した女性搭乗員を救出したオボァガードは、生命の危機に瀕した彼女を連れて、決死の旅に出る!

極限状況で他者を助けられるか? という人間性が試される物語だ。次々に立ち塞がる困難に立ち向かうオボァガードは、とてもヒロイック。

「彼をヒーローとみなすことはできるよ。でも実は、彼女こそが彼の救世主だ。当初サバイブするだけで、夢も希望も失った虚ろな目をした彼は、彼女が彼の人生に現れたことで、“生きる”ことがどういうことかを思い出すんだ。彼女のおかげで“生きる”意味を再び感じるようになる」

負傷した女性を看病するために自身の寝床に運ぶオボァガードが彼女を長めに抱きしめる場面が印象的だ。

「オボァガードがいかに人の温もりに飢えていたかわかる場面だね。人間はやはり他者がいてこそ生きられるんだと思う。僕と監督は、彼女のことを彼の娘や妻、母や姉妹といった彼にとって大事な人間を象徴する存在と考えているんだ」

監督のジョー・ペナはこれが長編映画デビュー作の新人。脚本を読んだマッツは、監督が自身と同じ考えだったことで出演を決めたという。

「オボァガードの家族や過去が描かれたり、負傷した女性と恋に落ちたりするんじゃないかと危惧しながら脚本を読んだ。多くの脚本家が陥るフラッシュバックの罠だよね。でもジョーの脚本にはそういう安っぽいシーンがない。誠実でピュアな物語であり、すごくいいと思った。彼の誠実な語り口は、映画界ではとても稀有だ」

誠実な作品にすべく、極寒のグリーンランドで体当たりの撮影に挑んだマッツ。チャレンジが好きなの?

「僕が選ぶのは極端だったり、ラディカルな作品が多いから挑戦好きに見えるかもしれない。でも僕が映画に求めるのはハート(真心)があるかどうか。この映画もお金はないけれど大きな夢を持つ若者の情熱が伝わる作品だと思うよ」

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『残された者―北の極地―』 監督・脚本/ジョー・ペナ 共同脚本・編集/ライアン・モリソン 音楽/ジョセフ・トラパニーズ 出演/マッツ・ミケルセン、マリア・テルマ・サルマドッティ 11月8日より新宿バルト9ほか全国公開。©2018 Arctic The Movie, LLC.

マッツ・ミケルセン 1965年生まれ、デンマーク出身。『プッシャー』(’96)の麻薬ディーラー役で鮮烈なデビューを飾り、『007 カジノ・ロワイヤル』(’06)やTVシリーズ『ハンニバル』で注目度UP。

※『anan』2019年11月13日号より。写真・小笠原真紀 インタビュー、文・山縣みどり

(by anan編集部)

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